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第493話

 「ってな訳で、ルリに世話になりつつ、世話する事になったカナエと……。ジュンイチだ。よろしくな」


 縁側の惨状そのまま。

 騒ぎを聞きつけやって来たカナメとスイレンに状況を説明しつつ、挨拶をするカナエ。

 ジュンイチは彼女の服の裾を掴んだまま、ぺこりとお辞儀をした。


 「……つまり、どう言う事だ?」

 最初に口を開いたのはカナメ。

 スイレンも言葉にはしない物の、困った様な笑みをこちらへ向けて来ていたので、追加の説明が必要な事には違いないだろう。


 「要は、月夜が居なくなって、代わりにカナエ……さんが、俺達に力を貸してくれる事になった」

 一応?上位存在でもあるし、これから後ろ盾にもなって貰う予定なのだから、呼び捨てはどうかと思い、敬称を付けて見るが。


 「おいおい、今更さん付けか?」と、こちらの肩を叩きながら言って来るカナエ、さんは無視して。


 「……この縁側は?」

 色々言いたい事は有りそうだったが、諦めて話を進めるカナメ。


 「……カナエさんが空から落ちて来て壊したんだよ」

 月夜を追い払った後とも言いずらいし、適当な事を言って、その場を誤魔化す。


 「わりぃな」

 俺の肩と頭越しに腕と身を乗り出して謝るカナエさん。

 どうやら話を合わせてくれる気の様だが、色々とぶつかっているし、普通に重いので止めて欲しい。


 「「…………」」

 謎の沈黙。軽い謝罪をするカナエさんをカナメが、睨みつけるとは行かないまでも、精査する様な。それでいて渋い顔つき。

 寧ろそれだけで治まっているのは、カナエさんの裾を常に握って離さないジュンイチの存在が大きい気がした。


 しかし、ジュンイチ程では無いにしろ、俺のデフォルトな身長も、幼少期の栄養不足のせいか、成人男性のソレには届いて居ない事もあって、長身なカナメとカナエさんに囲まれていると、その存在感に気圧されると言うか、何と言うか……。

 兎も角、俺を挟まずにやって貰いたいのだが……。


 「……壊れてしまった物は仕方が無いですね。また今度、皆さんに言って直して貰うとしましょうか」

 俺とそう変わらない身長のスイレンが、着物を着こなしながら、ゆったりとした自然な仕草で、二人の会話に割って入る。

 

 「っと、それには及ばねぇぜ」

 そう言ってカナエが砕けた縁側に手を添えれば、その手先が液体のように溶けだして、砕けた破片を巻き込んで寄せ集め。

 それでも不足している部分は、蠢く肌色で補って、形を整えた後に、色や質感を合わせて行く。


 「……壊れて無いトコの縁側の情報を読み取って模倣したんだが、これでどうだ?」

 そう言う彼女は心なしか、身長が縮んでいた気がした。


 「……完璧です。これが貴方様の能力なのですね」

 何処が壊れていたのか分からない程に修復された縁側へと触れ、確かめる様に、どこか納得した様に呟くスイレン。


 「あぁ。大体の物質は解析、模倣出来る自信があるぜ。まぁ、複製には多少肉体を消費しちまうが……。能力を口で言われるより、見た方がしっくり来ただろ?」


 「はい。とても」


 「後はこんな事もできる」

 そう言って自身の腕を縁側仕様に変えたり、液体の様に溶けて、別の場所で再集結し、人型に戻ってみたり。

 瞬間、ジュンイチが無言でカナエさんの下へ走って行く姿は少し心に来るものがあった。


 「この力でコイツの手伝いをしつつ、上位者?としての知識もあっから、そいつらを駆使して、上手い事手を貸してやんよ」

 そんな彼の様子を気にした風もなく、話を進めるカナエさん。


 「それは頼もしいですね」

 浮かべた笑みの前で静かに手を合わせるスイレン。


 「……っと、そっちの嬢ちゃんも安心しな。アタシのいた世界では人のモンを勝手にくすねるのはご法度だったからな……。少なくとも力尽くで奪ったりはしねぇさ」


 「……なら良いのだが」

 こっちはこっちで良く分からないが。納得とは行かないまでも、取り敢えずは視線を外してくれた。


 「……んで、アンタらの記憶はどうなってんだ?」

 ドスンと縁側に腰かけると、本題とばかりに話し始めるカナエさん。

 しかし、ソレは非常に繊細な話題で。出来れば……。少なくとも、事前の準備無く、皆の居る所ですり合わせる様に行って良いモノでも無い気がする。


 「記憶ぐらい読めるんじゃないのか?」

 なので、俺は暗に、勝手に読んで、勝手にそちらで処理して欲しい旨を伝え様とする。


 「いや。無理だな。アンタらを飲み込んでアタシの一部にすれば分析できる様になるかもしれないが……。嫌だろ?」

 

 「あぁ」

 彼女なら俺達を自身の一部として取り込んだ後に、俺達を俺達として再生成する事も出来るかもしれないが。それは両者にとって精神衛生上とても宜しくない気がする。


 (……しかし、上位者なのに記憶が読めないのか……。となると)


 「……もしかして、魔力も感知できないのか?」


 「ん~、そうだなぁ……。向こう側から、無理矢理に干渉して来ようとしたり、強すぎるヤツは、体や思考がその影響を受けた結果から逆算して、存在している事を認識できる程度、だな。少なくとも、こちらから感知したり、まして、魔力を扱ったりは出来ない」


