第十四話 眠りの森の擬神
俺は神代レン。
普通の高校生――だったが。
スキル《神核生成》でソレイナという擬神を生み出し、
そして生徒会に入ることになった。
――その頃。
現実とは異なる、静かな空間。
そこには“水面”だけが広がっていた。
空も地面もない。
ただ、揺らめく水鏡のような世界。
その水面には、ひとりの少年の姿が映っている。
――神代レン。
そしてその周囲で、いくつもの影が揺れていた。
「ソレイナが誘ってますね」
猫耳パーカーの少女が、水面を覗き込みながら言う。
「のれば、私たちの誰かが……」
茶色いフードの少女が静かに呟く。
「どうやらやるようですよ」
紫フードの少女が、わずかに微笑む。
「すぅ〜……すぅ〜……」
その横で、ふわふわ浮かぶ少女は――寝ていた。
完全に、寝ていた。
「……相変わらずですね」
紫の少女が小さくため息をつく。
――そして。
生徒会室。
「で?なぜここで?」
俺は腕を組みながら問いかける。
「いや、なに」
天城修也が穏やかに笑う。
「君のスキルを見てみたくてね」
「それに興味深いし」
朝比奈咲夜が身を乗り出す。
「……勉強に、なるかもしれませんので……」
月影詩乃も、小さく頷いた。
「なんだよそれ」
完全に見世物じゃねぇか。
「別にいいじゃない、減るものじゃないし」
氷室凛があっさり言う。
「……主様」
ソレイナが静かにこちらを見る。
その視線には、確認の意志。
「……はぁ〜……」
ため息を一つ。
「仕方ない、いくぞ!」
覚悟を決める。
「スキル――《神核生成》!!」
――次の瞬間。
光が弾けた。
淡く、柔らかく、どこか温かい光。
それはソレイナの時とは違う。
もっと、穏やかで――優しい。
「これは……!」
天城が目を見開く。
「きれーい!」
朝比奈が思わず声を上げる。
「……」
月影は、無言で見つめていた。
「……」
氷室もまた、静かに観察している。
「……」
ソレイナは、ただ見守る。
「どうだ……って」
光が収まり、現れた存在を見て――
俺は、言葉を失った。
「すぅ〜……すぅ〜……すぅ〜……」
――寝ている。
しかも。
ふわふわと浮かぶ“シャボン玉”のようなものの上で。
「寝てる?」
月影がぽつりと呟く。
「すごーい!シャボン玉の上で寝てる〜」
朝比奈が興味津々で近づく。
「これって尻尾?さきっぽに植物が生えてるよ。それに全体的に自然って感じ」
確かに。
淡い緑を基調とした服装。
柔らかそうな雰囲気。
そして、どこか“自然そのもの”のような存在感。
「すぅ〜……すぅ〜……うみゅ……」
小さく身じろぎする。
「……あれ〜?」
ゆっくりと、目を開けた。
「ここどこ?」
寝ぼけた声。
「私……あ〜」
視線がこちらに向く。
「主だ〜」
にこ〜っと、ゆるい笑顔。
「……」
なんだこのマイペース。
「ソレイナ、彼女は」
横を見る。
「はい」
ソレイナが一歩前に出る。
「自然の擬神――『ユシル』です」
「自然……」
「基本的に眠たそうにしていて本気をあまり出しませんが」
少しだけ間を置いて。
「本気を出すと、とても強いです」
「そ〜だよ〜」
ユシルが、ふわふわと浮いたまま手を振る。
「よ〜しくね〜」
「……あ、あぁ、よろしく」
なんというか。
ソレイナが“戦士”なら。
ユシルは――“癒し”だ。
いや、多分それだけじゃないんだろうけど。
「面白いわね……」
氷室が小さく呟く。
「性質が全く違う」
「でしょ?」
朝比奈が楽しそうに笑う。
「これは当たり引いたんじゃない?」
「……まだ分からない」
天城は冷静に言う。
「だが、確実に言えることは一つ」
その視線が、俺に向く。
「神代レン」
「お前の力は――やはり規格外だ」
「……はは」
乾いた笑いが出る。
その横で。
「すぅ〜……すぅ〜……」
ユシルは、再び寝ていた。
「早いな!?」
こうして。
俺の“二体目の擬神”は――
とんでもなくマイペースなやつだった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




