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祖父の家
大きな屋敷、二人はその門扉の前に立っていた。
リアナにとって実母の父、祖父であり宿波学園の理事長宅に来たのだ。
「本当は、会わせたくなかったな…」
海里は呟く。
「え?」
その言葉は、リアナには聞き取れなかった。
初めての祖父、リアナは海里とは裏腹にドキドキしていた。
「失礼します」
ノックの後、海里は部屋に入室する。
海里と共に現れた小さな女の子を見て、祖父は目を見開く。
「おぉ…独身の海里だけでは不安じゃったが、もう一人後継者が居れば安心じゃ」
祖父の気持ちはドキドキでもなければ感動でもない。
ましてや故人への悲しみでもない。
後継者、つまりは後継ぎの存在のみで彼女に関して何も思っていなかった。
「学園を継ぎなさい。海里の後に、母の代わりに」
そう言うと祖父は寝る。
言う事だけ告げて用は終わったのだ。
「リアナ、出ましょう」
海里の言葉に、リアナはうなだれて出て行ったのだった。
「リアナ、ごめんね」
海里は言う。
屋敷を出た後二人は黙り、車の中でポツリと呟いたのだった。




