第百十五話 迫る影と生徒会の決意
俺は神代レン。
普通の高校生、だった。
だがスキル《神核生成》によって炎の擬神ソレイナと出会い、生徒会へ入り、自然の擬神ユシル、操りの擬神アヤネ、海洋の擬神フリート、そして知識の擬神アイナと出会った。
そんな俺たちの日常は、長く続いていた。
だが。
平和は、突然終わりを告げようとしていた。
『異能学園高等学校』生徒会室。
先ほど鳴り響いた警報音。
その余韻がまだ室内に残っていた。
全員の空気が一変している。
いつもの笑顔は消え、誰もが真剣な表情になっていた。
天城修也。
氷室凛。
朝比奈咲夜。
月影詩乃。
そして俺。
さらに五人の擬神たち。
誰一人として、ふざける者はいない。
天城は机の上に置かれた端末を見つめていた。
そして静かに口を開く。
「各地の観測装置が異常反応を感知した」
「位置は学園西部、」
「規模は大きい」
「しかも一つではない」
氷室凛が眉をひそめる。
「複数?」
「えぇ」
「どうやら群れのようね」
朝比奈咲夜も真剣な顔になる。
「久しぶりの実戦だね……」
月影詩乃も小さく頷く。
「油断はできない……」
その時。
アイナが静かに目を閉じた。
知識の擬神。
彼女の頭脳が高速演算を開始する。
数秒後。
アイナが目を開いた。
「推定出現数」
「二十八」
「危険度、中」
「ただし個体差あり」
「上位種の存在確率四十七パーセント」
全員が驚く。
「四十七!?」
「そんなに高いのか!」
アイナは頷いた。
「はい」
「普通の群れではありません」
「統率されています」
アヤネが目を細めた。
「誰かが操っている……?」
ソレイナも険しい顔になる。
「その可能性があります」
フリートも真面目な表情になった。
「嫌な予感がします……」
ユシルですら珍しく笑っていない。
「むぅ~」
「嫌だなぁ~」
天城修也。
彼は立ち上がった。
「生徒会、出動する」
「久々の本格任務だ」
「各自、準備を」
その言葉と同時に。
全員が立ち上がった。
「了解!」
生徒会室の空気が変わる。
戦う者たちの空気。
その時。
俺の右腕。
炎の紋様がわずかに熱を帯びた。
ソレイナがこちらを見る。
「主様」
「あの力が反応しています」
「あちらに何かいます」
「強い存在が」
俺も右腕を見る。
最近の修行。
炎の力。
そして現れた紋様。
どうやら、ただの敵ではないらしい。
「レン」
天城が俺を見る。
「行けるか?」
「あぁ」
「もちろん」
「みんなで行こう」
朝比奈咲夜が笑う。
「よーし!」
「暴れるぞー!」
氷室凛がため息をつく。
「暴れるんじゃないわよ」
「任務よ」
「はーい!」
月影詩乃も静かに立ち上がった。
「ん……準備完了」
アヤネが微笑む。
「主殿」
「お供いたします」
フリートも元気よく敬礼する。
「海洋の擬神フリート!」
「主さんをお守りします!」
ユシルはシャボン玉に乗りながら笑った。
「ふゆぅ~」
「がんばるよぉ~」
ソレイナは静かに一礼する。
「炎の擬神として」
「主様の剣となります」
そして。
アイナ。
召喚されてからまだ日が浅い彼女。
小さな体。
ドレス姿。
しかし。
その赤紫色の瞳には強い光が宿っていた。
「主君」
「アイナも戦います」
「演算支援」
「戦況解析」
「全力で行います」
俺は思わず笑った。
「頼りにしてる」
「アイナ」
その一言だけで。
アイナはぱあっと笑顔になった。
「はい!」
「お任せください!」
そして。
生徒会室の扉が開く。
夕日が差し込む。
赤く染まる廊下。
その先には。
これから始まる戦いが待っている。
天城修也が歩き出す。
「行こう」
「異能学園生徒会」
「久々の仕事だ」
誰も迷わない。
誰も立ち止まらない。
俺たちは仲間だ。
一人じゃない。
炎。
自然。
操り。
海洋。
知識。
そして。
生徒会の仲間たち。
みんなで戦う。
それが俺たちだ。
しかし。
その頃。
学園西部。
人のいない廃工場地帯。
赤黒い霧の中。
無数の影が蠢いていた。
そして。
その群れの中央。
そこには。
人影が一つ。
黒いコート。
顔は見えない。
その人物は静かに笑った。
「ようやくか」
「待っていたよ」
「神代レン」
「そして……擬神たち」
赤い瞳が妖しく輝く。
その背後。
闇の中で。
巨大な何かが目を開いた。
無数の赤い眼。
異形の翼。
重く響く咆哮。
それはまるで。
巨大な獣の王。
そして黒衣の人物は。
楽しそうに呟く。
「さあ」
「宴を始めよう」
夕暮れの空に。
不気味な笑い声だけが静かに響いていた。
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