第百十六話 『開幕する宴』
俺は神代レン。
普通の高校生。
だった。
だがスキル《神核生成》によって炎の擬神ソレイナが現れ、俺の日常は大きく変わった。
さらに自然の擬神ユシル。
操りの擬神アヤネ。
海洋の擬神フリート。
そして知識の擬神アイナ。
多くの仲間と出会い、俺は異能学園高等学校の生徒会の一員として様々な事件を解決してきた。
そして――。
新たな脅威が静かに動き始めていた。
◇
赤い瞳が妖しく輝く。
その背後。
闇の中で。
巨大な何かが目を開いた。
無数の赤い眼。
異形の翼。
重く響く咆哮。
それはまるで。
巨大な獣の王。
そして黒衣の人物は。
楽しそうに呟く。
「さあ」
「宴を始めよう」
夕暮れの空に。
不気味な笑い声だけが静かに響いていた。
◇
同時刻。
異能学園高等学校。
生徒会室。
天城修也。
氷室凛。
朝比奈咲夜。
月影詩乃。
そして俺たちは、緊急招集によって集められていた。
室内には普段の穏やかな空気はない。
全員の表情が引き締まっている。
天城が机の上に資料を置いた。
「状況は?」
氷室が尋ねる。
天城は静かに答えた。
「市街地各地で異能獣の反応」
「数は?」
「三十以上」
「え?」
思わず声が漏れた。
朝比奈も目を丸くする。
「三十!?そんな数一気に!?」
月影も珍しく驚きを隠せない。
「……多い」
ソレイナ。
ユシル。
アヤネ。
フリート。
アイナ。
五人も険しい顔になる。
アイナが小さく手を上げた。
「推測です!」
「これほどの同時発生は自然現象ではありません!」
「誰かが意図的に異能獣を操っています!」
アヤネも頷く。
「私も同意見です」
フリートが不安そうに言った。
「でも、こんな数……」
ソレイナが静かに拳を握る。
「主様」
「大きな戦いになります」
俺も覚悟を決めた。
「だな」
天城が立ち上がる。
「生徒会総員出動」
「市民の避難を最優先」
「異能獣の殲滅を行う」
「了解!」
全員が同時に返事をした。
◇
数分後。
夕暮れの街。
異様だった。
悲鳴。
逃げ惑う人々。
割れた窓。
倒壊した電柱。
そして。
道路の中央。
十数体の異能獣。
狼。
鳥。
蛇。
猿。
様々な姿をした怪物たち。
「グルルルル……」
朝比奈が剣を抜く。
「うわぁ……いっぱい!」
氷室も冷気を纏う。
「やるしかないわね」
月影が静かに弓を構える。
「うん」
天城が前へ出た。
「生徒会」
「戦闘開始!」
次の瞬間。
異能獣たちが一斉に襲いかかる。
「行くぞ!」
俺は刀を抜いた。
ソレイナが隣に立つ。
「はい!」
右腕の紅蓮の紋様が輝く。
熱が身体を巡る。
「うおおおおっ!!」
炎を纏った斬撃。
最前列の狼型異能獣が吹き飛んだ。
だが。
その後ろからさらに三体。
「主様!」
ソレイナが炎の槍を放つ。
轟音。
三体同時撃破。
その横。
ユシルがふわふわ浮かびながら両手を広げた。
「ふゆぅ~」
「いっぱい育てるよ~」
地面から巨大な蔦が出現。
異能獣たちを拘束していく。
「ギャアアア!」
アヤネが指を動かした。
「操糸」
無数の糸。
絡みついた怪物同士がぶつかり合う。
「これで動けません」
さらに。
フリート。
「海流槍!」
巨大な水槍。
異能獣の群れを貫く。
そして。
アイナ。
「計算完了です!」
「敵移動予測九十八パーセント!」
「主君!右から来ます!」
「任せろ!」
振り向きざまに刀を振る。
飛びかかってきた豹型異能獣を真っ二つにした。
朝比奈も笑う。
「負けないよ!」
雷光。
閃光。
爆発。
氷室の氷。
月影の矢。
天城の斬撃。
次々と敵を倒していく。
しかし。
その時。
アイナの顔色が変わった。
「あ……」
「え?」
「主君!」
「上です!」
空。
夕暮れの赤い空。
そこにいた。
巨大。
圧倒的。
異形。
翼を持つ怪物。
黒い羽。
無数の赤い眼。
その大きさはマンションを超えている。
誰もが息を呑んだ。
朝比奈。
「なに……あれ……」
月影。
「大きすぎる……」
氷室。
「冗談でしょ……」
天城。
「……まずいな」
ソレイナ。
「まさか……」
フリート。
「こんなの……」
アヤネ。
「規格外……」
ユシル。
「ふゆ?」
アイナ。
「危険度……測定不能です!」
そして。
巨大な怪物の頭上。
そこに立つ黒衣の人物。
赤い瞳。
不気味な笑み。
男は両手を広げる。
「素晴らしい」
「実に素晴らしい」
「これこそ宴」
「これこそ戦い」
そして。
男は楽しそうに笑った。
「初めまして」
「異能学園生徒会」
「私は――」
その瞬間。
巨大な翼が空を覆い。
夕陽が消えた。
街全体が闇に包まれる。
誰もが本能で理解する。
今までとは違う。
本物の強敵。
巨大な戦いが。
ついに始まろうとしていた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




