王都−30
鉄壁の盾から大通りのT字路に戻り、それを過ぎて更に20分ほど歩くと工房などが多くなってきた。
「通りに聴こえてくる音も変わってきたね。職人街って感じだなぁ」
「あ、本当だ。木を切る音に叩く音、鉄の音も聞こえますね」
「住宅の密集する地域から離れているので、音の出る工房などの店は自然と集まってくるんですよ。工房通りと呼ばれています」
道幅も広く人通りもそれ程多く無いので、3人は横に並んで歩いていた。
ガラスがさほど普及していない為か、開け放たれている工房が多いので作業している風景がよく見えた。
10軒程過ぎた所にその工房があり、中から野太い怒鳴り声が聞こえてきた。
「この…だ…しないと!」
「何?…しか…だな!」
店の前迄辿り着き中を覗くと、3人のドワーフが剣を睨み議論している最中だった。
「ギン!ギン!ギン!…ってのはどうだ?」
「そらならキン!キン!」
「ドドルさん!ワッカさん!ケイトラさん!」
工房の中の金属音に負けじと、メルトが大きな声で呼んだ。
議論に夢中だったドワーフ達にも聞こえたのかこちらを向いた。
「なんだ!メルトか!久しいな!」
「おお?依頼か!」
「今は違うだろ!メルト!向こうだ!店の方に行け!」
どうやら隣にある店舗に行った方がいいようだ。
議論していたドワーフの1人が隣の店舗を指差していた。
「じゃあ隣に行きましょう」
マスタ達は通り側にある店舗の入り口に移動し扉を潜り中に入った。
外からの見た目は工房の事務所の様な見た目だったが、内装はしっかりとお店然としていた。
「良いね〜この雰囲気、武器屋防具屋って感じだなぁ」
「奥にはキラキラの宝飾品がありますよ〜綺麗です〜」
「あっちの柱の裏側にテーブルと椅子がありますから、そこに行きましょう」
勝手知ったるという動きでスタスタと奥に歩いて行くメルト。
「ここもよく来てたのか?」
「冒険者でしたもんね?」
「そうですね、装備の手入れや相談、依頼でもよく来ていましたね」
柱の裏には椅子というよりソファとテーブルがあり、10人は座れる場所になっていた。
テーブルは綺麗に整頓されているのだが、真ん中に置かれた金属の籠には小さい槌や掴む道具が沢山入っているのが何よりも目を惹いた。
使い込まれた道具なのは見て分かるし、1つ1つがしっかりと手入れされているのもよく分かった。
そんな道具が綺麗だなと眺めていると、店の奥から作業用の前掛けを外したドドル達が来たので、立ち上がって自己紹介をした。
武器や刃物担当のドドル、防具担当のワッカ、アクセサリーや彫金担当のケイトラ。
それぞれに部下というか弟子が1人ずついるらしく、思っていたよりも大きい店らしい。
しかも担当がそれぞれ得意というだけで、同郷者同士で知識と経験は同じだけ持っているそうで、手を貸し合いながら上手くやっているらしい。
「そんで、今回は何の用だ?」
「おお。まだ冒険者だと勘違いしてたわ。悪りいな」
「2人共まだ声が大きいぞ。…仕事場だと大声で会話してるからな」
ケイトラがマスタとダイアナに説明する様に言った。
「仕事柄でしょう。気にしませんよ」
「私も気にしませんけど、疲れませんか?大きい声出すのって」
ダイアナが素直に聞いたところ3人はポカンとした後、大笑いした。
「考えたこと無かったな!バハハハ」
「ああ。毎日だからな、慣れだな。グハハハ」
「ハハハハ。気遣いの出来る優しい子だなぁ、ダイアナの嬢ちゃんは」
そこから一気に和んだ空気になり、距離感が近くなる感じがした。




