24. 代用
後日、この欲求をどうにかしたいらしいラリアが、ユウリに相談しにきた。
このままでも支障はないだろうが、セシリアに負担が向かうのは彼女自身も避けたいようで、セシリアを除いた二人で話し合った。
結果、代用品を探すことになった。
欲するようになるのは良質な魔力を含んだ、口を使って摂取できるもの。なら食材とかはどうだ、ということで二人でバザールに来た。
「人がいっぱいですね」
「……、食べちゃダメだよ?」
「私はドラゴンじゃありませんよ」
せっかくの男女二人の買い物。デートと言っても過言ではない。しかし、その装いは普段の冒険者コーデ。とてもデートとは程遠い。まあ、意識していなかったからユウリにはどうでもいいことだったが。気を取り直して、セシリアの代用を探して見て回った。
「魔力を含んだものとなると、やはり魔物の肉がいいんでしょうか?」
「そうだともかぎらないよ。錬金術で作った魔法の飲料水とか、あと……」
「あと、なんですか?」
「すまん。最後のは口から出まかせだ」
ユウリは誤魔化した。セシリア以外の種族を舐め舐めしよう、とか言って、サキュバスや魔女をひっかけよう、とはさすがに提案できなかった。
「ミルクぅ、ミルクはいかがですかぁ?」
ふと、露店で声を張って客寄せしている女性が目に入る。獣人、それも牛人と呼ばれる種族だ。牛耳が特徴的でデフォルトで胸と尻がデカい。ボンッキュッボンだ。
すごいよ。胸部でタプンタプンいってるよ。ダイナマイトボディだよ。
なぜか白と黒の牛柄のビキニの姿だが、客引きのためと推測して、テーブルに置かれているのは牛乳の入った三〇〇ミリリットル瓶だった。
「あっ、そこのカップルさん。どうですか? 牛娘印の牛乳」
目が合った牛人族の女性に二本の牛乳瓶を差し出される。「どうしますか?」と尋ねるラリアに「せっかくだからいただこう」とユウリはいってお礼をいって頂くことに。
一気にグイっと呷るユウリとラリアの二人。ジャージー牛を彷彿とさせる濃厚で甘く美味しい牛乳の味が口いっぱいに広がる。まあ、牛乳というより、知っている牛乳に違い味わいと言ったほうがいいだろうか。
「……、」
先に飲み干したユウリは、瓶をじっと見つめ、次に牛娘のほうを見やる。
「お子さん。おいくつですか?」
「一番下の子が今年で八歳になりますぅ」
雰囲気がふわふわして、おっとりとしている牛娘は頬に手を当てそう言った。
「消費とか大変そうですね」
「そうなんですよ。うちの子たち八人いるんですけど、あまり飲んでくれなくて。余らすくらいなら、とこうやって露店で売っているんです」
頑張ってるな、と思いながらユウリは会話を続ける。
「へぇ。そうなんですね。いちよう聞きますけど、許可は取ってありますか?」
「もちろん。ちゃんとミルクの評価も貰っていますよ。なんと三ッ星です」
「すごいですね。お世話をしながらだと大変でしょ」
「味にも影響がでちゃいますからね」
ユウリたちが世間話をしている隣で、ラリアは目を輝かせながら飲み干した。
「これ、すごく美味しいです! 品種はなんでしょうか、ジャージー牛にも似ていますが、牛とはまた違う動物のでしょうか。すごく満たされる」
「気に入っていただけてなによりです。もう一本いかがですか? 今度は有料になっちゃいますけど、美味しさはそのままです」
「買います」
ラリアは牛娘からもう一本もらった。そして、一気にそれを飲み干した。
「どうだ? 体のほうは?」
「そうですね。とても満ち足りた感じがします。とても良質な魔力を含んでいます」
その牛乳は、まさにラリアがセシリアの代用として求めていた物であった。
「すみません。これ二ダース買います!」
「お買い上げありがとうございます。よければですが、定期購入契約していただければ配達もできますよ。それと同時に回収した瓶の二〇パーセントの割引もしていますよ」
「それでは、それもお願いします」
ラリアは目的の代物が発見できて満足していた。
そのミルクの正体はさておき、ラリアの問題は案外簡単に片づいたのだった。
「なるほどぉ。なら卵もいけるな……」
「なにか言いました?」
「いいや? それよりもこれで一件落着。案外簡単に片づいたな」
「ん? はい。もっとこういう場所で探しておけばよかったなぁ、という思いです」
「セシリアがいたからあまり焦ってなかったんじゃない?」
「そうかもしれません。セシリアの優しさに甘えすぎてたのかもしれませんね」
ラリアは微笑して、ユウリに顔を向ける。
「日々のお礼に、セシリアになにか買っていきたいのですが、一緒に回ってくれませんか?」
「いいぞ」
ラリアのお誘いにユウリは快く承諾した。
「それにしても、この牛乳はなんの品種なのでしょう? ユウリはわかりますか?」
「わからん。美味しければそれでいいんじゃない?」
「そうですね。美味しければなんの牛乳でも結果オーライです」
とても、セシリアから牛娘に変わっただけ、なんて言えないユウリだった。




