第百八話 新しい家族
『異能学園高等学校』生徒会室。
夕日が窓から差し込み、生徒会室の机を橙色に染めていた。
昼間まで積み上がっていた大量の書類も今ではかなり減り、部屋の中にはどこか仕事を終えた後の穏やかな空気が流れている。
神代レンは椅子にもたれながら大きく背伸びをした。
「ん~~~~っ!」
背中の骨がぽきぽきと鳴る。
肩も少し重い。
書類仕事というのは戦闘とは違う疲労があるらしい。
そんなことを思いながら机を見る。
そこには綺麗に整理された資料の山。
そしてその隣には。
知識の擬神アイナがいた。
アイナは真剣な表情で最後の資料をまとめている。
小さな身体。
大きなドレス。
しかし作業速度だけなら誰よりも速かった。
ソレイナが静かに笑う。
「お疲れ様です、主様」
「ありがとな。お前らも手伝ってくれたしな」
ユシルはふわふわと浮かびながら伸びをした。
「ふにゃぁ~終わったぁ~」
アヤネも小さく息を吐く。
「今日は少し量が多かったですね」
フリートも頷く。
「ですね。でも全部終わりました!」
アイナは紙束を整えながら胸を張った。
「完了です!」
その様子にレンは苦笑した。
「お前、本当にすごいな」
「はい!」
即答だった。
迷いがない。
堂々としている。
月影詩乃がそんなアイナを見つめる。
「頭良い」
「ありがとうございます!」
朝比奈咲夜が身を乗り出す。
「どれくらい頭良いの?」
「主君が今まで食べた朝食の回数も大体計算できます」
「怖っ!?」
咲夜が飛び上がった。
生徒会室に笑いが広がる。
氷室凛も思わず口元を緩めた。
「本当に規格外ね」
アイナは不思議そうに首を傾げる。
「そうですか?」
「そうよ」
「そうなんですね」
本人に自覚はないらしい。
天城修也は苦笑しながら立ち上がった。
「さて」
全員の視線が向く。
「今日の仕事はこれで終わりだ」
「おぉ~!」
「やった~!」
「帰れる」
それぞれ反応を見せる。
修也は窓の外を見る。
夕焼けが校庭を赤く染めていた。
「最近は比較的平和だ」
「ですね」
「平和なのは良いことだよね~」
「うん」
「その通りです」
修也は静かに笑う。
「だからこそ今を大切にしよう」
その言葉に全員が頷いた。
戦いばかりではない。
こういう時間も大事なのだ。
やがて帰る準備が始まる。
書類を片付ける者。
荷物をまとめる者。
窓を閉める者。
いつもの日常。
いつもの放課後。
レンは鞄を肩にかけた。
「じゃあ帰るか」
「はい!」
「お供します!」
「帰ろ~」
「帰りましょう」
「主君、帰宅ですね!」
五人の擬神たちも続く。
その光景を見て咲夜が笑う。
「相変わらず賑やかだね~」
「俺もそう思う」
「ははは!」
再び笑いが起こった。
そして。
生徒会室の灯りが消される。
扉が閉まる。
今日の生徒会活動は終了した。
廊下を歩く。
夕暮れの校舎。
部活動帰りの生徒たち。
窓から吹く風。
平和な時間が流れていた。
校門を抜ける。
レンたちはいつもの帰り道を歩く。
ソレイナはレンの隣。
ユシルはふわふわ浮きながら移動。
アヤネは静かについてくる。
フリートは周囲を見回しながら歩き。
アイナは興味津々で辺りを観察していた。
「あれは何ですか?」
「コンビニ」
「あれは?」
「自販機」
「あれは?」
「電柱」
「あれは?」
「犬」
「あれは?」
「猫」
「あれは?」
「空」
「なるほど!」
ものすごい勢いで学習している。
レンは少し笑った。
「忙しいな」
「知識収集は大切です!」
「そうか」
アイナは満足そうだった。
そんな会話をしながら歩き続ける。
やがて住宅街へ入る。
見慣れた景色。
見慣れた道。
そして。
神代家が見えてきた。
アイナが目を輝かせる。
「主君」
「ん?」
「ここですか?」
レンは家を見上げる。
そして少しだけ笑った。
「そうだ」
夕日に照らされた家。
帰る場所。
みんなで帰る場所。
レンは静かに言った。
「俺の家だ」
アヤネが微笑む。
「入りましょう」
フリートも嬉しそうに頷く。
「はい!アイナちゃんにも見てもらいたいです!」
ソレイナも優しく笑った。
「そうですね」
ユシルは両手を上げる。
「しゅっぱ~つ~」
五人が元気よく声を揃える。
「オー!!!」
レンはそんな姿を見て思わず笑った。
最初はソレイナ一人だった。
そこからユシル。
アヤネ。
フリート。
そしてアイナ。
気付けば賑やかになったものだ。
だが悪くない。
むしろ。
心地良い。
レンは玄関へ向かいながら扉を開いた。
「みんな揃って帰宅だ。……ただいま!」
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