第九十五話 生徒会の日々・後編
俺は神代レン。普通の高校生――だった。
だがスキル《神核生成》によって炎の擬神ソレイナを生み出し、俺の日常は大きく変わった。
その後、生徒会へ所属することになり、自然の擬神ユシル、操りの擬神アヤネ、そして海洋の擬神フリートを召喚した。
――『異能学園高等学校』生徒会室。
昼休みも終わりに近づき、生徒会室には静かな空気が流れていた。
窓から吹き込む風がカーテンを揺らし、紙の端をぱらりとめくる。
机に向かう修也は書類へ目を通し続けている。
凛も慣れた様子で資料を整理していた。
詩乃は黙々とノートへ何かを書き込んでいる。
咲夜はというと。
「むぅ~……」
机に突っ伏していた。
修也が苦笑する。
「朝比奈、まだ終わっていないよ」
「だってぇ~!眠いんだもん!」
「昼休みに屋上で寝ていたよね?」
「うっ」
図星だったらしい。
凛が呆れた視線を向ける。
「自業自得ね」
「ひどい!」
そんなやり取りを眺めながら俺は椅子へ座る。
ユシルは窓際で小さな鉢植えを見つめていた。
「大きくなれ~」
またやっている。
しかも本人は真剣だ。
フリートも横で眺めている。
「少し大きくなった気がします!」
「ほんと~?」
「ほんとです!」
楽しそうで何よりだ。
その様子を見ていた詩乃がぽつりと呟く。
「気のせい……」
「えぇ~」
ユシルがしょんぼりする。
だが数秒後にはもう笑っていた。
切り替えが早い。
そんな中。
生徒会室の扉が開いた。
ソレイナとアヤネだった。
どうやら特訓から戻ってきたらしい。
ソレイナの額には少し汗が浮かんでいる。
アヤネも珍しく息を整えていた。
修也が顔を上げる。
「おかえり」
「ただいま戻りました」
「戻りました」
二人は礼儀正しく頭を下げる。
フリートが駆け寄る。
「お疲れ様です!」
「ありがとうございます」
ソレイナが微笑んだ。
ユシルも近づく。
「がんばった~?」
「えぇ」
「はい」
短いやり取り。
だが仲の良さが伝わってくる。
俺は少し気になって尋ねた。
「どうだったんだ?」
ソレイナは胸へ手を当てる。
「順調です」
アヤネも頷く。
「主殿を守るためにも、より強くなる必要があります」
「そこまでしなくてもいいんだがな」
「いいえ」
即答だった。
しかも二人同時。
俺は思わず苦笑する。
するとフリートも真面目な顔になった。
「私も頑張ります!」
「私も~!」
ユシルも続く。
四人の擬神が並んでこちらを見る。
その姿に少しだけ気恥ずかしくなった。
「わかったわかった」
そう返すしかない。
咲夜はそんな様子を見ながら笑った。
「仲良しだね~」
「そう見えるか?」
「見える見える!」
凛も小さく頷く。
「そうね」
詩乃も視線を上げた。
「うん……」
修也は微笑みながら書類を閉じる。
「良いことだ」
その言葉に誰も反論しなかった。
しばらくして。
放課後を知らせるチャイムが校内へ響いた。
生徒たちの声が廊下から聞こえてくる。
一日の授業が終わったのだ。
生徒会室の空気も少しだけ緩む。
修也が大きく伸びをした。
「さて、今日の仕事はここまでだ」
「やったー!」
真っ先に反応したのは咲夜だった。
凛がため息をつく。
「本当に元気ね」
「終わったんだからいいじゃん!」
詩乃は静かにノートを閉じる。
ソレイナたちも片付けを始めた。
俺も椅子から立ち上がる。
いつもの日常。
いつもの放課後。
いつもの仲間たち。
少し前までなら想像もできなかった光景だった。
だが今ではそれが当たり前になっている。
ユシルが俺の袖を引っ張った。
「主様~帰る~?」
「あぁ」
フリートも笑顔になる。
「今日は夕飯なんでしょうね?」
「知らねぇよ」
「あはは」
ソレイナも穏やかに笑う。
アヤネは静かに頷いた。
生徒会室を後にする一同。
窓の外には夕暮れの空が広がっている。
穏やかな風。
平和な学園。
仲間たちの笑い声。
今日もまた。
何事もない一日が終わろうとしていた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




