第三十五話 「地のささやきと、ゆるやかな午後」
俺は神代レン。
普通の高校生――だったが。
スキル《神核生成》で炎の擬神ソレイナが現れ、
自然の擬神ユシル、操りの擬神アヤネも加わり、
そして生徒会に入ることになった。
――神代家・庭。
「アヤネ?なにしてるんだ?」
庭に出ると、小さな背中がしゃがみ込んでいた。
「……あ、主様」
振り返るアヤネ。
「このあたりの土地に聞いてみたんです。怪しい人がいないか」
「そんなこともできるんだな」
「はい」
アヤネは手を地面に添えたまま、静かに続ける。
「土壌、基盤、岩盤……それぞれに“記録”があります」
「足音、振動、重さ……通過したものの痕跡が残るので」
「それを拾って、再構築します」
「……すげぇな」
もはや探偵どころの話じゃない。
「結果は?」
「現時点では、異常なしです」
「そっか」
レンは少しだけ安心して、空を見上げた。
「……でも」
アヤネが小さく言う。
「“遠く”で、似た痕跡が増えています」
「……やっぱりか」
レンはため息をついた。
トランセンド・ラボ。
まだ動いている。
「……まぁ、今はいいか」
レンは軽く肩を回す。
「せっかくの休みだしな」
「……休息、ですか」
「そういうこと」
その時。
「主〜〜〜」
「お前はどこから出てくるんだよ」
ユシルが庭の木の上から逆さにぶら下がっていた。
「ひまだった〜〜〜」
「さっきまで寝てただろ」
「ねた〜〜〜」
「知ってる」
ふよっと降りてくるユシル。
「アヤネ〜〜〜なにしてたの〜?」
「周辺調査です」
「えらい〜〜〜」
ぽん、と頭を撫でるユシル。
「……」
アヤネは少しだけ固まった。
「……?」
「どうした?」
「……いえ」
ほんの少しだけ。
ほんの少しだけ、表情が緩んだ気がした。
その時。
「主様」
ソレイナが家の中から出てくる。
「お茶を用意しました」
「お、サンキュー」
庭のテーブルに、湯気の立つカップが並ぶ。
「なんか……普通だな」
レンは苦笑する。
「良いことです」
ソレイナは真面目に答える。
「戦いばかりでは、心が摩耗します」
「……それもそうか」
ユシルはすでに椅子に寝転がっていた。
「ふにゃ〜……」
「お前は緊張感持て」
「ない〜〜〜」
「だろうな」
アヤネは静かにカップを手に取る。
「……これは?」
「お茶だよ」
「飲食は不要では?」
「まぁそうだけど、雰囲気だよ雰囲気」
「……なるほど」
少しだけ口をつける。
「……」
「どうだ?」
「……温かいです」
「それお茶の感想じゃないだろ」
わずかな笑いが生まれる。
静かな午後。
風が吹き、木が揺れ、光が差し込む。
「……こういうのも、悪くないな」
レンは小さく呟いた。
だが――
その足元。
大地の奥底では、微かな“振動”が続いていた。
まだ誰も気づかない。
新たな異変の、予兆が。
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次回もお楽しみに




