第百十二話 昼休みの生徒会室
俺は神代レン。
普通の高校生だったが、スキル《神核生成》というスキルでソレイナという炎の擬神が現れてから俺の普通は終わった。
自然の擬神ユシル。
操りの擬神アヤネ。
海洋の擬神フリート。
そして知識の擬神アイナ。
気付けば五人の擬神たちと共に過ごす日々が当たり前になっていた。
『異能学園高等学校』
午前の授業はいつも通り終わった。
数学。
国語。
歴史。
異能理論学。
特に問題もなく時間は過ぎていく。
教室では昼休みを告げるチャイムが鳴り響いた。
一瞬で教室の空気が変わる。
弁当を広げる者。
購買へ向かう者。
友人同士で集まる者。
いつもの昼休みだった。
レンは机へ頬杖をつく。
少し疲れた。
異能理論学だけは未だに慣れない。
横ではソレイナが苦笑していた。
「主様、お疲れですか?」
「あぁ、少しな」
ユシルは机へ突っ伏している。
「ふにゃぁ~」
「お前授業中ほとんど寝てただろ」
「でも疲れたぁ~」
「なんでだよ」
フリートが思わず笑う。
アヤネも肩をすくめた。
アイナだけはノートを見ていた。
レンは気になって尋ねる。
「また何か計算してるのか?」
「はい」
「今度は何だ?」
「昼休み終了までの残り時間を秒単位で計算しています」
「そんなこと計算してどうする」
「待ち時間短縮です」
「短縮できてないだろ」
アイナは少し考えた。
そして真顔で頷く。
「確かに」
全員が笑った。
そんな時間を過ごしていると。
教室の扉が開く。
見慣れた顔だった。
朝比奈咲夜。
その後ろには月影詩乃。
咲夜は元気よく手を振る。
「レンー!」
「なんだ」
「生徒会室行こう!」
「まだ昼休みだぞ」
「だからだよ!」
意味が分からない。
だが咲夜は気にしない。
詩乃も静かに頷いた。
「会長もいる」
「そうなのか」
「うん」
結局レンたちは昼休みを生徒会室で過ごすことになった。
生徒会室。
扉を開く。
そこにはすでに天城修也と氷室凛がいた。
修也は書類を読んでいる。
凛は机へ向かって作業中だった。
修也は顔を上げる。
「やぁ」
「こんにちは」
「昼休みくらい休めばいいのに」
レンがそう言うと。
修也は笑った。
「生徒会長だからね」
「便利な言葉だな」
「だろう?」
どこか誇らしげだった。
凛は呆れている。
「仕事好きなだけよ」
「否定できないな」
修也は笑う。
昼休みの生徒会室は意外と静かだった。
窓から風が入る。
カーテンが揺れる。
どこか落ち着く空間だった。
咲夜はソファへ飛び込む。
「ふぃ~」
詩乃は本を開く。
凛は紅茶を飲む。
修也は書類。
レンは椅子へ座る。
擬神たちもそれぞれ好きな場所へ移動した。
ユシルは窓際。
フリートは本棚。
アヤネは入口付近。
ソレイナはレンの近く。
アイナは本棚へ向かった。
すると。
数秒後。
アイナの目が輝く。
「すごいです」
「どうした」
「本です」
「いや見れば分かる」
「大量です」
「それも見れば分かる」
アイナは感動していた。
知識の擬神らしい反応だった。
本棚を眺める。
一冊抜く。
読む。
戻す。
また読む。
驚くべき速度だった。
フリートが目を丸くする。
「もう読み終わったんですか?」
「はい」
「早っ!?」
「内容記憶完了です」
「すごい……」
ソレイナも苦笑する。
「相変わらずですね」
アヤネも頷く。
「変わりませんね」
ユシルは窓際で空を見ている。
「いい天気~」
平和だった。
本当に平和だった。
誰も戦っていない。
事件もない。
敵もいない。
ただ昼休みを過ごしているだけ。
それだけなのに心地良い。
レンはそんな時間が少し好きになっていた。
修也が書類を閉じる。
「そういえば」
「ん?」
「アイナ」
「はい」
「この学校についてどう思う?」
アイナは少し考えた。
そして真面目に答える。
「良い学校です」
「ほう」
「生徒同士の関係性も良好」
「うん」
「設備も優秀」
「なるほど」
「そして」
アイナは少し笑った。
「主君が楽しそうです」
生徒会室が静かになる。
レンは思わず固まった。
咲夜が吹き出す。
「それだ!」
凛も小さく笑う。
詩乃も珍しく微笑んでいた。
フリートも笑う。
ユシルも笑う。
アヤネも口元を緩める。
ソレイナだけは優しく頷いた。
レンは少し照れ臭くなる。
「そうかよ」
アイナは真っ直ぐ答える。
「はい」
それ以上は言わなかった。
だが。
その言葉だけで十分だった。
昼休みはゆっくり過ぎていく。
笑い声。
雑談。
穏やかな風。
生徒会室にはいつも通りの時間が流れていた。
レンは窓の外を見る。
校庭では生徒たちが楽しそうに過ごしている。
平和な学校。
平和な仲間たち。
平和な毎日。
そんな日常の中で。
神代レンと五人の擬神たちは今日もまた、いつも通りの時間を過ごしていた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




