第百話 生徒会室の午後
神代レンが生徒会室の扉を開けると、見慣れた光景が広がっていた。
大きな机。
積み上げられた書類。
窓から差し込む午後の日差し。
そして、生徒会の仲間たち。
天城修也はすでに席に座り、書類へ目を通している。
氷室凛も静かに資料を整理していた。
月影詩乃は本を読みながら何かを書き込んでいる。
朝比奈咲夜だけは机へ突っ伏していた。
「よし、来たね。」
修也が顔を上げる。
「おう。」
レンが席へ向かう。
その後ろを擬神たちもついてきた。
ソレイナ。
ユシル。
アヤネ。
フリート。
咲夜が顔を上げる。
「レン~!助けて~!」
「何だよ。」
「書類が終わらない~!」
「知らねぇよ。」
「冷たい!」
凛がため息をつく。
「さっきから遊んでいるからでしょう。」
「遊んでないもん!」
「机の下でゲームしていたわよね。」
「うっ。」
見事に言い当てられたらしい。
咲夜は固まった。
レンは思わず笑う。
「自業自得だな。」
「ひどい!」
修也も苦笑している。
「まぁまぁ。今日はそこまで量も多くない。」
そう言いながら数枚の書類をレンへ渡した。
「これを頼む。」
「了解。」
レンは席へ座る。
ソレイナが後ろから覗き込む。
「主様、お手伝いしましょうか。」
「いや、大丈夫だ。」
「ですが。」
「学校の仕事くらい自分でやる。」
ソレイナは嬉しそうに微笑んだ。
「流石です。」
その隣。
ユシルは窓際でのんびりしていた。
観葉植物へ話しかけている。
「元気~?」
葉っぱが揺れる。
「おぉ~元気そう~」
「何してんだあいつ。」
レンが呆れる。
アヤネが肩をすくめた。
「いつものことです。」
フリートも苦笑する。
「植物さんと会話してますね。」
「できるのか?」
「できてる気になってるだけじゃないですか?」
「なるほど。」
レンは妙に納得した。
しばらくして。
生徒会室には紙をめくる音だけが響く。
意外と静かだった。
そんな中。
修也がふと口を開く。
「そういえばレン。」
「ん?」
「最近の訓練はどうだい?」
レンは少し考える。
右腕を見る。
服の下。
そこには炎の紋様が存在している。
「前よりは慣れてきた。」
「炎も扱えるようになった?」
「あぁ。」
「それは良かった。」
ソレイナも嬉しそうだった。
「主様は毎日努力しておりますので。」
「ソレイナ。」
「事実です。」
修也が笑う。
「努力できる人は強くなる。」
凛も頷く。
「継続は大事よ。」
詩乃も本から顔を上げた。
「うん。」
レンは少し照れ臭くなる。
そんな空気をぶち壊したのは。
もちろん。
朝比奈咲夜だった。
「そうだ!」
全員が振り向く。
「今度みんなで遊びに行こうよ!」
「急だな。」
「いいじゃん!」
「仕事は?」
凛が聞く。
「終わらせる!」
「本当に?」
「たぶん!」
「信用できないわね。」
即答だった。
生徒会室に笑いが広がる。
咲夜はむくれる。
「みんなひどい!」
「普段の行い。」
詩乃が一言。
「詩乃まで!?」
レンも吹き出した。
午後の時間は穏やかに流れていく。
敵も現れない。
事件も起きない。
ただ仲間たちと仕事をして。
雑談をして。
笑い合う。
それだけの時間。
だがレンは思う。
こういう時間こそ大切なのだと。
しばらくして。
修也が時計を見る。
「よし。今日の分は終わりだ。」
「終わったぁ~!」
咲夜が両手を上げる。
「最初から真面目にやればもっと早かった。」
凛が言う。
「それは言わない約束!」
「約束した覚えはないわ。」
また笑いが起こる。
ユシルがふわふわと近付いてきた。
「終わった~?」
「あぁ。」
「じゃあ帰る~?」
「そうだな。」
フリートも頷く。
「今日は夕日が綺麗ですよ。」
窓の外。
空は橙色へ染まり始めていた。
ソレイナが静かに空を見る。
「平和ですね。」
その言葉に。
誰も否定しなかった。
修也が微笑む。
「平和だからこそ守る価値がある。」
凛が頷く。
詩乃も静かに本を閉じる。
咲夜は大きく伸びをした。
レンは仲間たちを見る。
生徒会。
擬神たち。
友人たち。
少し前までは想像もしなかった日常。
だが今は。
この場所が居心地良かった。
「よし。」
レンが立ち上がる。
「帰るか。」
「はい、主様。」
「帰ろ~!」
「了解です。」
「主さん、行きましょう!」
夕日に照らされながら。
神代レンたちは生徒会室を後にした。
賑やかな笑い声を響かせながら。
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