第九十九話 いつもの学園時間
俺は神代レン。普通の高校生――だった。
だがスキル《神核生成》によって炎の擬神ソレイナと出会い、普通の日常は大きく変わった。
さらに自然の擬神ユシル、操りの擬神アヤネ、海洋の擬神フリートが仲間となり、今では生徒会の一員として異能学園高等学校に通っている。
朝食を終えた俺たちは学園へ向かい、校門をくぐった。
朝の校舎には生徒たちの声が響いている。
教室へ向かう途中も特に事件は起きなかった。
それだけで少し安心する。
最近は色々ありすぎたのだ。
教室へ入るとクラスメイトたちが思い思いに過ごしていた。
窓際で話す者。
机に突っ伏している者。
宿題を慌てて終わらせている者。
いつもの光景だ。
席に座るとソレイナたちも近くへ集まる。
ソレイナは静かに周囲を見回し、アヤネは椅子に腰掛けながら本を読んでいる。
フリートは窓の外を興味深そうに眺めていた。
そしてユシルだけは――。
「ふわぁ~……」
朝から眠そうだった。
「まだ眠いのか?」
「眠いよぉ~……」
「お前ずっと寝てただろ」
「もっと寝れるも~ん」
そう言って机へ突っ伏す。
相変わらずだ。
そんなやり取りをしているうちにホームルームが始まり、一時間目が始まった。
授業は数学だった。
先生が黒板へ次々と問題を書いていく。
俺はノートを取りながら真面目に授業を受ける。
隣ではアヤネが静かに内容を見ていた。
「主殿」
「ん?」
「簡単ですね」
「お前基準で言うな」
「?」
本気で不思議そうな顔をしている。
擬神たちは基本的に頭が良い。
そのため授業内容程度なら簡単に理解できてしまうらしい。
二時間目。
三時間目。
授業は順調に進んでいった。
途中、窓の外から風が吹き込む。
その風を受けたユシルが嬉しそうに笑った。
「気持ちいい~」
「ちゃんと授業受けろ」
「受けてるよぉ~」
本当だろうか。
少し怪しい。
やがて午前最後の授業が終わる。
昼休みだ。
教室中が一気に賑やかになる。
椅子を動かす音。
談笑する声。
弁当箱を開く音。
俺も鞄から弁当を取り出した。
母さんの作ってくれた弁当だ。
蓋を開ける。
卵焼き。
唐揚げ。
野菜炒め。
白米。
どれも美味そうだった。
「いただきます」
ソレイナたちもそれぞれ集まってくる。
ソレイナは弁当を見て目を輝かせた。
「今日も美味しそうですね」
「母様の料理ですからね」
アヤネも頷く。
フリートも興味津々だった。
「主さんのお母様、本当に料理上手ですよね」
「確かにな」
俺は唐揚げを一口食べる。
うまい。
自然と笑みがこぼれた。
その横ではユシルが卵焼きを見つめている。
「主~」
「なんだ?」
「一口~」
「自分の分食べろ」
「えぇ~」
不満そうな顔。
だが次の瞬間には自分の弁当を食べ始めていた。
切り替えが早い。
昼休みの時間は穏やかに過ぎていった。
最近は修行も増えた。
戦いも増えた。
だからこそ、こういう平和な時間が少し嬉しい。
食事を終えた後は教室で少し休憩する。
窓の外では運動場を走る生徒たちが見える。
風が木々を揺らしていた。
ユシルはその様子を見て嬉しそうに笑う。
フリートは空を眺めている。
アヤネは本を読んでいる。
ソレイナは静かに俺の近くに立っていた。
「平和ですね」
ソレイナがぽつりと呟く。
「あぁ」
「こういう日々も好きです」
「俺もだよ」
戦いのために強くなる。
それは必要だ。
だが守りたいのはこういう時間なのだろう。
俺は改めてそう思った。
やがて午後の授業が始まる。
そして授業は順調に進み――。
気付けば放課後になっていた。
教室には帰り支度をする生徒たちの姿。
俺も鞄を肩に掛ける。
生徒会の仕事があるため、そのまま帰るわけにはいかない。
「行くか」
「はい」
ソレイナが頷く。
アヤネも本を閉じた。
フリートも立ち上がる。
ユシルだけ少し伸びをしている。
「ん~~」
「お前授業中寝てただろ」
「寝てないよぉ~」
絶対寝ていた。
そんな気がする。
俺たちは教室を出る。
夕方の廊下は少し静かだった。
窓から差し込む橙色の光が床を照らしている。
生徒会室へ向かう道。
慣れた廊下。
慣れた階段。
何度も歩いた場所だ。
それでも毎日少しずつ違う。
今日もまた平和な一日だった。
だからこそ、このまま何事もなく終わってほしい。
そんなことを考えながら――。
俺たちは生徒会室の扉の前へ辿り着いた。
「さて」
俺はドアノブへ手を掛ける。
「今日の仕事、頑張るか」
ソレイナたちが頷いた。
そして俺は、生徒会室の扉を開いた。
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