第二十一話「嵐の前の、少しだけ平穏な日」
俺は神代レン。
普通の高校生――だったが。
スキル《神核生成》で炎の擬神ソレイナが現れ、
自然の擬神ユシルも加わり、
気づけば生徒会に所属している。
――そして、いろいろあった翌日。
「……ふぁぁ……」
教室の机に突っ伏しながら、思わずあくびが出る。
「おいレン、昨日何したんだよ」
クラスメイトが呆れたように声をかけてくる。
「ちょっと色々あってな……」
曖昧に笑ってごまかす。
“異能暴走”を止めて、擬神と夕食して、生徒会に呼ばれて――なんて言えるわけがない。
「また変なことに巻き込まれてんじゃねーの?」
「巻き込まれてるというか……巻き込んでるというか……」
自分で言っててよく分からなくなる。
その時。
「レン〜〜〜」
窓の外から、ふわりと声が聞こえた。
「……おい」
振り向くと、そこには当然のように浮かんでいるユシル。
「授業中だぞ!?」
「おさんぽ〜……してたらここにきた〜……」
「してたらって距離感どうなってんだよ!」
教室が一瞬ざわつく。
「なにあれ……」
「またあの子増えてない?」
「妖精?」
「いや浮いてるし……」
好き勝手言われている。
「主〜」
ユシルは教室の窓からひょいっと中を覗き込む。
「おべんきょ〜してる〜?」
「してるよ今!」
「えら〜い……」
ふわっと拍手。
いや、褒め方が雑すぎる。
「……お前ほんと自由だな」
「自然だから〜……」
「万能理由やめろ」
そんなやり取りをしていると――
「神代」
後ろから声がかかる。
振り返ると、そこには生徒会メンバーの連絡役が立っていた。
「放課後、生徒会室集合だ」
「またかよ……」
「今回は“軽い確認”だけだそうだ」
「その“軽い”が信用できねぇんだよなぁ……」
隣ではユシルがのんびり揺れている。
「いくの〜?」
「ああ、行く」
「ふ〜ん……」
そしてその時。
教室の空気が、なぜか一瞬だけ静かになる。
ユシルが、ほんの少しだけ真面目な声で呟いた。
「……なんか、また来るね〜」
「またって何がだよ」
だがその言葉は、冗談には聞こえなかった。
◇◇◇
放課後。
生徒会室。
「で、軽い確認ってなんだ?」
レンが椅子に座ると、天城修也が資料を一枚机に置いた。
「最近の異能暴走の発生頻度が上がっている」
「またかよ……」
レンは思わず顔をしかめる。
「しかも、共通点が見えてきた」
氷室凛が続ける。
「発生場所が、学園周辺に集中している」
「……狙われてるってことか?」
「可能性は高いわね」
その時。
「主様」
ソレイナが静かに声を上げる。
「ユシルが感じていた“ざわつき”と関係があるかもしれません」
「やっぱり……」
窓の外を見る。
まだ何も起きていないはずの空。
だが、どこか遠くで――
確かに、何かが動いている気がした。
「まぁでもさ」
朝比奈咲夜が軽く伸びをする。
「今はまだ平和ってことでしょ?」
「そうだな」
レンは苦笑する。
「嵐の前の静けさってやつだ」
その言葉に、ユシルの声がどこかで重なった気がした。
「……また来るね〜」
日常は続いている。
だがその裏で。
確実に、次の“非日常”は近づいていた――。
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