エピローグ ゲームの結果 ※最終話 (後書き&解説付)
【アナスタシア視点】
第三王子の死刑が終わった後。
アナスタシア公爵令嬢は、個室のテラスから。
人がいなくなった広場を見ていた。
短かったようで長かったこの数日間。
始まりと終わり。
アダムとの日々を思い出していたのだ。
◇
アダムと結婚して、最初の1年目は幸せだった。
何の問題もなかった。
お互いに愛し合っていることが伝わってきた。
彼といるだけで幸せだった。
本当に幸福な日々だった。
でも・・・
時間が経つにつれてそれは変わってきた。
何かがあったわけではないけれど。
特別な出来事があったわけではないけれど。
徐々に距離が開いてきた。
一時の恋愛の熱が冷めてきて、安定期に入ったのだと思った。
しかし。
どこか心に不安が残っていた。
時折、ふいに落ち着かない気持ちになった。
心が焦ったのだ。
結婚して2年目のある日。
私は見てしまった。
出合って4年目のプレゼント。
一ヶ月もかけて手縫いをした服を彼に渡そうとして後を追ったら。
噴水広場で第三王女様とキスをしているところを。
それが始まりだった。
私は深いショックを受けた。
同時に。
心の中にくすぶっていた疑念と不安が一つになったのだ。
強い想いは私の中でくすぶり続け。
いつしか・・・
私は復讐を誓っていた。
アダムに同じだけの傷を負わせると誓った。
だけど・・・
アダムと第三王女の密会を調べているうちに。
彼女にも尾行がついていることに気づいた。
よく調べると。
それは彼女の護衛ではなく、別の者だと分かったが。
カミラが入念に調べたけど。
結局尾行の雇い主が誰なのかは分からなかった。
私は笑顔で夫に接しながらも。
その裏では。
夫、アダムへの復讐計画を練っていた。
途中でやっぱりやめようかと思ったけど。
アダムが第三王女と密会を続けていたので、計画を進めた。
直情的には動くのではなく。
いきなりアダムに襲い掛かるのではなく。
チャンスを待った。
良い条件が揃うまでいくらでも待つつもりだった。
心の隅では。
復讐なんてしたくなかったのかもしれない。
アダムが自分で自分の行動に恥。
悔い改めて欲しかったのかもしれない。
アダムを憎んでいたけれど。
同時に彼のことを信じていたのだと思う。
でも。
そんなある日。
第三王女の尾行している者が。
何か良からぬ事を起こすとの情報を得た。
メイドのカミラが察知してくれたのだ。
私はその企みに便乗することにした。
相手の正体は分からずとも、何をするか分かっているのであれば。
計画に組み込むのはたやすい。
それまでにいくつも彼に対する復讐計画は練っていたし。
不倫の証拠など山の様に揃えていた。
もし。
尾行者が何をしなければ、私も何もしなければ良いのだ。
なるべくリスクは負いたくなかった。
それに。
自分で第三王女を殺す程の意欲は無かった。
作戦決行の前日。
首尾よくアダムの母、マリアンヌを怒らすことに成功した。
それを手がかりに、アダムに離婚届けにサインさせることも成功。
マリアンヌが性格的に問題を抱えていた事は察していたし。
アダムなら母を庇って離婚届にサインすると思っていた。
彼は母を大事に扱っているようだったから。
全て上手く行った。
幸先がいい。
作戦決行の日。
カミラが睡眠薬入りの水をアダムに飲ませ。
首尾よくアダムを眠らす。
それからアダムの腕輪と結婚指輪を確保する。
最後に、香水をたくさん振り掛けたローブをきて夜の闇に出る。
カミラと噴水広場に来てみれば。
既に第三王女は殺された後だった。
銅像に磔にされている彼女。
異様な光景だった。
私とカミラは驚いたものの。
すぐさまアダムの腕輪と結婚指輪を現場にしこんだ。
ローブの切れ端もだ。
アダムが殺人犯として疑われるように仕向けたのだ。
私達はすぐに現場を後にした。
誰かに見つかるリスクを少しでも減らしたかったのだ。
家に帰ってからは。
騎士団の来訪に備えてアダムの部屋に細工だ。
あれだけ現場に証拠を残せば。
すぐに屋敷にくるだろうことは予測できた。
第三王女からアダムが貰っていた恋文を、彼の部屋に隠す。
アダムはバレていないと思って、恋文を貸し倉庫に隠していたみたいだけど。
はっきりいってバレバレだった。
妻が気づかないわけないでしょ。
又。
アダムが捕まった際の証言のために。
手首にはきつくローブを巻いていた。
ちょっと痛かったけど、我慢した。
彼を残虐なレイプ魔に仕立てるには必要な事だったから。
開かれるであろう審問で、彼を追い立てるためには。
大勢の前で彼に恥をかかせたかったの。
彼を追い詰めて。
私が味わった気持ち。
