王都−10
この世界に送られる発端となった召喚の話を無事伝え終えて、他の話題になった。
「あの…授かった御力というのは先程の無詠唱の魔法でしょうか?」
ナガールが恐る恐る聞いてきたが、ドベデスとサロンドは抗議の視線をナガールに向ける。
ダイアナは上半身を少し傾けて耳を澄ませているのが分かった。
「あ〜手の内全て明かす事はしないが、あれは魔法じゃ無い。だから魔力も呪文も要らず使える。勿論無制限じゃないけど。」
「おお。それが神のお力ですか」
「いや、俺個人の能力かな。相手をなるべく傷つけずに、話を聞くような状況に持っていきたかったから」
雑談という事で手を止めているサロンドも質問してきた。
「では、ナガール宰相のアレは?」
(本来なら相手の手の内を晒すような事だし聞くのを躊躇していたんだろうけど、好奇心が勝ったかな)
「簡単にいうと、見えない壁で部屋のように囲って閉じ込めただけだ。」
ナガールは先程の事が過ぎりブルルと小さく身震いしていた。
とうとう堪えてきれなくなったドベデスも質問する。
「騎士や男爵を気絶させ跳ね飛ばしたあれは?」
「触れようとした時にスタンガ…あ〜、雷の様なもので動きを止めて痺れてもらう。そこへ見えない壁をぶつけたってとこだな。男爵は背後から飛んできた人かな?アレは逆に壁にぶつかった後に雷当てたから飛んではいかなかったけど。」
「なるほど。ありがとう。秘匿されるべき力の事を教えていただいて。感謝する。」
「ここだけの話にしておけば、分からない能力は牽制にもなるし、良からぬ事をしそうな奴等にはね。まだほんの一端だけだし。」
(他の能力は獲得してないけどね。)
マスタはお茶を飲みきるとダイアナにお代わりをお願いする為にカップを差し出した。
「それでこの後はどうなされるおつもりか?」
ドベデスは窓の外に目を向けてからマスタに聞いた。
「そろそろ陽も落ちてくる時間ですね。毛布でも借りれればこの部屋でも良いんだけど。」
「それは駄目です」
「いくら何でもそれは」
「そんな事をさせられません」
「最高級の歓待を準備させましょう」
ダイアナ、サロンド、ナガール、ドベデスが同時にツッコんだ。
「個人的にも派手なもの豪華過ぎるものは好まないし。そこそこで抑えてくれるならお任せして厄介になろうかな?」
「お任せください。では早速。ダイアナ嬢。一緒に行ってもらい食事と部屋などの準備の手配、手伝って下さい」
「畏まりました」
ナガールが立ち上がってダイアナを連れて一礼して出て行った。
「2人は仕事、いいんですか?」
何気なく聴いたマスタだったが、ドベデスは暗い顔になっていた。
「今日はもう終わりにする。明日からがかなりきつくなるのでな」
その言葉にマスタも納得した。
サロンドの方は先程書いていた紙束に手を置き
「これ以上優先する物はございませんので」
と気合の入った顔をして、続けて
「先程聞いた紙の話を自分でも調べてみようかと」
と言うとドベデス王も反応して
「紙の話とはなんだ?私にも是非聞かせてくれ」
と言われて、改めてもう一度紙の話をするのだった。




