第五十一話 「文化祭の影」
俺は神代レン。普通の高校生――だったが、スキル《神核生成》で炎の擬神ソレイナが現れ、自然の擬神ユシル、操りの擬神アヤネも加わり、生徒会に入ることになった。
そして現在、『異能学園高等学校』文化祭。
表向きは平和なお祭り騒ぎ。
だが、その裏では不穏な影が動き始めていた。
「……屋上のやつ、結局誰だったんだ」
校舎の廊下を歩きながら俺は呟く。
「敵意はありました」
ソレイナが即答した。
「ですが、攻撃意思までは確認できませんでした」
「偵察……って感じか」
「その可能性が高いです」
アヤネも静かに頷く。
ユシルはふよふよ浮きながらジュースを飲んでいた。
「でも〜〜変な感じしたよ〜」
「変な感じ?」
「ん〜〜……空気がザワザワしてる感じ〜?」
「説明ふわっとしてんな……」
「ふゆ〜〜」
その時。
「レンーー!」
また聞き慣れた声。
朝比奈咲夜が廊下を駆けてきた。
「お、どうした?」
「模擬戦ステージ始まるよ!」
「模擬戦?」
「うん!文化祭恒例!」
咲夜は楽しそうに笑う。
「能力を使った公開模擬戦!結構人気なんだよ?」
「へぇ……」
「生徒会メンバーも出るから、修也先輩がレンも来いって!」
「俺も?」
「観戦だけでもって!」
中庭特設ステージ。
そこには既に大量の観客が集まっていた。
「すご……」
思わず声が漏れる。
巨大な結界装置。
能力制御用フィールド。
完全にプロの競技場みたいだった。
「学園長の趣味らしいよ」
咲夜が苦笑する。
「文化祭に全力出しすぎだろ……」
ステージ中央。
そこへ修也が歩み出た。
「本日は異能学園高等学校文化祭へようこそ」
歓声が上がる。
「これより生徒会による模擬戦演習を開始する」
「おぉぉぉぉーーー!!」
かなり盛り上がっていた。
「最初は――氷室凛」
凛が静かにステージへ上がる。
対戦相手は三年生らしき男子。
「始め!」
次の瞬間。
――ゴォォォォッ!!
凛を中心に冷気が爆発した。
観客席から歓声。
「《氷結領域》」
空気が一瞬で白く染まる。
男子生徒が炎系能力で迎え撃つが――。
パキィィィィン!!
炎ごと凍結。
「うそだろ!?」
「すげぇぇ!」
男子生徒は慌てて距離を取る。
だが。
凛が静かに右手を掲げた。
「《氷華絶界》」
無数の氷花が展開。
次の瞬間、男子生徒の周囲を完全封鎖した。
「……参った」
勝負あり。
観客席から拍手が響く。
「相変わらずすごいな……」
「凛さん、強い〜〜」
ユシルものんびり拍手していた。
ソレイナはじっと観察している。
「冷気制御精度が高いですね」
「わかるのか?」
「はい」
アヤネも頷く。
「無駄が少ないです」
続いて咲夜の試合。
「行っくよーー!!」
《雷装展開》!!
雷が身体へ纏われる。
観客がさらに沸いた。
「速っ!?」
対戦相手の背後へ一瞬で移動。
《閃雷駆》!!
雷光が走る。
相手はギリギリ防御したが、そのまま吹き飛ばされた。
「うぉぉぉぉ!!」
「朝比奈先輩かっけぇ!!」
咲夜はかなり人気があるらしい。
「……平和、だな」
レンは小さく呟く。
こんな風に騒いで。
笑って。
普通に文化祭を楽しめている。
少し前までなら考えられなかった。
だが。
その時だった。
――ピシッ。
「……っ?」
ソレイナが顔を上げる。
「主様」
「どうした?」
「結界に異常」
アヤネも即座に反応。
「上空方向から干渉確認」
「え?」
次の瞬間。
バチィィィィィッ!!!
巨大な火花が空中で弾けた。
観客がざわつく。
「な、なんだ!?」
「結界装置が……!」
ステージ上空の防御結界に、“黒い亀裂”が走っていた。
「っ……!」
修也の顔色が変わる。
「全員下がれ!!」
その叫びと同時。
――ドォォォォォン!!!
結界が、砕け散った。
悲鳴。
混乱。
空から黒い霧のようなものが降り注ぐ。
「これは……!」
詩乃が目を見開く。
「異能暴走因子……!?」
黒霧が地面へ触れた瞬間。
数人の一般生徒の身体から異常な魔力反応が噴き上がった。
「ぐぁぁぁぁぁっ!!」
「な、なんだこれ!?」
「身体が……熱い!!」
観客席がパニックになる。
「トランセンド・ラボ……!」
レンが歯を食いしばる。
すると。
崩れた結界の向こう。
校舎屋上に――再びあの黒コートの人物が立っていた。
そして。
ゆっくりと笑った。
「文化祭は楽しんでいただけたかな?」
不気味な声が、校内全域へ響き渡った。
ここまで読んでくれてありがとうございます
次回もお楽しみに




