↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/81

信じて、待つ

翌朝。

いろはは境内を掃いていた。

「…………」

箒を動かしながら。

時折、石段のほうへ目を向ける。

「…………」

まだ。

いない。

「…………」

昨日の面接。

無事、話せたでしょうか。

「…………」

そのとき。

「おはようございます」

「…………!」

顔を上げる。

石段を上ってきたのは。

いつものランニングウェア姿の佐伯さん。

「おはようございます」

「おはようございます」

「…………」

来た。

「…………」

いろはは箒を持ち直す。

「昨日は……」

「面接、どうでしたか?」

「うん……。」

佐伯さんが、ゆっくりと私の目を見た。

「言いたいことは、伝えられたと思います」

「…………」

よかった……。

「水瀬さんのお守り……効きました」

「私の……?」

「はい」

佐伯さんは胸元に手を添えた。

「面接の前に触ったら不思議と落ち着いて……。背中押されました」

「…………」

まだ。

持っていてくれている。

「まだ、持っていてもいいですか?」

「はい、きっと良い結果が出ると思います」

「ありがとうございます」

「…………」

結果……。

まだ、終わったわけではない。

「…………」

「いつ頃、分かるのですか?」

「たぶん、一週間くらいだと思います」

「一週間……」

「はい」

「…………」

一週間。

長い……。

「水瀬さん?」

「い、いえ」

「…………」

知りたい……。

でも。

怖い。

◇


大学。

「はぁ〜っ……」

今日、何回目だろう。

深いため息をつきながら、また窓の外を眺める。

「…………」

まだ、朝に聞いたばかり。

「一週間……。」

「はぁ……」

「いろは」

「…………」

「いろはってば」

「……はい?」

「さっきから、ため息ばっかり」

「…………」

「で?」

「……何でしょう」

「一週間って何?」

「…………!」

声に出てた?

「…………」

結衣の視線が、私の瞳を逃さない。

「な、何のことでしょうか?」

「佐伯さんね」

「…………」

「やっぱり」

こうなると、結衣からは逃げられない。

「昨日、最終面接だったんです」

「そっか」

「…………」

今朝の佐伯さんを思い出す。

胸元に添えられた手。

そこにある、私のお守り。

「言いたいことは、伝えられたそうです」

「じゃあ、結果が出るまでの期間のことね。いろはさ――」

「巫女としてです」

結衣の言葉を遮るように返した。

「はいはい」

「無論です」

「分かった分かった」

「…………」

絶対に。

疑っている。

「でも、よかったね」

「……何がですか?」

「佐伯さん。ちゃんと面接、終わったんでしょ?」

「はい」

「なら今はいろはが心配しても仕方ないじゃん」

「…………」

ぐっ……確かに……。

「結果が出るまでは、待つしかないよ」

「…………」

気づいている。

本当は。

気づいているけど……。

「良い結果だといいね」

「うん」

「…………」

もちろん、良い結果だと信じている。

でも……。

もし。

また……。

「…………」

そうなったら、佐伯さんは。

どんな顔をするのでしょう。

「…………」

いや。

信じて……。

待つ。

窓の外を見る。

朝と変わらない空。

「…………」

一週間。

まだ。

始まったばかり。

◇


恋愛経験ゼロ。

妄想の中では恋愛無双。

妄想の恋なら。

待つ時間なんて、いくらでも飛ばせる。

けれど現実は……。

一日ずつ。

信じて、待っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。