第十八話「暴走する力」
曇天の空の下。
神代レンたちは、ユシルの示した方向へと急いでいた。
校門を抜け、住宅街を越え、人通りの少ない区域へと足を進める。
周囲の空気は、徐々に重く、張り詰めたものへと変わっていった。
「……なんか、息苦しくないか?」
レンが眉をひそめる。
氷室凛も周囲を見回しながら頷いた。
「ええ……普通じゃないわね」
ソレイナは静かに言う。
「空気中のエネルギーが乱れています……これは……」
その言葉の途中で――。
ユシルが、ぴたりと動きを止めた。
「……ここ……」
その声は、いつもよりはっきりしていた。
視線の先。
そこは――使われていない古びた倉庫だった。
壁はひび割れ、窓は割れ、まるで長い間放置されていたかのような場所。
だが――。
「……いるな」
レンの背中に、ぞわりとした感覚が走る。
次の瞬間。
――ドンッ!!
倉庫の中から、鈍い衝撃音が響いた。
「っ!?」
咲夜が思わず声を上げる。
詩乃は一歩下がり、警戒の姿勢をとる。
「来るぞ……!」
修也の声。
そして――。
バキィィンッ!!
倉庫の壁が内側から破壊され、何かが飛び出してきた。
それは――“人”のようでいて、人ではなかった。
全身が黒い靄のようなもので覆われ、ところどころが歪に膨張している。
瞳は赤く光り、理性の欠片も感じられない。
「……なんだよ、あれ……」
レンが思わず呟く。
その“何か”は、低く唸り声を上げながら周囲を見渡す。
「グ……ォ……」
地面が、わずかにひび割れる。
それだけで、その異常な力が伝わってくる。
ユシルが小さく呟く。
「……こわれてる……」
ソレイナも険しい表情で頷いた。
「……正常な状態ではありません」
その時――。
天城修也が一歩前に出る。
その目は、冷静に“それ”を観察していた。
「……なるほど」
そして、はっきりと言い放つ。
「あれは――異能暴走状態だ」
その言葉が、静かに、しかし重く場に響いた。
レンはその異形の存在から目を離さず、拳を強く握りしめる。
“暴走した力”。
それが、今、目の前にある。
そして――。
それは確実に、放置していいものではなかった。
空気が張り詰める。
次の瞬間に何が起きてもおかしくない、そんな緊張感。
レンたちの“初任務”は――。
想像以上に危険なものとなろうとしていた。
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