王都−32
マスタは右手に赤い魔石を1つ乗せると、今度は掌に魔力を集めて少しずつ魔石に流し込むように意識してみた。
初めは手に触れている下の方が明るくなるのが見えたが、徐々に中央から強く光りを放つ様になり、一瞬眩く光ると今度は徐々に落ち着いていき、最後は中央でふわりと光るのみになった。
光が落ち着いたので摘んでテーブルに戻したのだが、その時魔石が少し大きく艶も良くなっている様に感じた。
「これって火の属性に適性あるって事ですかね?」
と、みんなを見て言うも、全員の顔に汗が吹き出し引き攣った顔で魔石を見つめるだけだった。
マスタは全く分かってはいなかったが、魔力を操れる4人とこの時初めて魔力の感覚を知る事になった女の子は、目の前に座る青年から突然に魔力の突風とも感じる程の圧をかけられていた。
物理的な風では無いので飛ばされるということはなかったが、身体は一瞬硬直して重しを乗せたような感覚が残っていた。
ただ、その魔力から感じられたものは大きく広く深くどこか安心感を与えてくれた為恐怖するということはなかったが。
そのおかげか、青年が怯えられる事が無かったのは幸運だった。
視線は魔石を追いつつも身体の硬直に気を取られ、気付いた5人の前には変わり果てた魔石が置かれていた。
「「「「「!?」」」」」
「あれ?これ赤いから火の属性魔石じゃないんですか?」
「さっきのは…何処にやったんだ?」
ケイトラが掠れた声で呟いた。
「?言われた通りにやったんだけど、失敗ですか?」
「マスタ様…違う魔石になってます…よね?」
「ん?ごめん。よく分からない。良かったら手本見せて」
そう言うとテーブルの魔石をメルトの前に寄せた。
「私は風の適性があるのでコレですね」
緑色の魔石をメルトが親指と人差し指で摘み、直ぐに真ん中辺りがチカッと光った。
「おお、そうやるのか。へ〜」
言いながら青い魔石を同じ様に摘み魔力を流しビカッと輝き、光が引いて少し大きな艶のある青い魔石が…
「あれ〜?」
「「「なんなんじゃ〜!」」」
ハモるドワーフ。
「マスタ様それ見せて下さい。うわ〜綺麗〜。あ、光が動いた」
興味津々のダイアナ。
頭痛ポーズのメルト。
「強く光ることは、まああるが…」
「質が変わってしまっているぞ」
「もう、意味が分からん」
その横でビカッ、ビカッと次々摘んでは試すマスタ。
全部の魔石を試し終わり、みんなを見ると
「マスタ様ですから」
と言うダイアナに慰められる4人がいた。
結局アクセサリーは無しで、装備の付与だけに決定した。
その後マスタが紙に何やら描いてそれを作ってくれと頼んでいた。
細い棒状の物で端に飾りの付いた物だったが用途についてはまだ内緒だと教えてくれなかった。
それを数個頼むと、ドドル達は疲れ顔だったが細かく形状材質などを確認して、ついでに作っておいてくれる事になった。
ドドル達の工房 槌の宴 を後にし、周りの工房を見学しながら大通りに戻る途中、路地の奥の方で子供を捕まえて殴りつける男が見えた。




