行く宛のない、失意
翌朝。
いつもの時間。
いつもの石段。
「…………」
来ない。
少し早かったのでしょうか。
石段の上から、
下を見る。
「…………」
誰も、
上ってこない。
「はぁ〜っ……」
佐伯さん。
お忙しいのでしょうか。
「…………」
社務所へ戻ろうと思うけど……
やはり、
石段を見てしまう。
「…………」
やはり、
いない。
◇
「いろは」
「はい」
「そろそろお願いできる?」
「承知しました」
「…………」
母に呼ばれ、
社務所へ戻る。
いつものように、
参拝者を迎える。
いつものように、
受付をする。
「…………」
いつも通り。
何も、
変わらない。
「…………」
なのに。
ふとした瞬間、
石段の方を見てしまう。
「…………」
もう、
この時間ですし。
今日は、
来ないのでしょう。
◇
翌朝。
「…………」
いつもの時間。
いつもの石段。
「…………」
一つだけ、
今日もいつもと違う……。
「…………」
佐伯さんが、
いない。
「…………」
昨日は、
何か用事があったのでしょう。
「…………」
でも。
今日も……?
「…………」
私は……
佐伯さんのことを、
何も知らない。
「…………」
どこにいるのか。
何をしているのか。
「…………」
連絡先すら、
知らない。
「…………」
二日。
たった、
二日なのに。
「…………」
こんなにも、
不安になるなんて。
「…………」
もしかして、
何かあったのでしょうか。
体調を崩したとか。
大学で何かあったとか。
「…………」
考え始めると、
次々に浮かんでくる。
「…………」
確かめたい。
でも――
確かめる方法が、
ない。
◇
三日目。
「…………」
いつもの時間。
いつもの石段。
「…………」
今日も、
いない。
「…………」
もしかして。
もう来ない。
「…………」
確かに、
来る理由なんて……
もう。
「…………」
でも。
そうだとしても――
確かめたい。
「…………」
私は、
石段を下り、
向かう。
「…………」
佐伯さんのアルバイト先へ。
◇
「…………」
本当に、
来てしまった。
「…………」
佐伯さんの、
アルバイト先。
「…………」
けれど。
店の前で、
足が止まる。
「…………」
閉まっている。
店内も、
暗い。
「…………」
今日は、
お休みなのでしょうか。
「…………」
扉の向こうを、
覗いてみる。
誰も、
いない。
「…………」
佐伯さんも。
マスターさんも。
「…………」
どうして……。
「…………」
ここに来れば、
何か分かると思っていたのに。
「…………」
よりによって、
こんな時に……。
「…………」
どうしましょう。
「…………」
ここにも、
いない。
連絡先も、
知らない。
「…………」
探しに来たのに。
どこを探せばいいのかすら、
分からない。
「…………」
佐伯さん……。
「…………」
会いたい。
「…………」
その言葉が、
初めて。
はっきりと、
浮かんだ。
「…………」
どれくらい、
店の前にいたのでしょう。
「…………」
辺りも、
すっかり暗くなってきた。
「…………」
帰らないと。
「…………」
そう思って、
ようやく店に背を向ける。
「…………」
歩き出しても、
頭に浮かぶのは、
佐伯さんのことばかり。
「…………」
明日は……
「…………」
来るのでしょうか。
「…………」
明日も来なかったら――
「…………」
その先を、
考えるのが怖かった。
◇
翌朝。
「…………」
目が覚める。
いつもより、
少し早い。
「…………」
まだ、
時間はある。
「…………」
それなのに。
気づけば、
支度を始めていた。
「…………」
昨日より、
少し早く。
いつもの石段へ。
「…………」
石段の上から、
下を見る。
「…………」
まだ、
誰もいない。
「…………」
早く来すぎましたね。
「…………」
少しだけ、
待つことにする。
「…………」
一分。
二分。
「…………」
人影が見えるたび、
胸が反応する。
けれど――
違う。
「…………」
また、
違う。
「…………」
佐伯さん……。
「…………」
やはり、
もう……。




