25. 忘れられない情景
次の日、三人で魔結晶採取の依頼をこなした帰り道である。
広大な大地。太陽はお昼時を差し、気候も安定。そよ風に拭かれながらユウリたちは昼ご飯を食べて束の間の休憩を取っていた。
ユウリは少し離れて、草原に咲く二輪のユリの花を見ながら絵を描いていた。本格的な道具まで揃えて、演出を加えるためにわざとユリの花に水をかけながら。
そんなユウリを、セシリアとラリアは眺めていた。
「冒険のほかに今度は絵ですか」
「ユウリって多彩だよね。なんでもできちゃうって感じ」
「本当に、私たちと組んでくれている理由が不思議でならないです。下手をしたらたった一人で迷宮を踏破してしまうんじゃないかと思ってしまいます」
「それに関してなんだけど、前に聞いたことあるよ」
「そうなんですか? ユウリはなんと?」
「なんかね。『あはは、無理に決まってんでしょ。魔力が持たん持たん』って」
「それ、ユウリのマネですか……」
えへへ、と笑うセシリアに呆れて笑うラリア。
「でも、そうですか。ユウリにも無理なことはあるんですね」
「なんでもできちゃうから、そう思っちゃうよね」
「きっとユウリには、私たちとはまた違った苦労があったに違いありませんね」
「ねっ」
ラリアたちは自分の過去に更け、ユウリの背中を見つめた。二人で顔を合わせながら微笑し、立ち上がってユウリのところに向かう。
「なーに書いてるの?」
「ん? 百合の花だよ。ほら、あそこにあるやつ」
セシリアの言葉にユウリは二輪の百合を指差した。
「どれどれぇ」
「あんまり見られたくないんだけど、絵が下手のがバレちゃう」
恥ずかしそうに照れるユウリだが、べつに嫌というわけではなさそうだ。
「ええ、余計気になる」
「ぜひ、どんな感じなのか見せてください」
セシリアとラリアの二人はユウリを挟んで左右から絵を覗きこんだ。
その絵は、けっしてユリの花ではなかった。
剥かれて上裸となったセシリアを貪るように舐めるラリアの姿そのものだった。
汗ばみ、絹のような肌が赤みを帯びさせ、荒い息をしながらラリアを受け止めるセシリアと、虚ろな目で、まるで赤子が母乳を欲しがるように無心で舐めるラリアの図。
ユリとは、そっちの百合だった。
「「うああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」
顔を羞恥で真っ赤に染めたセシリアとラリアの二人は叫んだ。
セシリアは絵を強奪し、ラリアは大杖でユウリの頭部を殴った。
「ななな、なんてものを描いているんですか! あなたは!」
ラリアは絵とユウリを交互に見ながら叫んだ。
「私、こんな顔、して……、~~~~っ!」
セシリアはその絵をまじまじを見つめながら沸騰していた。ラリアは変な汗をかき始めたのを感じて絵をセシリアの手からひったっくって破り捨てた。
「わぁぁぁぁぁぁ!? なにすんだよ!?」
「それはこちらの台詞です! なんで描いたのですか!?」
ラリアは顔を赤らめたままユウリの胸倉を掴んだ。
「なにって百合を描いていたんだよ」
「どうしたらユリが私たちになるんですか!?」
二輪のユリの花を指差しながらラリアは問い詰めた。
「え?」
「なんですか、その『なに言ってるの?』って顔は!? どう脳内変換したんですか!?」
ユウリの胸倉を掴んで、ぶんぶん、と振るラリア。龍人族ということもあり、筋力は剣士顔負け。魔法職でもユウリの脳をシェイクするには十分だった。
「あのとき二人の姿を見た時から胸の高鳴りが忘れられないんだ。女の子同士の濃密な絡みが、こんなにも綺麗で美しいものだったなんて。ガールズラブ! 人々はそれを花にたとえ、百合と呼んだ! 見てくれ。あの二輪の迎え合うように咲くユリの姿を! まるであの日の二人ようだ! だから描かせてくれぇ。この感動を、あの情景を形にグエェッ!?」
ラリアのチョークスリーパーがユウリに決める。
「私たちじゃなくてもよかったじゃないですか!」
「ぐ、ぐるぢぃ! しんじゃう!」
「その時はそのときです! 召されてください!」
こうして、ユウリは初めて締め落とされたのだった。
後日。ラリアのいない間、ユウリの耳元で顔をほんのり赤らめるセシリアは囁いた。
「絵はとても綺麗だったから……、その、恥ずかしいけど、目の届かない場所で描くならとやかく言わない。それと、あんまりえっちじゃなければいいから」
「マジで!?」
「恥ずかしいのは変わらないんだからね」
「ありがとう! 完成したら画集にしてセシリアにあげるから!」
「いい、いいって! お気持ちだけでいいから!」
……。
結局もらった。
「セシリア。なにを読んでいるのですか?」




