王都−28
「コングさん!違いますよ!トー姉も!お昼食べに寄っただけだから!」
店中の視線を一気に集め、話し込んでいて営業の邪魔にならない様にと、3人は急いで奥の空いているテーブルに着いた。
注文は「任せときな!」の一言で決まってしまった。
「随分と親しげだったね。気にもかけててくれたみたいだし」
「冒険者時代の先輩です。Bランクの2人組で1つ下のランクの私にも良くしてくれたし、みんなにも慕われていたわ」
「見ていると想像できるね」
「通り名は鉄壁のトーミとツーハンマーのコングと言われていたの」
「それで店の名前が鉄壁の盾屋なのか」
入り口の盾看板の文字を思い出した。
(俺にも読めちゃうって不思議だな)
「でもコングさんのは店の名前に入れなかったのですか?」
「ダイアナが言う様に初めは組み合わせたりしてみたらしいんだけど、どうも語呂がしっくりこなかったらしいわね。それに2人で引退まで守り切った通り名だからどっちのでも良かったみたいよ」
「なるほどね、確かに頭の中で思い浮かべてみても一択かなぁ。でもさ、ツーハンマーってどんな武器なんだろ?」
「それがですね、大金槌とかでは無くて、大きいメイスだったんですよ。先に通り名で呼ばれていたトー姉とコンビ組んでるから、俺もってコングさんが自称で考えたらしいのですけれどツーメイスの語呂がやっぱりしっくりこなくて、ツーハンマーにしたらしいです。その後それに見合った活躍もあって定着させた事も凄いですけれど」
(あれ、そう言えばサラッと自分はCランクの冒険者だったって言ってたよな)
マスタが冒険者のランクは何段階あるんだろうと考えた時に料理が運ばれて来た。
「はいよ〜。まずはこれ食っときな」
トーミが大きい肉を持って来たので、一緒に持ってきたサラダが小さく見えた。
「トー姉これ!」
「アッハッハ。幻の、限定の、特別の逸品だよ。ほんとに運良いねメルは。入荷した時だけしか出せないし3日も煮込むから、なかなか出せないんだから」
そんな話はマスタには届いていなかった。
(マンガ肉!き〜た〜ぞ〜!!感涙!)
しかし齧り付く事などできるはずもなく、ナイフで切り取られていくマンガ肉。
(いやいや、見られただけで大満足)
「「「いただきます」」」
「おいっしい〜!」
「うんうん、滅茶苦茶美味しい。皮のパリパリも最高」
「ああっ何年ぶりだろう。美味しい〜」
切っては食べ切っては食べ、夢中になった3人によってあっという間に骨だけに。
「もう食べちゃいました」
「あんなに大きかったのに。あっという間だったな」
「前もそうでしたね。少しの物足りなさがまた食べたくなるんです」
3人で一緒に出されていたサラダを摘み次の料理を待つ事に。
「よく見るといろんな所に盾が使われているな」
店内を見回したマスタが気が付いた。
「椅子、テーブル、トレイに看板。カウンターの奥の壁のやつなんて近くで見てた時には、気が付きませんでしたよ」
ダイアナが見ているカウンターの壁に鎮座するその盾は、大人1人が余裕で隠れられる大きさで近くで見ていればまさか盾とは、気が付きにくい物だった。
「ほとんどは知り合いからの寄付ですよ。自然と集まったんです。鍛治師や引退冒険者や衛兵、みんな家だと邪魔だって怒られるらしく、わざわざ持って来て店に来た時に眺めて酒の肴にするんですって」
「あはは、考えたもんだ。物が物だけに耐久性もあるしな」
メルトは呆れ半分といった態度だったが、マスタには引退した人達が昔を懐かしんで酒を飲む姿が見える様に思い浮かぶのだった。




