第五十話 「異能学園高等学校文化祭」
俺は神代レン。普通の高校生――だったが、スキル《神核生成》で炎の擬神ソレイナが現れ、自然の擬神ユシル、操りの擬神アヤネも加わり、生徒会に入ることになった。
そして――文化祭当日。
朝から『異能学園高等学校』は異様な熱気に包まれていた。
「人、多すぎだろ……」
校門前に立った瞬間、思わず呟く。
保護者、近隣住民、他校生徒。
さらに能力者育成校という珍しさから、毎年かなりの来場者が来るらしい。
「活気がありますね」
ソレイナは周囲を警戒しながら歩く。
「お祭りだね〜〜」
ユシルは完全に楽しそうだ。
「警備難易度、上昇」
アヤネは冷静に状況分析している。
「お前ら反応バラバラだな……」
校舎へ入ると、さらに騒がしかった。
「いらっしゃいませー!」
「焼きそばどうですかー!」
「こちらお化け屋敷です!」
廊下には飾り付けが並び、いつもの学校とはまるで別世界。
「主様」
「ん?」
「視線が集まっています」
「……だろうな」
擬神三人を連れて歩けば嫌でも目立つ。
特にソレイナは赤髪に巨大な剣。
ユシルはふわふわ浮いている。
アヤネは小柄な褐色幼女でフード姿。
目立たない方がおかしい。
「レンーー!」
遠くから大きな声。
朝比奈咲夜がこちらへ走ってきた。
「お、咲夜」
「おはよー!文化祭だよ文化祭!」
「テンション高いな……」
「当たり前じゃん!」
咲夜は満面の笑みだった。
今日は制服ではなく、クラス出店用らしい和風衣装を着ている。
「似合ってるな」
「え、ほんと!?」
「お、おう」
「へへー♪」
嬉しそうに笑う咲夜。
その横でソレイナが静かに呟く。
「主様、距離が近いです」
「え?」
「警戒対象です」
「いや咲夜だぞ?」
「ですが近いです」
「ソレイナちゃん嫉妬?」
「違います」
即答だった。
「そうだ、修也たちが生徒会室で待ってるよ!」
「あぁ、警備の件か」
「たぶん!」
――生徒会室。
中へ入ると、すでにメンバーが集まっていた。
天城修也、氷室凛、月影詩乃。
全員、今日は腕章をつけている。
「来たね」
修也が軽く手を振る。
「そっちは異常なし?」
「今のところはな」
「こちらも問題ありません」
凛が答える。
「ただ、人が多いわ」
「能力者も一般人も混ざってるから、何かあった時が怖い」
「……だな」
詩乃は窓の外をじっと見ていた。
「詩乃?」
「……まだいる」
「何がだ?」
「昨日の気配」
空気が少しだけ張り詰める。
「敵意は感じない」
「でも、見られてる感じがする」
「監視か……」
修也が腕を組む。
「まぁ、文化祭を狙うなら今日が最適だろうね」
「一般人も多いし混乱しやすい」
凛も真剣な顔だ。
「主様」
ソレイナが一歩前へ出る。
「本日は私が常時警戒します」
「私も索敵範囲を広げます」
アヤネも続く。
「私は〜……寝ないようにがんばる〜」
「そこは頑張れよ」
「ふゆ……」
緊張感が少しだけ緩む。
その後、生徒会は校内巡回を始めた。
中庭。
ステージ発表の準備が進んでいる。
能力を使ったパフォーマンスもあるらしく、かなり派手だ。
「異能学校って感じだな」
「普通の学校ではありませんから」
ソレイナが頷く。
「お〜〜」
ユシルはステージ装飾を眺めていた。
「花いっぱい〜」
「自然系だから好きそうだな」
「好き〜〜」
その時。
アヤネが立ち止まった。
「……主様」
「どうした?」
「地面が妙です」
「地面?」
アヤネはしゃがみ込み、石畳へ触れる。
「何かが“通った”痕跡があります」
「敵か?」
「断定はできません」
「ですが、通常ではありません」
ソレイナも剣へ手をかける。
「警戒を強めます」
その瞬間だった。
――ゾワッ。
背筋を冷たい感覚が走る。
レンは反射的に振り向いた。
校舎屋上。
そこに、黒いコート姿の人物が立っていた。
顔は見えない。
だが確実に、こちらを見ている。
「っ……!」
レンが目を見開く。
次の瞬間。
黒い影は、煙のように消えた。
「消えた……?」
「転移系統かもしれません」
アヤネの声が低くなる。
ユシルも珍しく真面目な顔をしていた。
「やだなぁ〜……」
「主様」
ソレイナが静かに炎を灯す。
「どうやら、本当に“始まる”ようです」
文化祭の喧騒。
笑い声。
音楽。
その裏側で――
確実に“敵”が動き始めていた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