 「……なるほど」

 それは中々に、この魔力が脅威になる世界では致命的な気がする。


 「……そもそも、お前らが魔力って呼んでるそれは、一種のバグなんだよ。……いや、バグより質がわりぃ。感染して、増殖して、プログラムにも感知されにくくて、削除が間に合わない。削除しても、またどこかから生えて来る。対処されればされる程に探知されにくく、削除されにくく進化して行く、癌やウィルスのような存在……。だから正規のプログラムを扱うアタシとは相性が悪いんだ」


 「……なるほど?」

 理解出来た様な出来ない様な。


 「ぜってぇ分かってねぇな……?本来は、感情や魂なんてものはプログラムされてねぇんだよ。全ての生物は生き残った奴の性質だけが引き継がれていく。その結果が性格や感情と呼ばれる性質を生んだに過ぎない……。ここまでは分かるか?」


 「あぁ」

 多分、進化論とか言う奴だろう。理屈としては分からなくもない。


 「んで、地球と似たような世界をプログラムして、その中での自然淘汰。或いは意図的な介入の結果、人間と似た性質を持って居たり、犬や猫、スズメなんかと似た、私達が必要とする生物のプログラムが生き残って、この電脳世界内で主に利用されている模倣生物の原型として完成する。って訳だ」


 そう聞かされると、本当に魂や感情と言った物がプログラムされていない事が分かる。

 ……でも、当然か。本当の人類やその他の生物達だって、そうやって生まれて、自身の性質を基に、知恵を溜め、生き方を身に着けて来たわけで……。

 その結果、生まれた性質の一部が感情や性格と呼ばれているに過ぎないのだから、個別でプログラムした方が不具合の原因になってしまいそうだった。


 「……でも、それなら問題は無いんじゃないか?」

 一から完璧にプログラムされた生物達。そこにバグや不具合……、魔力の生成に繋がる様な欠陥は無い様に思える。


 「そうだ。ない……。無い筈だったんだ。だから分からないし、解決もしなかった」


 「…………」


 「ただ、原因は分からなくても、バグの根源は何となく把握できていてな……。ただのデータの削除ミスだ。肉体が消滅した筈の生物データが正常に削除されない。生きている筈の生物の複製が、肉体無しに生成される……。無限とも言える世界の生成と演算を繰り返していれば、どんな精密機器を使用してもいつかは生まれる、そんなバグだ」


 現実世界でも限りなく安定した、無とも有とも言える空間から、物質と反物質が生まれた様に。片方の物質だけが乱数的に多く生成され、対消滅しきらずに宇宙と物質世界と言うバグを生成した様に。

 世界のルールに置いても絶対は存在しない。それが電脳世界でも適応されたと言うだけの話だろう。


 「そんなバグ達は当然見つかれば即消去。しかし、コレを繰り返している内に、段々と感知しにくい物、削除しにくい物、他人のプログラムの中に隠れて、増殖したり、プログラムの追跡を躱す物が増えて来た……。まぁ、適者生存って奴だな」


 嫌な適者生存だな……。いや、生き残ろうとしてる奴らは必死なのだろうが。影響を及ぼされる側としては堪った物では無い。


 「んで、結局、汚染され切った区域は全消去を行ったり、分離処置をしたりしたんだが……。まぁ、結果がこれよ。

 全消去したと思ったら、消去も出来ず、感知も出来ないウィルスを生み出すわ。分離区域内で分離障壁すら食い破るやつらが現れたり……。電脳世界はしっちゃかめっちゃか……。にもならなかった」


 「と、言うと?」


 「一旦は滅茶苦茶になった世界も、ある程度時間が経つと、大きなバグを中心に物質が沈殿する様に、再結晶する様にして、それなりの形に。新しい世界として生形成されて行ったんだ」


 「なるほど……」


 「んでも、世界の大半は荒れているし、一度落ち着いた世界でさえ、更なるバグの影響やら何やらで、サイクルが乱れて自壊したり、飲み込まれたり。安定とは程遠い世界になっちまってな。

 かと言って、既にこの世界へダイブしている人間も多く居たし、消さないで欲しいと言う意見や、学術的価値があると言う奴もいてな。結局、物理的に新しい電脳装置を作り出して、この電脳空間は今も維持されているって訳よ」


 「……そんな世界に二人できたのか?」


 「……んにゃ、ジュンイチが先に。私に何の断りも無く、この世界にダイブしてたんだ。

 めちゃくちゃな世界だけど、アタシ達の住んでいた現実世界と違って、予想も制御も効かない世界って言うのは、危険でもあり、ドキドキやワクワクがあって、身体的な生より、精神的な生が優先される世界では事件発生後もそれなりの人間がダイブして行ったしな……。勿論、本来の利用目的とは別の、現実に戻って来れるかも分からない、一種のギャンブル的安楽死装置としてだが」


 「…………」


 「まぁ、それ自体は否定しねぇさ。最後の死に場所を求めて、星系一つ貸し切って、友人達と命を懸けた宇宙戦争ごっこしてる奴らと比べれば、めちゃくちゃエコだしな」


 生き様……、死に様も、やる事も、スケールがデカすぎて想像力が付いて行かない。


 「ただアタシ達は、死ぬ時は一緒に死のうって約束したんだ……。それなのに私が、たかが数十年、世界を散歩してる内に一人で勝手に死のうとしてるなんて……。許せねぇだろ?」


 やはり彼女の言っている事は半分も理解できない。……でも。


 「約束を破るのは……。一人で勝手に死のうとするのは許せないな」


 「だろ……?」


 その一点に関しては、迷いなく彼女の意見に賛同できた。

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