王都−26
「剣を持つのも、振るうのも初めてです。難しいものですね」
「身体は動くのにと思ったら、そう言う事でしたか」
「やっぱり不恰好で分かり易かったですかね?」
マスタは経験の有無を知らせずに模擬戦を始めたので、悪かったなと思い苦笑いで聞いた。
「握りや振り、足運びにフェイントと色々ありますからね。ですが、初めてでこれだけ見えて、動ける人がこれからそれらを習得し伸びていくと思うと驚異ですね」
メロウは特に気にした様子もなく、感心したようだった。
「それは褒め言葉と受け取っておきます。じゃあ、もう一回!っはああ!」
それからもう数回模擬戦を繰り返してから汗を拭き休憩してから戻る事にした。
「朝の軽い運動のつもりでしたけど、思ったより良い訓練になりました。ありがとうございました」
「いえいえこちらこそ。良い訓練になりました」
「俺程度でそう言ってもらえるのは、お世辞でも嬉しいですね」
「お世辞じゃあありませんよ、それに…」
メロウが言葉を続けようとしたところで、正面からメルト 達 が来るのが見え言葉が途切れた。
「「ご主人様お迎えにあがりました」」
(ご主人様って誰ですか?)
「メロウ女準男爵様もご機嫌よう」
「メ、メルトにダイアナ嬢?か?何があった?」
煌めくサラサラの髪に透き通る様な肌の侍女服2人が、王妃様と王女様と侍女達を引き連れて現れた。
メロウがはっとマスタに顔を向けるも、マスタは何事もないかの様に話しかけた。
(無視無視。何も無かった)
「今日は昨日回れなかった店等に行ってみるか?」
(っていうか何人いるんだよ。さっきは全然会わなかったのに)
「畏まり『それよりも』ました…」
王妃様が会話に被せてきた。
「メルトとダイアナは何をしたのですか?」
「何かしたのか?」
「「いいえ。特に何も」」
「嘘おっしゃい!髪はツヤツヤでサラサラ!肌はツルツルですべすべ!これだけの変化があって何も無いはずが無いでしょう!」
(っていうか、想定の範囲超えるにしても変わり過ぎだろ2人とも!)
おとぼけ漫才をしている横からメロウに冷静な突っ込みを入れられる。
「ていうか。マスタ殿以外ここ迄の事を出来る人はいないだろ」
「そうです!しかも2人は退職してマスタ様の従者になると言ってるんです!私だって従者になります!」
「「「「いや王妃様それは……」」」」
メルトとダイアナの目が泳ぎ助けてくれと訴えている。
(だから言っただろうに。さっきの優越感丸出しの優雅な振る舞いはどこいった?)
「…そうですね。多少思い当たる節は有りますが、昨日王妃様と王女様に言った事もあります。今直ぐどうこう出来る事では無いですし、私からの要望や提案の話もする予定は有りましたし、明日の夜に会議を設けてその時に多少の希望は叶うかも知れません。どうでしょうか?」
「羨望嫉妬私利私欲の話ですか。……分かりました。皆さん明日の夜までに要望や提案が出されても全て通る様に準備しておきましょう!」
「「「「はい!」」」」
(軍隊並だなこの一体感は)
「マスタ殿えらいことになりそうですね、この2人見ちゃえばしょうがないですけど」
王妃王女侍女軍団は回れ右して戻って行った。
その光景を横目で見て離れた事を確認したメロウが小声でメルトに話しかけた。
「今、例のアレ着けてんのかい?」
コクコク
「巻き布よりも?」
コックンコックン
「そんなにかい」
コクコクコクコク
「マスタ殿。迎えの従者も来た事ですし、私はこの辺で失礼します」
「ああ、ありがとう。また機会があれば是非手合わせお願いしますよ」
「こちらこそ、喜んで」
早歩きで去って行くメロウを見送り、振り返ればダイアナとメルトはしゃがみ込んでいた。
「だから言ったろうに…」
緊張の糸が切れた2人の回復を待ってから出掛けるかと、2人の近くに座り込むマスタだった。




