王都−14
朝食を持って来た侍女長メルトとダイアナと共に食事をしつつ、マスタは浴槽の排水と靴の話を聞いた。
「排水は底の見え難い所にあるんです。見た目も考えて作られたのかも知れませんね」
排水についてはダイアナが教えてくれた。
「靴は今日向かう街に、知り合いのやっている店があるのでそこを薦める予定でした」
靴は既に考えてくれていたらしい。
食事も終わり用意してもらっていた馬車へと3人で歩き
「今日はメルト侍女長さんも付いてくれるのは有り難いですが、城の仕事は大丈夫なんですか?」
「メルト。で構いません。お気になさらず。私の代わりなど幾らでもおりますし。ダイアナばかりに栄誉な…責任ある仕事をさせるわけにもまいりませんので」
(栄誉ね〜そんな事無いと思うけど)
「それからお預かりしている物もございます」
そう言って腰のポーチから革袋を取り出しマスタに差し出した。
受け取って中を覗くとかなりの金貨が見えた。
「これは…どういうお金か聞いていますか?」
「今日の買い物などに使う分だと聞いています」
「ん〜まだ物価も知らないし、必要な時に必要な分だけ出して貰えれば良いから、預かっててもらえるかな?高過ぎたり安過ぎたりしたら教えて下さい」
そう言って一旦メルトに預かってもらう事にした。
マスタはよく見ていなかったが、この袋には金貨や銀貨、白金貨も含めて数百枚入っていた。
紐の先には王家の紋が、外の白い革には耐久性向上魔法陣が、内の灰色の皮には容量拡張と重量軽減の魔法陣が組み込まれた一級品の魔道具だった。
馬車置き場につき、御者をしてくれる無口で大人しそうな男に扉を開けてもらい3人で乗り込み街へ向け走り出した。
(それにしても異世界あるあるなのか揺れが酷い。見た目派手馬車じゃ無いだけ良いけど)
馬車が近くに見えていた城壁の門に近づき速度を落とした。
止まる程の速度になると、メルトが薄く扉を開けて何か見せると特に中を改める事もなく通り過ぎてそのまままた速度を上げていった。
(そうだ、地方に行く時には使えそうな通行証があるか聞いてみよう)
そんな事を思い付き、乗り込んでから大人しいダイアナを見ると、背中と尻の下に何かを敷きその上から落ちないように耐えている様子だった。
馬車はガラス窓は無く、格子を横にずらして調節すると陽の光と共に外の景色が見え、灰色と白の壁に赤茶色の屋根の統一されたお屋敷が建ち並ぶ街のようだった。
「この辺りは治安も良く地位や名声と資産のある人達が多く住む場所なので、店舗の品も高くても質の良い物があると思います」
メルトは淡々と言っている感じがして、あまり良い印象を持っていないのかもと一言「なるほどね」とだけ答え深くは聞かない事にした。
そんな通称貴族街と言われる街の、通り沿いの大きな店の敷地に入り、扉の前で馬車が止まった。




