第九十四話 生徒会の日々・前編
俺は神代レン。普通の高校生――だった。
だがスキル《神核生成》によって炎の擬神ソレイナを生み出し、俺の日常は大きく変わった。
その後、生徒会へ所属することになり、自然の擬神ユシル、操りの擬神アヤネ、そして海洋の擬神フリートを召喚した。
今日もまた、そんな仲間たちと共に過ごしている。
――『異能学園高等学校』生徒会室。
窓から差し込む昼の光が机の上を照らしている。
静かな室内に、紙をめくる音だけが響いていた。
生徒会長の天城修也が一枚の資料を見つめながら、ふむ、と小さく呟く。
「ふむ......やはり狙撃班が欲しいな......」
その言葉に最初に反応したのは朝比奈咲夜だった。
「ん?生徒会長、急にどうしたの?」
月影詩乃も顔を上げる。
「遠距離攻撃系異能なら、私で十分......」
だが修也は首を横に振った。
「いや、そうじゃなくて...」
そこでソレイナが静かに口を開く。
「アサシン型、でしょうか」
修也は小さく笑った。
「あぁ、その通りだ」
ユシルが首を傾げる。
「ふゆぅ~?アサシン型~?滅多にいないよ~?」
「ですね」
アヤネも同意する。
「確かに」
フリートも頷いた。
氷室凛は腕を組みながら問いかける。
「どうするの?」
その流れで全員の視線が俺に向いた。
嫌な予感しかしない。
「まさか、また俺に《神核生成》を使えって言うんじゃないよな」
すると修也は即答した。
「そうだね、それも良い」
「おい」
思わず机を叩きそうになる。
修也は楽しそうに笑った。
「ははは、本気じゃないさ」
「ほんとかよ」
俺が疑いの目を向けると、ソレイナが静かに説明する。
「ですが、《神核生成》はランダムです。そう簡単に来るとは......あ、」
言った瞬間。
部屋の空気が止まった。
修也がにっこり笑う。
「つまり、擬神のなかにアサシン型はいるんだね」
ソレイナの肩がぴくりと震えた。
アヤネが呆れたように見る。
「ソレイナ?」
「......すみません」
珍しく素直に謝っていた。
フリートが慌てて間に入る。
「まぁまぁ」
ユシルはのんびりと笑う。
「別にぃ~バレたところで~ランダムだから~」
「そうだな。それにあれ疲れるし......」
俺がそう言うと、修也も納得したように頷いた。
「......まぁ、《神核生成》は最終手段と言うことにしておこう」
「まぁ、その方が良いわね......彼、負担にもなるし」
凛の言葉に詩乃も静かに頷く。
「うん......」
しかし咲夜だけは不満そうだった。
「えぇ~もっと擬神ちゃん増えた方が楽しそうなのに~ブーブー!」
「仕方ないでしょう」
凛が即座に返す。
修也は苦笑した。
「ははは、」
そんなやり取りの最中。
アヤネが立ち上がった。
「ソレイナ、そろそろ行きますよ」
ソレイナは静かに頷く。
俺は二人を見る。
「ん?どこ行くんだ?」
「いつもの稽古......特訓です」
「はい、」
最近はこの二人だけで訓練することが増えていた。
特にアヤネは侵食岩力の応用を研究しているらしい。
ユシルが手を振る。
「がんばって~」
フリートも微笑む。
「お気をつけて」
「お前らは行かないのか?」
するとフリートが少し胸を張った。
「はい、主さん、全員で行ってしまうと、守れないので」
「そゆこと~」
ユシルも同意する。
「なるほどな......」
確かにその通りだった。
誰かが常に近くにいた方が安全だ。
ソレイナとアヤネは軽く会釈をして生徒会室を出て行った。
扉が閉まる。
しばし静寂。
俺は椅子にもたれながら天井を見上げた。
「それにしても、今日は平和だな」
凛が書類を書きながら答える。
「いつも平和で良いのよ......」
「だよね~」
咲夜も同意する。
詩乃も小さく呟いた。
「......うん............」
修也は立ち上がると、大量の書類を抱えた。
「......さぁ、俺たちは俺たちの仕事をやろう!今日の書類も山ほどあるぞ!」
その瞬間。
全員の顔が少しだけ曇る。
机の端には高く積み上がった紙の山。
生徒会の仕事。
異能者管理。
校内巡回報告。
予算申請。
設備修繕。
部活動関連。
見ただけで頭が痛くなる量だった。
「うわぁ......」
咲夜が露骨に嫌そうな声を出す。
「逃げない」
詩乃が即座に言った。
「ばれた?」
「ばれる」
凛も淡々と答える。
ユシルは書類を一枚持ち上げて眺める。
「むずかしい文字いっぱい~」
「ユシル、それは私がやります」
フリートが優しく受け取った。
「ありがと~」
そんな光景を見ながら、俺は小さく笑う。
少し前まで普通の高校生だった。
こんな場所で。
こんな仲間たちと。
こんな日々を送るなんて想像もしなかった。
だが不思議と悪くない。
窓の外では風が吹いている。
校庭からは運動部の声。
遠くでは授業のチャイム。
平和な学園の日常。
その中心にいる俺たち。
今日もまた。
変わらない一日が始まろうとしていた。
そして誰も気づいていなかった。
生徒会室の窓の外。
遥か遠く。
校舎の屋上に立つ一つの影を。
風に揺れる黒いコート。
その人物は静かに生徒会室を見つめていた。
まるで何かを確かめるように。
そして。
ゆっくりと姿を消した。
平和な日常の裏側で。
何かが静かに動き始めていた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




