王都−25
「召喚の間では大変御無礼を致しました」
と言われて、気が付いた。
「ああ、背後から飛び込んで来た人かな?」
「…はい」
今の冷静で落ち着いた雰囲気から、普段は冷静なのだろうと思った。
「あの場では先の騎士達を見ていたでしょうに。何故先走ったんですか?」
「臣下として、犠牲を覚悟で何とかしなければと、焦って身体が動いていました」
理由を聞けば納得はできるものだったが
「その様に思い行動出来る人であれば尚更、犠牲になるべきでは無いでしょう。もしあの場で何かあっても国は続いていくんですから。残って任せる人達があなたの様な想いを持っていなければ、また同じ失敗を繰り返しかねませんからね。それにもう過ぎた事ですから」
「…ありがとう…ございます」
メロウ女準男爵が跪いたまま動こうとしないので、ミルティア王妃が声をかけた。
「さあ、立ちなさい。…メロウは昨日の…例の…困っていた1人なのですけど。謝罪して受け入れてもらうまでは、受け取る事は出来ないと聞かなくて。丁度これから伺おうとしていたのですよ」
「なるほど、確かに丁度良かったですね。それじゃあ気兼ねなくどうぞ」
(危なかった、今部屋に来られなくて良かった)
「どちらの事も重ねて、ありがとうございます」
ミルティア王妃は昔からの知り合いなのか、身内を見る様な温かい目でメロウ女準男爵を見ていた。
(さっきも気軽に呼び捨てで呼んでいたしな。今のやれやれって顔も妹の世話を焼く姉って感じだな)
「ところで、マスタ様お1人でどちらまで?お付きの者も付けずに」
「ええ、2人は朝食の時にお茶を溢して、その片付けを。服も少し洗うそうなので部屋の浴室使ってもらっています。その間私は訓練場で身体を動かそうかと思っていたのですが場所も分からず、生憎上手く行き会える人も居なくて彷徨っていました」
「それはまた。今は警備も少し割いていますしね。例の子爵の弟の件で裏取りに動く人の護衛とか。一応貴族の身内なので外部の者を頼んだりも出来ませんから。更にマスタ殿に絡んで厳罰となれば避ける人も多いでしょうしね」
「‥そう言う事でしたか」
(避けるって酷くない?あ、何か自分に心当たりがある人って事か?)
「練兵場は私がご案内致します」
メロウ女準男爵が案内を買って出てくれたので、マスタは素直に頼む事にした。
「いいんですか?それは助かります」
そうしてマスタは王妃と別れメロウ女準男爵と共に練兵場へと向かった。
練兵場は全く方向が違ったらしく、戻る様に歩き15分位で辿り着いた。
道順も迷路の様で一度では帰れないだろうと、鍛錬に少し付き合ってくれると申し出てきたメロウ女準男爵と練習用の剣を持って広い場所まで行き、構えて向かい合う。
「先程も言いましたが、呼び捨てで結構です。」
「了解。じゃあいきますよ!」
(存在感とかそういうものかな?急に大きくなった様に見えるなぁ。)
自然と緊張してきて距離感や動き出す機会も測りにくく感じたので、気合いで振り払うように大きく息を吐き前に走り出すと、剣を振るった。
メロウは少しだけ身を引き剣を避けると、マスタが剣を引く前に近くに迫ってきていた。
慌てて下がりながら、剣を引き戻し正面からくる剣撃に合わせる。
「ガギィイン」
剣と剣のぶつかり合う音は一度だけで止まった。
「なるほど。勉強になります」
マスタの言葉にマスタの腹にピタリと当てられていたメロウの膝が離れていき、2人共無言で開始の位置まで戻り2回目の模擬戦を開始した。
今度はメロウの鋭い突きが迫り、それをマスタが下から払い上げ、その勢いで懐に入ろうとするものの剣の鍔を足で蹴られその反動で距離を空けられてしまう。
「もしかして、剣を振るうのにはあまり慣れていないんですか?」




