王都−19
その店もそれ程かからず到着し、馬車を降りて店構えを見てもお洒落な店だな、程度の感想だった。
ただ、店の中が見えない事と商品の展示が全く無く、何の店なのかマスタは気が付けなかった。
扉を開けて直ぐに衝立があり、それを回り込んで目にした物は。
フリフリ、キラキラ、ヒラヒラの下着の海だった。
(あれ!ここ女性の下着の店?!俺まで入っちゃったよ!後ろは…メルトが控えてて前に進むしか無い…参ったな)
とりあえず奥に進むマスタ。あまり凝視しているのもどうかと思い、店員を探す振りをしつつメルトに聞いてみた。
「ここは…あれだよね…女性の下着店だよね?」
「あ、いえ。ここはどちらもありますから。種類や形も殆ど拘らない男性用は何処も少ないですけどね」
「確かにね…」
(2人とも商品持たないでくれ。着たところ想像しちゃうから。見ないようにしよう。店員さん探さなきゃ。そうそう店員、店員。探さなきゃそうそうそう…)
店の奥で商品を畳んでいる店員を見つけると声をかけた。
「あの〜、ちょっといいですか〜」
「御来店ありがとうございます。直ぐに伺いに参ります」
一旦手を止めてこちらに来てくれた店員さんは、夜のお店でも通用しそうな化粧強めのお姉さんだった。
「何をお求めでしょう」
「自分用の下着を上下共に幾つか欲しいんだけど。肌触りの良い生地で」
「それでしたら、こちらの棚から形を選んで…あ、ご来店ありがとうございます。お連れの方でしょうか?」
商品を選ぶのに夢中になっているメルトとダイアナに店員が気が付き、マスタに聞いてきた。
「ええ。この街は不慣れなもので、案内をお願いしているんです」
マスタは大雑把に答えたが、店員は
「そうでしたか。ではこの中から形と生地をお選びください。採寸の道具を取ってまいりますので」
と言って、何故かメルト達の方へ行ってしまった。
10も無い種類の中なので、直ぐに決まったのだが長い袖か袖のない物しか置いておらず、いわゆるTシャツは無いのだった。
(よく考えてみると、今まではVネックのTシャツが多かったなぁ)
などと思い返していると、ダイアナ達の話し声が聞こえてきた。
「お二方が案内役なんて、あちらの男性はどちらの方なのですか?」
「詳しくは申し訳ありませんがお答えできません。陛下のとても重要なお客様ですので、よろしくお願いしますね」
「か、畏まりました」
女性店員が急に緊張して答えていた。
「まあ、とても気さくな方ですから。普通に接して戴ければ大丈夫ですよ」
「それよりもメルトさんまだ布巻きなんですか?そろそろちゃんとした下着を着けたほうが良いと思いますけど。アドリンさんからも言ってあげてくださいよ」
(店員さんと知り合いだったのか、アドリンさんって言うのか。ってそこじゃなくって、布巻きってサラシ的な?なのか?いけね。かなり気になるけど余計なことを考えてると目線が行ってしまう)
「私はこのままでいいんです。ただでさえ肩凝りなのに。動けば邪魔で」
「そうですねえ、前にもそう言ってらしたから他の街や国でも探しておりますし、改良も考えてはみたんですけどねえ」
「羨ましい悩みですね…。…もしかしてマスタさんなら何か良い案あるんじゃないですか?」
「い!いくら何でもそれは無いでしょう?そ、それにあっても私は聞けませんよ。恥ずかしい」
「マスタさんというのはあの男性の方ですか?女性の下着にもお詳しいので?」
(やめて!こっちに振らないでくれ!聞いた事はあっても語れるほど知識も無いし。あ、おい、嘘だろ。こっちの向かって来た!)




