王都−11
「うむ。確かに指摘されれば、そういう物だと思い込んでいたのか…」
「素人の意見で思い付きですけど、本当に素材や製法がそれしか無いのか?改良の余地もないのか?研鑽し続けて数百年とはとても思えなくてですね。少し高くても使いやすい、滲みにくく保存性がいいとか。安くて使い捨て用の物とか。特徴があれば生産者毎に住み分けできるかなと」
「とても素人の思い付きではないな…」
ドベデスは感心している様だったが、サロンドは違う事を思ったようだった。
「具体的といいますか、見た物を思い出して話されている様でしたが。もしかして向こうの世界の事ですか?」
目を輝かせて聞いてくるサロンドに大まかになら良いかと話すことにした。
「鋭いですね、その通りですよ。向こうではありふれていて当たり前で溢れかえっている物なので。」
「なんと!」
「硬い、柔らかい、厚い、薄い、大きい、小さい、色、艶、水に強い、水に溶けやすい、本、内装、コップ、皿、鼻をかんだり、お尻を拭いたり。世界中であらゆる物に変わって使われていますよ。」
「は〜…凄いですね。紙で出来た世界ですか…」
(サロンドさん想像行き過ぎだから)
「勿論同じだけの種類、木も、石も、鉄も、樹脂やその他の資源も加工して使われていますよ。」
「もう想像も追いつかんな…」
ドベデスは天井を見つめ口を開けたままになっていた。
「どれも有限な資源で木は元に戻す為に時間も掛かるので、世界中で木を切った後にその分苗木を植える事をする様になりましたよ」
「先を見据えた行動が必要ですね…」
「この世界にそのまま当て嵌まるかは分からないけどね。ともあれ、今ある物だけでも沢山発展する選択肢は増えたんじゃないですかね?」
そう締めくくったところでノックの音がした。
話をしていた部屋を出て銀髪の侍女長の後に続き、泊まる部屋へと向かっていた。
「お食事はどうなさいますか?」
「部屋で食べたいので、軽食でも良いからお願いできるかな?」
「いえ。そこそこの物をご用意しておりますので、お部屋にお持ち致します」
「助かるよ」
「お気になさらず」
「そういえば、湯浴み?はできるかな?」
「お部屋に小さい物ですが付いていますので、ご準備致します。広いところが宜しければ別でご案内致しますが?」
「いや、部屋の方で問題無いです」
「畏まりました」
(俺の事どう伝わったか分からないけど、えらく話し方が堅いんだよな、侍女長さん)
そうこうするうちに目的の部屋に着いたようだ。
「こちらです」
先に部屋に入って、扉を開きながら待ってくれている横を通り越して中を見渡した。
「あの、この部屋って豪華過ぎるんじゃ?」
「いえ。そこそこです。もっと煌びやかなお部屋もご用意できますが。」
「…ここで良いです」
「では、奥の部屋の浴槽に湯を張ってまいります。」
「あ、よろしく」
侍女長は音も立てずに奥の部屋に消えて行った。
(うわ〜まじか〜なんだこの部屋。キングサイズベッドにシャンデリアまで…あれ。色々取り去った形跡が残ってるけど。あそこは絵画であっちは壺かな?…いや、これ以上ギンギラじゃあ落ち着かないし、見なかった事にしておこう。)
「お湯の準備はしておきましたので、暫くしたらお使い下さい。では、後程お食事をお持ち致します。」
そう言って銀髪の侍女長はまた、音も立てずに扉を閉めて出て行った。
マスタはソファの背もたれに上着を乗せて、軽く腰掛けたが疲れを感じてそのまま横になり目を閉じた。
(腹も減ったけど、大声出して演技して慣れない事で疲れたな、‥少しだけ寝よう)
身体の力を抜くとストンと落ちるように眠りについていた。




