第四十四話 「静かな休日と小さな一歩」
俺は神代レン。
普通の高校生――だったが。
スキル《神核生成》で炎の擬神ソレイナが現れ、自然の擬神ユシル、操りの擬神アヤネも加わり、そして生徒会に入ることになった。
――休日。
目を覚ますと、見慣れた天井。
だが、そのすぐ横から聞こえてくるのは、見慣れない声。
「主様、起床時間を過ぎています」
「……まだ休日だろ」
布団をかぶりながら返す。
「ですが、規則正しい生活は重要です」
「アヤネ……お前まで……」
「規律は大事です」
淡々とした声。
「主〜、起きよ〜〜」
ユシルの間延びした声が加わる。
「朝ごはん〜あるよ〜〜」
「……それは魅力的だな」
ゆっくりと体を起こす。
「仕方ない、起きるか……」
「良い判断です、主様」
リビングに降りると、母が朝食を用意していた。
「おはよう、レン」
「おはよ」
「ソレイナちゃん達も、おはよう」
「おはようございます」
「はよ〜」
「おはようございます」
三者三様の挨拶に、母は嬉しそうに笑う。
「今日は出かけるの?」
「あぁ、ちょっとな」
「天城の家に行く約束してる」
「あら、あのしっかりした子?」
「そうそう」
「護身術を教えてくれるって」
「いいじゃない」
母は満足そうに頷いた。
「ちゃんとお礼言うのよ?」
「分かってるって」
朝食を終え、準備を整える。
「行ってきます」
「いってらっしゃい」
――天城邸。
正直、予想はしていた。
していたが――
「でかいな……」
思わず呟く。
門構えからして、一般家庭とは明らかに違う。
「主様、警戒しますか?」
「いや、必要ないだろ……たぶん」
インターホンを押す。
少しして、門が自動で開いた。
「ようこそ」
出迎えたのは天城修也本人だった。
「お、来たね」
「おう、来た」
「三人も一緒か」
「当然です」
「護衛だからね〜」
「任務です」
「……頼もしいな」
苦笑しながら中へ案内される。
庭は広く、整備されている。
まるで映画に出てくるような屋敷だ。
「じゃあ、早速始めようか」
中庭の一角に案内される。
「ここなら動きやすい」
「で、何からやるんだ?」
「基本だね」
修也は軽く構えを取る。
「護身術は、相手を倒すためのものじゃない」
「自分を守るためのものだ」
「……なるほど」
「まずは姿勢」
足の位置、重心、視線。
一つ一つ丁寧に教えられる。
「もっと力を抜いて」
「こうか?」
「そう、それでいい」
何度も繰り返す。
単純な動きだが、思った以上に難しい。
「次は受け流し」
修也が軽く手を伸ばす。
それを払う。
「違う、力で止めるんじゃない」
「流すんだ」
「流す……」
再びやる。
今度は少しだけうまくいった。
「いいね、その感覚だ」
その様子を、三人は少し離れた場所から見ていた。
「主様……ぎこちないですね」
ソレイナがぽつりと呟く。
「でも〜、がんばってるよ〜」
ユシルは楽しそうだ。
「成長の兆しはあります」
アヤネは冷静に分析する。
訓練はしばらく続いた。
「……はぁ、疲れた」
芝生に座り込む。
「初日ならこんなものさ」
修也が水を差し出す。
「サンキュ」
一気に飲み干す。
「でも、どうだ?」
「少しは変わった気がする」
「それなら上出来だよ」
修也は軽く笑う。
「継続が大事だからね」
「毎日少しでもいい、続けること」
「……あぁ」
しばらく休憩した後。
「今日はこのくらいにしようか」
「助かった」
立ち上がる。
「またいつでも来ていいから」
「ほんとか?」
「もちろん」
「じゃあ遠慮なく」
帰り道。
夕日が沈みかけている。
「主様」
ソレイナが静かに言う。
「今日の訓練……有意義でした」
「そうか?」
「はい。主様自身の防御力向上に繋がります」
「そ〜だね〜、ちょっと強くなった気がする〜」
「数値的にも微増を確認」
「そこまで分かるのかよ……」
苦笑する。
でも、悪い気はしない。
「……俺も、ちゃんと強くならないとな」
ぽつりと呟く。
守られるだけじゃなく。
少しでも、並べるように。
「主様」
ソレイナが真っ直ぐこちらを見る。
「貴方様は既に十分――」
言いかけて、少しだけ言葉を止める。
「……いえ」
「共に強くなりましょう」
その言葉に、自然と笑みがこぼれた。
「あぁ」
「一緒にな」
夕焼けの中。
小さな一歩が、確かに刻まれた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




