第四十三話 「日常の隙間と静かな決意」
俺は神代レン。
普通の高校生――だったが。
スキル《神核生成》で炎の擬神ソレイナが現れ、自然の擬神ユシル、操りの擬神アヤネも加わり、そして生徒会に入ることになった。
――ショッピングモール。
休日ということもあり、人でごった返している。
「主様」
「どうした?」
ソレイナが周囲を見渡しながら言う。
「どうして買い物を?」
「あぁ、母さんに頼まれてな」
「生活用品の補充だ」
「なるほどです。何を買うのです?」
アヤネがメモを覗き込む。
「洗剤とか、ティッシュとか……そんな感じだな」
「いろいろそろってるみたいだね〜〜」
ユシルが楽しそうにあたりを見回す。
「はい。それに……人がたくさんいます」
ソレイナの声は、少しだけ硬い。
「なにか問題が?」
「いえ……」
一拍置いて。
「人が多いと、敵の気配を感じ取りにくいので」
「……なるほど」
レンは周囲を見る。
確かに、これだけ人がいれば紛れ込まれても分からない。
「感じ取れたとしても、数距離です」
アヤネが続ける。
「それでは守ることが難しいかもしれません」
「どうしてだ?」
「敵が素早い場合、間に合いません」
「……たしかにな」
レンは小さく息を吐く。
「俺もなにか力が使えたらな」
ぽつりと漏れた本音。
「主様が力を使えなくても、我らがいますので」
ソレイナが迷いなく言う。
「そ〜だよ〜、にへへ〜〜」
ユシルが笑う。
「……あぁ、ありがとな」
少しだけ肩の力が抜ける。
その時だった。
「ん〜?」
ユシルが首を傾げる。
「どうしました?」
「あれ〜」
指差した先。
「……あれは、生徒会長」
アヤネがすぐに反応する。
「ほんとだ、お〜い!」
レンが手を振る。
「ん?あぁ、君たちか」
天城修也が気づいて近づいてくる。
「パトロールですか?」
「いや、ただの買い物だよ」
「そっちは?」
「こちらも同じです」
「そうか」
修也は軽く笑う。
「ここは人も多いしね。パトロールは先生の役目さ」
「なるほど」
ソレイナが納得したように頷く。
「なぁ」
レンが少しだけ真剣な顔で言う。
「なにかな?」
「俺も強くなりたいんだ」
「なにか方法はないか?」
修也は少し考えてから答えた。
「う〜ん、そうだね」
「護身術なんてどうだい?」
「護身術?」
「あぁ。俺も使えるよ」
「小さい頃に教えられてね」
「そうなのか、お前の家って」
「あぁ、まあ……お金持ちでね」
軽く肩をすくめる。
「襲われないように叩き込まれたんだ」
「なるほど、大事ですね」
ソレイナが真面目に頷く。
「そ〜だね〜」
「賢明です。主様も覚えてみては?」
アヤネの提案に、レンは少し考えた後――
「……そうだな」
「教えてもらえるか?」
「もちろんさ」
修也はすぐに頷く。
「今度、家においでよ」
「助かる」
「それじゃあ、俺はあっちの店に行くから」
「おう!」
手を振り合い、別れる。
買い物を終えた後。
「これで全部か?」
「はい、問題ありません」
「じゃあ帰る〜?」
「あぁ、帰るか」
――神代家。
「ただいま〜」
「母さん、買ってきたぞ」
「あら、おかえり」
母が柔らかく微笑む。
「ありがとね」
「ソレイナちゃん達も、護衛ありがと」
「いえ、任務ですので」
「すること〜なかったよ〜」
「本来は平和が一番です」
三者三様の返答に、母はくすりと笑う。
「そうね」
「ご飯、もうすぐできるから手を洗ってらっしゃい」
「あぁ」
「洗う〜」
「はい」
「失礼します」
三人が洗面所へ向かう。
その背中を見ながら――
母はぽつりと呟いた。
「……ふふっ」
「家も、にぎやかになってきたわね」
その言葉に、どこか温かいものが宿っていた。
だがその裏で。
静かに、確実に。
“嵐”は近づいていた。
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次回もお楽しみに




