第17話「静寂の予兆と揺らぐ日常」
昼下がりの生徒会室。
窓から差し込む柔らかな光が、室内を穏やかに照らしていた。
ソファの上では、ユシルが相変わらずすやすやと眠っている。
「……ほんと、よく寝るな」
神代レンは苦笑しながら呟いた。
「いいじゃない、平和って感じで」
氷室凛はそう言いながら書類をめくる。
天城修也は腕を組み、どこか考え込むような表情をしていた。
「……だが、いつまでもこうとは限らない」
その一言で、空気がわずかに引き締まる。
朝比奈咲夜が首をかしげる。
「どういうこと〜?」
修也は視線を窓の外へ向けた。
「最近、この周辺で“異常な気配”が報告されている」
「異常な気配……?」
レンが聞き返すと、月影詩乃が静かに補足する。
「……通常の擬神とは異なる、反応です……」
ソレイナが一歩前に出る。
「……おそらく、“未制御”か、あるいは……」
その言葉は途中で止まる。
しかし、その続きをレンはなんとなく察した。
「敵、ってことか」
沈黙。
その時――。
「……んぅ……」
ソファの上で眠っていたユシルが、ゆっくりと目を開けた。
「……ざわざわ、する……」
ぼんやりとした声。
だが、その一言に、全員の視線が集まる。
「ざわざわ?」
レンが問いかけると、ユシルはゆっくりと体を起こす。
「自然が……おちつかない……」
その瞳は、いつもの眠たげなものとは少し違っていた。
「なんか……いやなかんじ……」
ソレイナの表情がわずかに引き締まる。
「……ユシルがそう感じるのであれば、間違いありません」
修也が立ち上がる。
「場所は分かるか?」
ユシルは少し考えるように目を細めて――。
「……そと……遠くない……」
と、ぽつりと言った。
凛がレンの方を見る。
「行く?」
レンは、一瞬だけ迷った。
つい昨日まで、“普通の高校生”だった自分。
それが今は――こうして“何かに対処する側”に立っている。
けれど。
「……行くに決まってるだろ」
その答えに、凛は小さく笑った。
「そう言うと思った」
咲夜は元気よく立ち上がる。
「よーし!初任務って感じだね!」
詩乃も静かに頷く。
「……気を、引き締めましょう……」
ソレイナはレンの隣に立つ。
「主様、私が必ずお守りします」
ユシルはふわりと浮かび上がり、少しだけ真剣な表情になる。
「……いく……?」
「ああ、一緒に行くぞ」
レンはそう言って、ドアの方へ歩き出した。
その背中は、もう“ただの一般人”のものではなかった。
外へ出ると、空はどこか不穏に曇っていた。
風が、わずかに強く吹く。
「……確かに、なんか変だな」
ユシルが空を見上げる。
「……あっち……」
指し示した方向。
そこには、まだ何も見えない。
けれど――。
確実に“何か”がいる。
レンは拳を握りしめた。
「……行くぞ」
日常と非日常の境界線。
それを越えた先に待つものは――まだ誰にも分からない。
だが一つだけ確かなことがある。
この瞬間から。
神代レンの物語は、さらに大きく動き出す――。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




