王都−12
「コン・コン・コン…お食事をお持ちし致しました」
そこで目覚めたマスタは「どうぞ」と言って起き上がった。
食事の乗ったワゴンを押したダイアナが入って来たのを見て
「ありがとう…多くないかな?」
お礼を言っている途中で料理の多さに気付きダイアナに確認した。
「いえ。そこそこです。」
(俺が言い出した事だけど、上手く使われちゃってるな)
野菜炒めとサラダとスープと焼いた肉と煮込んだ魚とパンが数種類とワインと果物と。
殆どの物に蓋や布が被せてあるのだが、何故か想像がついた。
空腹と料理から漂う香りに気を取られ、マスタは疑問も浮かばなかったが。
「毒味役もさせて戴きます」
「要らないよ。毒は効かないし、わかるから。それよりも一緒に食べてくれると助かるかな。あまり出された物を残したくないし」
(危ない危ない。毒や状態異常の対策しとかなきゃと思っていたのに、すっかり忘れてた。配膳手伝いながら設定しておこう。)
マスタは恐縮し渋るダイアナと一緒に料理を並べて、席に着いた。
「いただきます」
サラダに手を伸ばし取り分けるマスタに、胸の前で手を組み祈る姿勢のダイアナが不思議そうな顔を向けていた。
「あ、今の言葉?食事をしながら話そうか」
そう言ってシャクシャクとサラダを食べるマスタにダイアナも料理に手を伸ばす。
「この世界でも分かりやすく言うと、生き物の命をいただくとか、野菜や果物の大地の恵みをいただくとか、育てた人や作った人に感謝する言葉として言う人もいるかな。」
(諸説あるし、結局自分がどう使っているかって事だしな。適当シッタカだよな〜)
「あの一言にそれほどの意味が…」
「大袈裟に考えなくても良いと思うよ。他の事に感謝している人もいれば、習慣でただ言う人もいる。強制したりされたりするものじゃあ無いと思うけどね」
「それでも良い言葉ですよ。育てた人や作った人まで含まれるのも素晴らしいと思います」
笑顔になったダイアナを明るい部屋で間近に見て、あらためて美人だなと思ったマスタ。
長い金髪を後ろで纏め、睫毛も長く目はパッチリ大きく快活で明るい笑顔は、まさに絵になるなの一言だ。
「勿論、神に感謝の祈りをする人や国もあるしね。個人的にはいただきますの短さも良いかな。たくさんの人が一斉に言うと一体感というか、足並み揃う感じがするし。店でも屋外でも温かいうちに食べられるしね」
「じゃあ、個人的に、真似しても良いですか?」
「そりゃ勿論いいけどね。」
「ありがとうございます」
お酒は飲まないマスタと仕事の残っているダイアナはワインには手を付けなかったが、果物以外2人で綺麗に全て食べ切った。
「果物は間食で食べたいから、もらっておいても良いかな?」
「はい、もちろんです。どうぞ。」
リンゴとミカンに似た果物をテーブルの皿に移しながら
「明日の予定はどうなさいますか?」
と聞かれた。
「目立たない様に街を見て回ろうかと思ってるよ。遠いかな?」
「そうですね。馬車をお使いになられた方がいいかと思います。それと、そのお召し物では目立たずは難しいかと思いますが?」
すっかり失念していたマスタの服装を指摘してくれた。
「あ〜。どうしようかな。それについては相談したいと伝言をお願いできるかな?
「承りました」
ダイアナは、何か思い付いたという顔をして一礼するとワゴンと共に部屋を出て行った。




