肉体と魂
僕が困惑していると、彼が話し始めた。
「まあ彼女の今の状況は少し特殊で、何らかの生物が寄生しているような状況でなければ説明がつかない。
少し難しい話になる。場所を移そうか。」
彼に誘導されて会議室のような場所に移動した。
「さて、まずは人間の話をしよう。
旧時代、人間において個人が定義されているのは魂と肉体にあると考えられることが多い。
だが、医学が進んだ現在において魂のありかとされる脳が肉体に代わって重要視されることが増えた。
さらに、魔力が発見されてからは加えて魔力が注目される。
魔力の性質は変化するものの、魔力によって個人を特定できる。
まあ指紋や声紋みたいなものだ。
彼女からは本来1人につき1つであるはずの特徴が2つ見られる。
分かりやすく個人を見分けられる方法だが、これは人間とそれに近しい種族の特徴だ。
人間以外にはこれらが適用できない種族もいる。
お前が知っている竜は、同じ魔力であれば他の記録がどうであろうと同一個体とされている。
竜は自然に生まれていつの間にか新たな個体に世代交代をするのだが、肉体に縛られることがない。
その証拠に、従来のイメージ通りの竜の体と人間に近しい体を持っている。
おそらく天使も同じような生態をしているんだろう。」
そう言って、彼は天使に話を振った。
「そうですね。私たちは普段肉体といえるようなものを持たず、精神を情報として魔法で維持しています。
私たちの世界ではこちらよりも魔力濃度が濃く、魔法を使い続けても問題がありません。
こちらの世界に来るときに使った外殻は、あくまで外敵に備えたものです。
物理的な干渉力を普段は全く持たないので有事の際に備えているのです。
おそらくなぜこの体を借りているのか気になっていると思うので説明します。
私たちはこちらの世界から侵攻を受けたと思い、外殻をまとって反撃に出ました。
もちろん反撃に対する反撃をもらったわけですが、その時に不覚にも外殻に大きなダメージをもらいました。
そのままでは外殻が崩れ、精神を維持できず消滅してしまうそう思った時でした。
私の仲間とは違う何者かから逃げるこの体の持ち主に会いました。
この体の持ち主は逃げる際に大きなけがを負わされたようで、ひどい出血で倒れている私に気が付かないようでした。
肉体的な限界を迎えて死にかけている元の持ち主と体が崩れかけて死にかけの私。
互いに生き残る手段は一つ、この体に私が入ったうえで回復することだけでした。
そもそも外殻を捨てること自体が命懸けなのに、回復を成功させなければならない。
それでも互いに賭けに勝たなければ、待っているのは死だけ。
だからこそ互いに生き残れる可能性に賭けて賭けに勝った。
いまだに元の持ち主の精神は回復していない、いま私がこの体を離れれば私も彼女も1分と持たずに死ぬだろう。
私は元の世界に戻る手段を見つけ、この体の持ち主が回復しきるまでは使わせてもらうという契約をした。
そういうわけだからこの体を離れるわけにはいかないんだ。」
重要な回かもしれない
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