第三十四話 「侵食する大地、帰る場所」
俺は神代レン。
普通の高校生――だったが。
スキル《神核生成》で炎の擬神ソレイナが現れ、
自然の擬神ユシル、操りの擬神アヤネも加わり、
そして生徒会に入ることになった。
「……止めろ。完全に」
俺の言葉に、アヤネは小さく頷いた。
「了解しました」
その瞬間――
ゴゴゴゴゴゴゴ……!!
大地が唸りを上げる。
校庭の地面が波打ち、隆起し、まるで“生き物”のように動き出した。
「な、なんだこれは……!」
大男が初めて明確な動揺を見せる。
「――侵食開始」
アヤネの声は、どこまでも静かだった。
ズズズズズ……!
大男の足元から、岩が絡みつく。
「ぐっ!?離れろ!!」
力任せに振り払おうとするが――
バキィッ!!
「なっ……!?」
砕いたはずの岩が、即座に再生し、さらに絡みつく。
「無駄です」
アヤネが一歩踏み出す。
「これは“ただの岩”ではありません」
「私の制御下にある“領域”です」
ドォン!!
地面が跳ね上がり、巨大な岩柱が大男の身体を包み込む。
「ぐぉぉぉぉぉ!!」
叫び声。
だが――
「密度、増加」
岩がさらに圧縮される。
「構造、固定」
ギチギチと音を立てながら、完全に拘束される。
「やめろ……やめろォォォ!!」
「侵食、完了」
その一言で――
静寂が訪れた。
そこにあったのは。
ただの“巨大な岩塊”。
動く気配は、もうない。
「……終わった、のか?」
レンが息を吐く。
「はい」
アヤネが振り返る。
「対象の行動は完全に停止しました」
「……すご」
咲夜がぽつりと漏らす。
「完全封殺ね」
凛が腕を組む。
「……制御能力、高い」
月影はすでに何ページも書き込んでいた。
「やっぱりすごいね〜アヤネ〜」
ユシルがふわふわと近づく。
「……当然です」
アヤネは淡々と答えた。
ソレイナは静かにレンの隣に立つ。
「主様、ご無事で何よりです」
「ああ……みんなもな」
レンは少しだけ笑った。
だが、その視線は岩塊に向いている。
「……これ、どうすんだ?」
「回収班に任せましょう」
天城が冷静に言う。
「今回の件、間違いなく大きな動きの前触れだ」
「……だろうな」
レンは頷く。
トランセンド・ラボ。
ただの小競り合いじゃない。
「……でも」
レンは空を見上げる。
「とりあえず今日は、終わりか」
◇◇◇
「ただいまー……」
家の扉を開ける。
「あらおかえり〜」
母のいつもの声。
「今日はどうだったの〜?」
「まぁ……ちょっと大変だった」
「また女の子増えてない?」
「増えてるけどそこじゃない」
「アヤネです。よろしくお願いします」
「まぁ〜かわいい子ね〜!」
いつもの流れだった。
「主様、お疲れ様です」
「ん〜……おつかれ〜……」
ソレイナとユシルも自然に家に入ってくる。
アヤネは少しだけ周囲を見回し――
「……ここが、主様の拠点」
「拠点って言うな」
レンは苦笑する。
戦いはあった。
危険もあった。
けど――
こうして帰ってこれる場所がある。
「……はぁ」
ベッドに倒れ込む。
「疲れた……」
「主様、休息も重要です」
「……分かってるよ」
目を閉じる。
だが――
頭の片隅には、あの組織のことが残っていた。
(まだ終わってない)
それでも今は――
少しだけ、この平穏に身を預けた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




