王都−27
昼前には街に来ることが出来たマスタ達。
リフィの店は結果が決まってから報告を兼ねて改めて行く事に決まり、次に向かうのは金属加工の店である。
ここはいわゆる貴族街とは違い、一般の平民達が多く住む街だ。
貴族街との境にある門をもう1つ潜り、通りに出ればもうそこは違う街の様に賑わいを見せていた。
馬車も速度を落とし牛歩とまではいかないにしろ、小走りの通行人に追い越される迄の速度になっていた。
「いつもこんなに混んでいるのか?」
マスタは元の世界では人混みは苦手だった筈なのだが、それも忘れソワソワし出していた。
馬車の格子の向こうに行き交う人達は、マスタが想像する事しか出来なかったファンタジーの世界の住人そのままで、まさに異世界という光景だった。
「お昼時という事もありますけれど。休憩する人も増えますから」
「そうですね〜。お腹空きました」
「なかなか進まないし、歩いて行くのは駄目なのか?」
ダイアナの空腹宣言を聞いたマスタも、急に空腹感が増した気がして提案してみる。
「駄目では無いですが、扉を開けて降りる場所が無いですね。もう少しだけ進んだら空き地があったと思うので、そこに寄せてもらって降りて歩きましょうか」
「いいね。そうしよう」
マスタもそれに賛成した。
「それにしてもメルトさん記憶力良いですね。私はそこまで覚えてられませんよ」
「王城で働く前は街で働いたり、冒険者もやっていましたからね。住んだり毎日出歩いたりしていれば自然と覚えますよ」
「多才っていうのか?色々出来るのはそのせいなのか?」
「そんな事ありませんよ、出来る事だけです。まだまだですよ」
メルトの謙遜にマスタは、向上心が高いのは良いなと思ったが
「それじゃあメルトさんおすすめの店に行きましょうよ」
と言うダイアナの言葉で空腹感を思い出した。
「前の店も美味かったしな。楽しみだ」
通りにあった空き地に寄せて停車し、御者のおっちゃんに幾らか包んで渡し、夕方に合流する事にして貴族街との境の門前広場で待ち合わせする事に決まった。
メルトを先頭に歩き出す3人を、道行く者達が全員振り向いている。
(リアル二度見がこんなに発動するとは。綺麗どころが2人もいるしな…)
しばらく大きい通りを進み広いT字路を曲がると香ばしい匂いが漂ってきた。
「お〜お腹鳴りそう。お肉を焼く匂いかな?」
「本当ですね〜お肉食べたくなりました」
「ふふ。久し振りに嗅ぎましたが懐かしい匂いです。さ、行きましょう。そこの盾の看板の店です」
「看板って言うより本物の盾じゃないか?あれ」
「盾看板ですね。盾板かな?」
(ダイアナさんに座布団一枚!)
店の内側に大きく開け放たれた扉を潜り中を覗くと、体格の良い客が多くかなり賑わっていた。
カウンターの方から元気な声が聞こえてきた。
「いらっしゃ〜!メル!メルじゃない!久し振りじゃないの!元気にしてた?も〜。アンタ〜!メル来たわ〜!ちょっと顔出しなよ!」
「ご無沙汰してますトー姉。相変わらず賑わってますね」
トー姉と呼ばれた女性は恰幅の良い人で、抱き締めながら話す元気のいい人の様だ。
(メルト半分埋まって見えるけど大丈夫だよな?)
「メルちゃん来たって?おお!元気だったか!?そ…そ〜か、そう言うことかい?綺麗になり過ぎなくらいだぜ。ハハハハ。祝言の報告とはな!いや〜めでたいな!」
「え!何?あら本当に!綺麗になったわね〜!やっと良い人見つけて身を固める気になったのね。そりゃ、幸せでこんだけ綺麗にもなるわよ!」
(すんげーパワートーク。ついていけね〜)




