94.大丈夫よりも、これからのこと
2組は元気です。
ルカはダリアをお姫様抱っこで走っていた。
本当にお姫様なので、お姫様抱っこだ。
と言うか、建物の屋根をスタスタ走っていた。
「うわぁ!」
「大丈夫?」
途中なんとかジャンプするときもあった。
しかし、そんなルカにダリアは少し心配症だった。
「あ、あの。本当に大丈夫なんでしょうか?」
「何が」
「ルカさんのお友達の皆さんです。相手は、本気で殺しに来ているんですよ」
「だろうね。でも心配はいらないと思うよ。皆んな強いから」
ルカは微塵も心配していなかった。
あの程度の相手、二人になら余裕で跳ね返せると確信していたからだ。
しかしダリアの不安は募るばかり。それもそのはず、敵の狙いが王族で、この国を転覆させるために動いていたからだ。
「ルカさんは、この騒乱は、王国の転覆を狙った相手の仕業。私が昔倒した人たちの生き残りだと思いますか?」
「可能性はあるかもね。でも大丈夫、この国はそう簡単に壊れないから」
「でも、人の信頼は脆いと教わりました」
「あはは。それはそうかもね。信頼を勝ち取るのは難しくて、脆く崩れやすい。それでも、一つだけこの国は違うことがあるよ」
「な、なんですか?」
「それはね、この国が他の国と違って、絶対的な信頼感の集った元にあることだよ」
ルカはそう答えた。
ダリアは首を傾げたまま、そんな中で、一番安全で、一番最短な空を駆けた。
※※ ※ ※ ※ ※ ※
会場では、最終競技が開始されていた。
あれだけぎりぎりだった二組は、なんと一組との決戦に臨んでいた。
それもそのはず、二組は最初から本選に向けて動いていた。何せ、個性的なメンバーの覆うクラスだ。それだけ、個人としてのポテンシャルは負けていなかった。
「まさかここまでボロボロになるなんてね」
「悪い。でも、一応勝ったぜ」
「うん。怪我が酷いけどね」
「まあ大丈夫だろ。俺は体丈夫だしな」
「それは違うと思いますけど」
二組の剛腕、ギルレスは左腕を怪我しながらも、何とか先鋒戦を勝利で納めた。
これで次に繋がった。
それだけで満足だった。
「それで、次は誰が行くんだ?」
「次は僕だね。とは言っても、問題次の大将戦だよ。まさかシルヴィアが怪我をするなんて」
「魔力切れで戦えないんでしょ? 肝心の大将戦で、そんなことになったら、次で勝たないと駄目よ」
「でも次は、スプラ・ブルーウェブだよ。流石に勝てる気がしないよ」
などと諦めむードが漂っていた。
しかし、そんな彼らに担任はこう言った。
「なに言ってるんのかなー。学生同士、しかも安全を考慮して結界も張られているんだよ。たとえあの、家の人間でも、全力は出せないよー。ふはぁー」
「「「ニッカ先生!」」」
いつも寝ていて、まともにクラスに来ないのに今日は来ていた。
代わりにノーブル先生はいなかった。
何でも、警戒態勢が強まって駆り出されているらしい。
「スプラ・ブルーウェブ。確かに強力な、血統魔術を持っているとはいえ、勝てない相手ではないだろうー」
「そうは言っても。流石に相手が相手すぎて」
「ぶっちゃけ勝てる気がしないんですけどー」
完全に項垂れていた。
しかし、そんなクラスに渇を入れた。
「ルカは勝ったんでしょ」
「「「あっ!?」」」
「だったら勝てない相手じゃない。それを証明してみせたじゃないかー」
などと言って煽り出す。
しかしそれもそうだとクラスメイトはやる気に満ちた。しかしニッカは知っている。ルカが他の生徒とはわけが違うことを、昔から知っているからこそ強いのだと。でも、クラスの他の子からしてみれば、少しは他と違うだけで、何が違うわけでもないと思っているのだろう。
とは言っても、何人かは単純ではない。
「とは言っても、僕たちで勝てるのかな」
「勝てる勝てないじゃない。とにかくやってみるだよー」
「とは言っても、次の大将戦。本当に一体誰が出るんですか?」
そう尋ねた。
まだ誰が出るのか聞いていないからだ。しかしシルヴィアが出られない以上、他に勝ち目があるのは難しい。
けれどニッカはこう答える。
「心配しなくてもいい。とりあえず言えるのは、ここにいない生徒が出るというだけー」
「ここにいない? それって、ライラックとかですか?」
「違う。でも校長のお墨付きではあるよー」
「お墨付き? もしかして、ルカが」
「それも違う。でも安心していいと思うんだぁー。何故ならー、今日は来月から転入する生徒が、先駆けて参加するからだよー。きっと何とかなるのかもしれないねー」
「「「えっ!? なに、その新情報」」」
クラスは湧いていた。
呆れや不信感ではない。
このクラスは呑気で柔らかいので、そんな仲間割れのような虚無感はなかった。それがこのクラス、三年二組の凄まじいポテンシャルだった。
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