信じていたものに裏切られる気持ちを体験させたかった。
アダムが王城で捕らえられている日々。
私は面会に訪れ。
良き妻を演じた。
まだ、彼に本当のことがばれてはいけなかった。
私にすがりつかせる必要があった。
信じた人に裏切られる気持ちを味あわせるためには絶対に必要だった。
ただ彼を死刑に追い込むだけは足りないから。
死刑はおまけみたいなもの。
一番大事なのは、彼の心に深い傷を与えること。
だから今は、彼に私を信じてもらう必要があった。
ここも上手くいった。
彼は幽閉されて辛かったのかもしれない。
子犬の様に私を求めた。
審問当日。
私は証言した。
何度も頭の中で、自分の部屋で練習したセリフを感情込めて話した。
どんなにアダムがひどい夫だったのかと。
どんなに鬼畜な人だったか証言した。
私は悲劇のヒロインを演じた。
観衆は信じたようだった。
私は演技が得意だから。
ずっとアダムに対しても演技をしてきたのだから。
当然の結果だ。
アダムの死刑が決まったので。
私は嬉しくなってついネタばらしをしたくなった。
誰か。
いいや。
世界の中でただ一人。
アダムにだけは言ってやりたかった。
私が復讐を成し遂げた事を伝えたかった。
何も知らずにアダムが死刑になるのはスッキリしなかった。
彼の心に深い傷を与えるのが一番の目的だったのだから。
私が噴水広場で。
アダムと第三王女がキスしているのを見たときと同じ。
それ以上の傷を負って欲しかった。
その結果。
彼はすっごく怒ったけど。
私は彼の反応に満足した。
彼の怒りようから衝撃は窺い知れた。
復讐は成し遂げたのだ。
長年の思いは達成できたのだ。
心が晴れ渡るようだった。
数日後。
独身になった私は第三王子から王城に呼ばれた。
何かと思ったら。
いきなり脅された。
離婚を取り消して死刑にするかもしれないと。
そのためには、マリアンヌを襲った賊を渡せと。
今思えば・・・
私はこの時。
事件の真相に気づいたのかもしれなかった。
同じ日。
アダムの牢屋を訪れると。
何故か彼は私に謝りだした。
不倫を謝罪し、自分の今の境遇を認めだした。
私は戸惑った。
そんな彼の姿は見たくなかった。
ずっと私を憎んでもらってかまわなかったのに。
それに・・・
アダムに優しくされると。
昔の記憶。
幸せだった日々を思い出して心が揺れてきた。
アダムは反省したんだから。
許しても良いかもしれないと思った。
ちょっとやりすぎたかもしれないと、自分でも思っていたから。
それに私は・・・
復讐を成し遂げた後のことを考えていなかったのだ。
復讐さえすれば満足だった。
その先はなかった。
意外な彼の姿は・・・・
私の心を揺らした。
私が迷っていると。
突然第四王子様が屋敷に訪れた。
王子は私に告げた。
『第三王女を殺したのは、第三王子』だと。
どうやって調べたのか。
第三王子が犯人だという資料も用意されていた。
私はその言葉で納得がいった。
それまで。
一体誰が第三王女を殺したのか疑問に思っていた。
結果を利用させてもらったけど。
肝心の犯人は分からなかったのだ。
でも、怪しげな動きをしていた第三王子だといわれて、妙にストンときた。
それからは早かった。
私はユヌス教団に向かい。
司祭とマリアンヌと話しあった。
二人とも私の話に直ぐに納得した。
マリアンヌはともかく、司祭が応じたのは驚きだった。
もう少し時間がかかると思っていた。
なんなら、第四王子に出てきてもらうことも考えていたのだ。
「真犯人を告白する」との情報を、王城側に流して待つと。
すぐに暗殺者の一団がきた。
でも、彼らとは争いにはならなかった。
暗殺者を率いていた第三王子の従者ニアは。
こちら、第四王子の味方だった。
ニアとはその後、話し合いをした。
どうやって第三王子を追い落とすか。
その結果。
私とマリアンヌの暗殺未遂と、第三王女殺して追い立てることに決まった。
ニアと協力して私とマリアンヌの死を偽装した。
しかし。
第三王子は思ったより早く動いた。
急にアダムの死刑を早めたので。
私達も早く動くしかなかった。
慰霊祭の準備が進む中。
裏で私達は国の要人に語りかけた。
第四王子様の存在と、ニアが用意した資料があったので。
第三王子を追い落とす話はスムーズに進んだ。
そして。
見事第三王子を追い落とす事に成功した。
アダムは無罪になったのだ。
第四王子様が第三王子様を処刑するのには驚いたけど。
私にはどっちでもいいことだった。
私の身は安全になり。
アダムは無実になり。
復縁のチャンスがめぐってきたのだ。
私の心はここ数日揺れ動いていた。
死刑に追い込むほどアダムの事を憎んだけど。
