第四十二話 「揺れる水面と未覚醒の核」
俺は神代レン。
普通の高校生――だったが。
スキル《神核生成》で炎の擬神ソレイナが現れ、自然の擬神ユシル、操りの擬神アヤネも加わり、そして生徒会に入ることになった。
――地下での一件は、ひとまず終わった。
後処理は『異能学園高等学校』と警察に任せ、俺たちは帰路についていた。
夕暮れの空。
オレンジ色に染まる街並み。
けれど、その穏やかな景色とは裏腹に、胸の奥にはまだ戦いの余韻が残っている。
「……やっぱりすごいね」
隣を歩く咲夜が、ぽつりと呟いた。
「何がだよ」
「う〜ん……なんとなく?」
曖昧な答えに、思わず苦笑する。
「そういやぁ、お前、最初の時と変わったな」
「そうだね」
咲夜は少しだけ遠くを見るようにして言った。
「あの時は危険因子として見てたけど……」
「今は友達って感じだし」
「そうか?」
「うん!」
迷いのない笑顔。
その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた気がした。
「主〜〜」
間延びした声。
「なんだ?」
「今後は〜〜警戒したほうが〜良いと思う〜」
ユシルがふわふわと浮きながら言う。
「はい、ユシルの言う通りです」
アヤネも静かに続く。
「あぁ、そうだな」
「いつあいつらが来るか……分からないしな」
あの“調査員”。
そして、その背後にいる“上層”。
明らかに、まだ終わっていない。
「問題ありません」
ソレイナが迷いなく言い切る。
「歯向かうもの全てを灰にすれば良いのです」
「いや物騒だな!?」
思わずツッコむ。
咲夜が苦笑しながら肩をすくめた。
「灰にするかはおいておいて」
「それに私たちもいるし」
「少しくらい頼っても良いんだよ?」
「……あぁ、そうだな」
素直に頷く。
一人じゃない。
それは、思っていた以上に心強いものだった。
「それじゃあ、私はあっちだから、またね〜!」
「おう、またな」
ソレイナとアヤネが静かに頭を下げ、ユシルが大きく手を振る。
咲夜はそれに応えるように笑って、去っていった。
その背中が見えなくなった頃。
ソレイナが、ふと口を開く。
「アヤネ、ユシル。このままではいけません」
「はい」
「主様には一刻も早く、我々を全て召喚してもらわねば」
「そ〜だね〜……でも〜」
ユシルはふわりと空を見上げる。
「そこは〜主様に〜任せよ〜〜」
「……はい」
短く頷くアヤネ。
「ん?なに話してるんだ?」
レンが振り返る。
「いえ」
ソレイナがすぐに答える。
「“我ら”で貴方様を守ると話していたのです」
「そ、そうか……」
少し照れくさいような気持ちになる。
「あぁ、頼んだぞ」
「はい!」
「は〜い」
「了解」
三人の声が重なる。
――その頃。
現実とは異なる、静かな空間。
空もなく、地もなく、ただ無限に広がる“水面”。
揺らめく水鏡の中心には、ひとりの少年が映っている。
――神代レン。
その周囲に、いくつもの“影”。
「主さん、厄介そうなのに目をつけられましたね」
海色のレースの少女が、少し心配そうに言う。
「……」
紫フードの少女は、黙ったまま水面を見つめている。
「そうねぇ、アレは厄介よねぇ」
黄土色のフードの少女が、のんびりとした口調で言う。
「ん、お姉ちゃんなら大丈夫」
黄色いフードの少女が、隣を見上げる。
「あら〜、そう?」
優しく微笑む。
「ふふっ……」
氷のようなフードの少女が、静かに笑う。
「主様と“共に並ぶ”日が楽しみです」
その言葉に、空気がわずかに変わる。
そして――
紫フードの少女が、ぽつりと呟いた。
「主様は……気づいてないようですね」
「神核生成の、“もう一つの力”に」
「え?」
海色の少女が目を丸くする。
「それってなんですか?」
氷のフードの少女は、くすりと笑う。
「ふふっ……」
「きっと後にわかりますよ」
「我々“十人”全てが揃う時に」
水面が、わずかに揺れる。
その奥。
木陰に潜む影。
岩陰に佇む影。
まだ現れていない存在たちが、静かに“その時”を待っていた。
そして――
神代レン自身も知らない。
《神核生成》に隠された、もう一つの“真実”を。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




