彼の過去
話にひと段落がついたのでお茶を入れる。
外は陽が落ちかけて、道の街灯が人の行き交いを助ける。
一息付いてから彼が話を再開した。
「それから暫く平和な時をこの国は過ごした。
竜は生命のサイクルが長い生き物で、生殖活動に積極的じゃない。
それでも平和な時代が続けば多少は個体数が増加する。
この時代に起きた変化は主に3つある。
1つは政治の方法が変わった。
二匹の龍が自分たちが万が一いなくなった時に備えて政治を変えようと試みた。
竜には時間があったためいろいろな政治体制を敷いて実際に変化を見ることでより良い政治体制を引いた。
これには絶対的な力を持った存在がいたこともあって、暴走するような愚かなものがいなかった。
今は直接民主主義になった。
個々の力が大きい竜にとっては一番合ったものでここ最近は変えていないらしい。
2つ目は娯楽と言えるものができた。
闘争のための探求ではなく平和な時代の時間の使い方を求めたと言う事だろう。
竜の探究心や向上心が高い種族という特徴も合わさって一気に発展した。
より優れた娯楽を作り出した者、遊戯においてより優れた者が注目の的になり始めた。
それこそ力が秀でる者と肩を並べるくらいには。
3つ目は龍が表舞台から降りた。
そのための政変だった事もあって隠居生活を試みた。
それでも影響力は個別に持っていたものだった事もあり居所のない者の拠り所になったりした。
竜はその性質が近い竜と群れることが多い。
普通は両親と同じような性質を持つ竜が生まれるが、突然変異と言うべきな竜が生まれることがある。
そう言った竜達が独り立ちできるまで見守ることをしている。
白と黒で正反対でありながら、それをうまく生かした行動だったと自称していた。
むしろ真に反対だったからこそぶつかりながらも夫婦にまでなったのだろうな。
50年前に再び異世界の扉が開いた事で平和な時代が終わった。
前回の反省から早期に対応することができた。
だがそれがある種の間違いだったのかも知れない。
以前の侵略者と違い今回の異世界人は来訪者とでも言うべき存在だった。
以前と同じ非魔法武器による武装を持った訓練された集団。
前回の襲撃を知っているからこそ先制攻撃に出た。
当然反撃をもらうが、竜の巨体と鱗の前に重火器なんて役に立たなかった。
そう、今回の異世界人とは日本の自衛隊だった。
完全に一方的な蹂躙だった。
対話なんて言葉は竜側には存在しなかった。
それ以来人間側からの訪問者は訪れなかった、15年前までは。
この世界と日本をつなぐ扉は閉じる事なく開き続けていた。
15年前、ある夫婦がこの国にやって来た。
より正確に表現するなら逃げてきた。
最初に駆けつけたのは二匹の龍だった。
すでに政治的には一線を退いていたが、戦力としては未だ劣ることはない。
二匹が駆けつけた頃には父親の方は倒れており、母親も重傷だったそうだ。
母親は最後の力を振り絞って二匹に子供を託したのちに亡くなったそうだ。」
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