復讐をしてスッキリしたけど。
牢屋に入っているアダムをみると心が痛んだし。
彼の姿を見ると何故だかやり直したいと思ってきた。
私は彼に深く傷つけられたけど。
アダムも同じだけ苦しんだのなら。
許してもいいと思った。
今なら、第四王子の後押しもあり。
有利な条件でアダムと復縁できるチャンスがあった。
私はそれを有効に使うことにした。
結局のところ。
やはり私は、アダムと一緒にいたかったのだ。
一時のすれ違いはあったけれど。
深く傷つけられたけど。
彼となら上手くやっていけると思った。
幸せだった時期は確かにあったのだから。
彼をこれだけ騙す事が出来たんだから。
私は世界で誰よりもアダムの事を知っていると思うから。
彼以外に対して、ここまでの復讐計画はできなかったと思う。
途中で計画を放棄していたと思う。
想いが深いからこそできたんだと思う。
それに・・・
ほんの少し前に分かった事だけど。
私は妊娠していた。
勿論アダムの子だ。
これが最後の後押しだった。
運命だったのかもしれない。
私は彼の子供を育てようと思った。
やっぱり子供には父親が必要で。
それはアダムであってほしいと思ったから。
彼以外にはありえなかった。
心がそう答えた。
◇
長い回想から戻る。
部屋の椅子にはアダムが座っている。
カミラがいれた紅茶をおいしそうに飲んでいる。
私も椅子に座って紅茶を飲む。
これから。
アダムに子供の事を告げようと思っている。
数十分前に。
アダムは私との復縁を選んでくれたのだ。
それは私の脅しに屈したからかもしれないし。
私への愛情を取り戻してくれたからかもしれない。
でも。
どっちでもいい。
どちらでも私には構わない。
私は長い期間をかけた復讐に成功した。
しかし。
復讐を果たしても決して満足しないと分かった。
たとえ裏切られても。
アダムと一緒にいたいと思ったのだ。
それなら。
アダムも時が経てば同じ気持ちになる可能性が高いと思った。
私の方が先に裏切られて。
先にショックと回復を味わっているのだから。
それならば。
私の方が心の面で彼の先をいっていることになる。
これからの彼の心の変化だって大まかに予想できる。
数日。数週間。数ヶ月。
数年は彼に憎まれるかもしれないけど。
やがて諦めて私の事を愛してくれると思ってる。
なら。
それまで離れられないように一緒にいればいい。
彼に憎まれてても耐えればいい。
そう。
夫婦生活だってゲームと同じなのかもしれない。
こちらが先に動き。
相手の行動を読めさえすれば。
幸せな結婚生活を送れるはずだから。
ゲームの必勝方法は3つ。
・先手を取る
・頭を使う
・相手を騙す
普通の私にできることは。
先手を取ること。
先手をとった私が勝つはずだから。
きっと。
アダムも最後には私を愛してくれると思うから。
私は紅茶を飲み。
彼に告げた。
「アダム、私、子供が出来たの」
夕暮れだった。
【2部 END】
【ビューティフルざまぁ~公爵令嬢、悪役令嬢への道を歩む~ END】
6月20日が投稿初日ですので。
長い人で1,5ヶ月程のお付き合いになりましたが、
最後まで読んでいただきありがとうございます。
◆後書き&解説
私自身、小説を読む場合。
後書き&解説があった方が嬉しいタイプなので。
それっぽいものを。
どうも、赤ポストです。
本作はなろう風味で化粧 (悪役令嬢、ざまぁ、公爵令嬢など)しておりますが。
一応メインテーマは『執着する愛情』になっております。
相手に対する非常に強い想いが巻きこす物語です。
※書けていたかは分かりませんが
◆各属性一覧
アナスタシア 夫婦愛 (攻め)
アダム 夫婦愛 (受け)
クラウディウス 兄弟愛 (攻め)
マリアンヌ 親子愛
各人物で想いの表現方法&目的が異なっており。
最終的に本作の結末になりました。
なろう風味はサブテーマですが。
2回のざまぁ、悪役令嬢の悪役無双っぷりは重視しました。
アナ無双を書いていると楽しかったです。
強い想い、愛情がテーマですので。
軽めの話しではなく、憎しみや怒りを通して。
相手を許して、受け入れる話になっております。
ちょっと暗い話しになってしまったかもしれません。
続きを書こうと思えば書ける話ですが。
第三王女殺害事件は一区切りつきましたので。
今後は未定となっており、完結にしております。
又、誤字の多さは申し訳ありません。
最低限意味が分かるようには修正しているつもりです。
後は・・・
サスペンス要素がある場合。
連載にあまり向いていないのかもしれないと思いました。
謎が解けるまでが長いと・・・
長くなりましたが。
では、この辺りで失礼します。




