第百十七話 『崩壊の空と始動する反撃』
闇が落ちた。
夕暮れだったはずの空は、巨大な翼に覆われて完全な夜へと変わっていた。
異能学園周辺一帯。
その中心に、異形の巨獣が浮かんでいる。
無数の赤い眼。
呼吸のたびに空気が軋むような圧力。
街そのものが震えていた。
そして、その頭上。
黒衣の人物が静かに立っている。
「おまえ達の敵だ………………さて……」
その声は妙に軽い。
だが、周囲に響くだけで背筋が冷える。
「異能学園の生徒会諸君」
巨大な怪物が低く唸る。
その振動でビルの窓がひび割れた。
◇
地上。
生徒会メンバーは即座に陣形を組んでいた。
天城修也が短く指示を飛ばす。
「敵は空中支配型だ。地上からの攻撃は分散される」
「まずは結界を破る」
氷室凛が空を睨む。
「普通じゃないわね……あれ」
朝比奈咲夜は拳を握る。
「こんなの反則だよ……!」
月影詩乃は静かに矢を番える。
「狙いは上空の人物」
だがその瞬間。
アイナが叫んだ。
「待ってください!」
「結界解析中……異常です!」
彼女の瞳が高速で揺れる。
「これは単なる防御結界ではありません!」
「空間そのものを歪めています!」
「つまり……」
ソレイナが低く言う。
「外部からの干渉が難しい、ということですね」
アイナが頷く。
「はい!」
「内部突破が必要です!」
◇
俺は空を見上げていた。
右腕の紋様が熱を帯びる。
ソレイナが隣で炎を揺らす。
「主様……かなり危険です」
ユシルがふわふわ浮きながら言う。
「うわぁ……空、暗いねぇ……」
アヤネは冷静に状況を分析している。
「戦力差は圧倒的です」
フリートは唇を噛む。
「でも、やるしかないですね」
アイナがこちらを見る。
「主君」
「突破方法、一つだけあります」
俺は視線を向けた。
「言ってみろ」
アイナは即答した。
「主君の《神核生成》です」
一瞬、全員が沈黙する。
天城が眉をひそめる。
「それは……リスクが高すぎる」
アイナは首を振らない。
「ですが現状、最も成功率が高いです」
「敵の結界構造は擬神生成の波形に近い」
「つまり……」
ソレイナが静かに言う。
「同じ系統で上書きできる可能性がある、ですね」
アイナ。
「はい!」
◇
黒衣の男が空で笑った。
「相談は終わったか?」
「そろそろ始めよう」
その瞬間。
巨獣が動いた。
空が裂けるような咆哮。
「グオオオオオオオオオ!!」
衝撃波。
地面が吹き飛ぶ。
建物が傾く。
朝比奈が叫ぶ。
「来るよ!」
氷室が前に出る。
「結界展開!」
氷の壁が形成される。
だが次の瞬間、黒い衝撃で粉砕された。
「っ……!」
天城が刀を抜く。
「全員、散開!」
◇
戦闘開始。
巨獣の翼が振り下ろされる。
風圧だけで地面が裂ける。
ユシルが両手を広げた。
「植物結界!」
巨大な樹木が瞬時に成長し、衝撃を受け止める。
だが、押し潰される。
「ふわぁああ!無理ぃ!」
フリートが水流を放つ。
「水圧障壁!」
衝撃を分散させる。
アヤネが糸を張る。
「拘束結界」
巨獣の動きが一瞬止まる。
その隙に。
ソレイナが炎を集中させる。
「紅蓮槍」
炎の槍が放たれる。
だが。
黒衣の男が指を鳴らした。
「無駄だ」
炎は空中で消滅した。
◇
アイナが焦る。
「エネルギー反転されています!」
「攻撃がすべて吸収される構造です!」
朝比奈が叫ぶ。
「じゃあどうすればいいの!?」
アイナは一瞬黙り。
そして言った。
「主君しか……いません」
俺は刀を握り直した。
「俺だけで?」
アイナは強く頷く。
「はい」
「主君の神核生成は“外部攻撃”ではありません」
「“存在の再定義”です」
氷室が息を呑む。
「そんなこと……本当にできるの?」
ソレイナが静かに言う。
「できます」
「主様なら」
ユシルが笑う。
「できるよ〜主様だもん〜」
アヤネも頷く。
「同意します」
フリートは拳を握る。
「行きましょう!」
◇
黒衣の男が見下ろす。
「面白い」
「では見せてみろ」
「その力を」
巨獣が再び咆哮する。
空間が歪む。
世界が圧迫される。
その中心で。
俺は一歩前へ出た。
右腕の紋様が熱を増す。
ソレイナが隣で炎を強くする。
「主様」
アイナが言う。
「成功率は未知数です」
「ですが……」
俺は空を見た。
あの巨大な影。
そして黒衣の男。
「やるしかない、か」
刀を構える。
炎が走る。
世界が震える。
そして――
戦いは次の段階へと移ろうとしていた。
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次回もお楽しみに




