第四十七話 「小さな依頼と放課後の寄り道」
俺は神代レン。普通の高校生――だったが、スキル《神核生成》で炎の擬神ソレイナが現れ、自然の擬神ユシル、操りの擬神アヤネも加わり、生徒会に入ることになった。
――放課後。
「主様、本日の予定は確認済みです」
「また勝手に確認してる……」
「情報管理は重要です」
アヤネの即答にため息が出る。
「今日は生徒会ないよな?」
「はい、ありません」
「じゃあ久しぶりに自由か」
「自由〜〜〜!」
ユシルがふわふわと回る。
「気が緩みすぎです」
ソレイナがすぐにたしなめる。
「まぁいいだろ、たまには」
そう言いながら教室を出た。
校門を出たところで、ふと声がかかる。
「お、神代じゃん」
振り返るとクラスメイト数人。
「ちょっと頼みたいことあるんだけどさ」
「俺に?」
「文化祭の準備手伝ってくれね?」
「文化祭……」
そういえばそんな時期か。
「人手足りなくてさ」
「まぁ、軽くならいいけど」
「助かる!」
――商店街。
買い出し係として呼ばれたらしい。
「紙とか装飾用のやつだな」
「種類が多いな」
「こういうのは計画的に選ぶ必要があります」
アヤネが真面目にメモを取る。
「ユシル、そっち見てくれ」
「は〜い〜」
「ソレイナは周囲警戒な」
「了解です」
完全に護衛体制になっているのが少しおかしい。
買い物を終え、店を出たときだった。
「……ん?」
ソレイナの視線が鋭くなる。
「主様、微弱な異常反応があります」
「異常?」
「異能の残滓のようなものです」
「この辺にか?」
アヤネも周囲を見渡す。
「数値は低いですが、通常ではありません」
「ユシル、分かるか?」
「ん〜……ちょっとだけ、違和感あるかも〜」
商店街の裏通り。
人通りの少ない場所へ向かう。
「こっちか……」
角を曲がると――
一瞬だけ空気が重くなった。
「これだな」
ソレイナが低く呟く。
地面に黒く焦げたような痕跡。
「異能暴走の残り……か?」
「可能性が高いです」
アヤネがしゃがみ、触れる。
「まだ微弱に反応しています」
「最近のやつか」
「はい」
ユシルが周囲を見て小さく震える。
「なんか……嫌な感じする〜」
「主様、離れたほうが安全です」
「だな」
そのときだった。
「おい」
背後から声。
振り返ると、見知らぬ男。
フードを被り、表情が見えない。
「それに触るな」
「誰だ?」
ソレイナが一歩前に出る。
「主様、下がってください」
「……」
男は笑ったように息を漏らした。
「ただの通りすがりだ」
「だがそれは“研究材料”だ」
「研究?」
アヤネの声が冷える。
「何の話だ」
「異能の残滓は貴重だ」
「特に暴走した個体のものはな」
空気が一気に張り詰める。
「主様」
ソレイナの炎がわずかに揺らぐ。
「敵性反応です」
「だろうな」
男は後ろへ下がる。
「覚えておけ」
「この街はもう“観察対象”だ」
「いずれ本格的に動く」
そして――消えた。
静寂。
「……何だったんだ」
「不明です」
「でも、確実に危険です」
アヤネが断言する。
ユシルも小さく頷く。
「気をつけないとね〜」
ソレイナは静かに炎を収めた。
「主様の周囲は、確実に狙われています」
「だろうな」
レンは黒い痕跡を見つめる。
日常の中に混じる異物。
少しずつ、それは広がっている。
「……文化祭どころじゃなくなるかもな」
小さく呟いたその声は、夕方の街に消えていった。
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