第百十話 賑やかな朝
俺は神代レン。
普通の高校生だったが、スキル《神核生成》というスキルでソレイナという炎の擬神が現れてから俺の普通は終わった。
自然の擬神ユシル。
操りの擬神アヤネ。
海洋の擬神フリート。
そして最近召喚された知識の擬神アイナ。
気付けば俺の周りはどんどん賑やかになっていた。
神代家。
静かな朝。
カーテンの隙間から差し込む光が部屋を照らしている。
レンの部屋。
ベッドの上で眠っていた俺は、ゆっくりと目を開けた。
まだ少し眠い。
時計を見る。
いつもの時間だった。
身体を起こす。
すると。
すでに部屋の中には数人の姿があった。
窓際。
そこにはソレイナが立っている。
朝日を浴びた赤い髪が輝いて見えた。
机の前にはアイナ。
ノートを開き、何かを書いている。
そして床。
シャボン玉の上でふわふわ浮いているユシル。
さらに椅子にはアヤネ。
窓から外を眺めるフリート。
いつもの朝。
いや。
アイナが増えた分だけ少し賑やかになった朝だった。
ソレイナ。
「主様、おはようございます」
俺は欠伸をしながら答える。
「あぁ、おはよう」
ユシル。
「おはよぉ~」
アヤネ。
「おはようございます」
フリート。
「主さん、おはようございます!」
アイナ。
「おはようございます主君。現在時刻は六時三十二分です」
「そうか」
思わず笑ってしまう。
さすが知識の擬神。
朝の挨拶まで正確だった。
ベッドから降りる。
制服を手に取る。
その間もアイナは何かを書いている。
レンは気になって覗き込んだ。
「何やってるんだ?」
アイナ。
「観察日記です」
「観察日記?」
「はい」
アイナは真面目な顔で頷く。
「主君の生活習慣を記録しています」
「やめろ」
即答だった。
ユシルが笑う。
「主様観察日記だって~」
フリートも笑う。
「ちょっと見てみたいかも」
アヤネ。
「私も少し興味があります」
「お前らな」
ソレイナは苦笑していた。
アイナは首を傾げる。
「必要ありませんか?」
「必要ない」
「なるほど」
素直にメモへ書き込む。
『主君は観察日記を必要としていない』
「だから書くな!」
部屋に笑い声が広がった。
やがて着替えを終え、一階へ向かう。
洗面所。
顔を洗う。
冷たい水が眠気を吹き飛ばしていく。
鏡を見る。
少しずつだが変わった気がする。
以前の自分なら想像もできなかった生活。
だが今はそれが当たり前になっていた。
顔を拭く。
リビングへ向かう。
すると朝食の良い香りが漂ってきた。
母が料理を並べている。
「あら、おはよう」
「あぁ」
擬神たちも次々と席につく。
ユシルはすでに食べる気満々だった。
フリートも笑顔。
ソレイナは手伝いをしている。
アヤネは食器を並べる。
アイナは料理を見つめていた。
「興味あるのか?」
「はい」
アイナは真剣な顔だった。
「昨日も思いましたが食事とは非常に効率的です」
「効率的?」
「はい」
アイナは説明を始める。
「栄養補給。精神安定。コミュニケーション形成。生活習慣維持。非常に優秀な文化です」
「そんな分析するもんか?」
「します」
即答だった。
母が笑う。
「アイナちゃん面白いわね」
アイナは少しだけ照れたようだった。
全員が席につく。
手を合わせる。
「いただきます」
朝食が始まる。
穏やかな時間。
学校へ行く前のひととき。
ユシルが頬を膨らませながら食べる。
フリートが楽しそうに話す。
アヤネが静かに食べる。
ソレイナが皆を見守る。
アイナが料理を分析する。
そしてレンはそれを眺める。
気付けば笑っていた。
賑やかだ。
本当に賑やかだ。
だが嫌ではない。
むしろ心地良い。
朝食を終える。
片付けを手伝う。
支度を整える。
鞄を持つ。
制服を整える。
そして玄関。
全員が集まる。
ソレイナ。
ユシル。
アヤネ。
フリート。
アイナ。
五人の擬神たち。
レンは靴を履く。
扉を開く。
朝の空気が流れ込んできた。
青空。
穏やかな風。
今日も良い天気だった。
フリートが笑顔になる。
「海日和ですね!」
ユシルも両手を上げる。
「お散歩日和だぁ~」
アヤネ。
「学校へ行くんですよ」
ソレイナは微笑む。
「今日も頑張りましょう」
アイナも頷く。
「はい」
レンはそんな五人を見回した。
そして少し笑う。
「行くぞ」
五人は同時に頷いた。
「はい!」
賑やかな声が朝の住宅街に響く。
こうして今日もまた。
神代レンと五人の擬神たちの一日が始まるのだった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




