第百九話 新しい仲間との夕食
神代レン。
普通の高校生だった俺は、スキル《神核生成》によって炎の擬神ソレイナと出会い、普通の日常から少しずつ遠ざかっていった。
自然の擬神ユシル。
操りの擬神アヤネ。
海洋の擬神フリート。
そして最近、新たに召喚された知識の擬神アイナ。
気付けば俺の周りはかなり賑やかになっていた。
神代家。
玄関の扉を開けた俺たちを出迎えたのは、いつもと変わらない暖かな空気だった。
母が奥から顔を出す。
「あら、お帰りなさい」
その言葉に全員が返事をする。
ソレイナは丁寧に頭を下げる。
ユシルは手を振る。
アヤネは礼儀正しく会釈する。
フリートは元気よく返事をする。
そしてアイナは少し緊張した様子で母を見つめていた。
新しい環境。
新しい家。
初めて見る人。
それでもアイナは勇気を出して一歩前へ出る。
「はじめまして」
母は優しく笑った。
「まあ、かわいい子ね」
アイナは少しだけ目を丸くする。
どうやら予想外だったらしい。
「かわいい……ですか?」
「ええ」
「なるほど」
真面目に頷く。
レンは思わず笑った。
アイナは頭脳こそ桁違いだが、こういう部分はどこか幼い。
母は全員を見渡す。
「ご飯できてるわよ」
その一言で反応したのはユシルだった。
「ご飯だぁ~!」
フリートも笑顔になる。
「やった!」
アイナも興味津々だ。
「食事ですね」
ソレイナは微笑む。
「行きましょう」
全員で洗面所へ向かう。
手を洗う。
順番待ちをする。
ユシルが泡だらけになる。
フリートが手伝う。
アイナが観察する。
アヤネが呆れる。
ソレイナが微笑む。
いつも通りの光景だった。
やがて食卓。
温かい料理が並ぶ。
湯気が立ち上る。
自然と全員の表情が明るくなる。
席に座る。
レンの隣にはソレイナ。
向かいにはフリート。
その横にはユシル。
アヤネとアイナも席につく。
母が微笑んだ。
「それじゃあ」
全員で手を合わせる。
「いただきます」
食事が始まった。
アイナは興味深そうに料理を見ている。
そして一口。
もぐもぐ。
しばらく沈黙。
そして。
「おいしいです!」
予想以上に感動したらしい。
ユシルが笑う。
「でしょ~?」
フリートも嬉しそうだった。
「母様の料理おいしいですから!」
母は少し照れる。
「そんなに褒めても何も出ないわよ」
アイナは真剣な顔になる。
「事実を述べました」
その言葉に全員が笑った。
食卓が賑やかになる。
学校の話。
生徒会の話。
今日の出来事。
些細な会話が続いていく。
レンはそんな様子を眺めていた。
少し前まで一人だった食卓。
今は違う。
ソレイナがいる。
ユシルがいる。
アヤネがいる。
フリートがいる。
そしてアイナもいる。
賑やかだ。
騒がしい。
でも。
悪くない。
むしろ好きだった。
食事を終える頃にはアイナもすっかり打ち解けていた。
食器を片付ける手伝いをしようとして。
計算通りの動きを披露して。
逆に母を困らせたりもした。
ユシルが笑う。
フリートも笑う。
アヤネが小さくため息を吐く。
ソレイナが見守る。
レンも思わず笑っていた。
夜が更けていく。
食器洗いが終わる。
リビングで少し休憩する。
テレビの音。
みんなの会話。
穏やかな時間。
戦いもない。
事件もない。
敵も現れない。
ただの日常。
ただの平和な夜。
それが今は何より大切だった。
アイナは窓の外を見ていた。
夜空。
星。
静かな街。
そして振り返る。
その視線の先にはレンたちがいた。
ソレイナ。
ユシル。
アヤネ。
フリート。
そして主君。
アイナは小さく微笑む。
召喚されたばかりなのに。
なぜか懐かしい。
不思議な感覚だった。
レンはそんなアイナに気付く。
「どうした?」
「いえ」
アイナは首を振った。
そして優しく笑う。
「良い場所だなと思いまして」
レンは少し驚いた。
だがすぐに笑う。
「そうか」
短い返事。
それだけだった。
だがアイナは満足そうだった。
神代家の夜は静かに過ぎていく。
笑い声が響く。
温かな時間が流れる。
そして新しく加わった知識の擬神アイナもまた、その輪の中へ自然と溶け込んでいくのだった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




