78.ダリアの過去①
タイトルが変わりました。
結局こういうところあるよね。
そこは時計塔だった。
瞬く間にルカはダリアを連れてここまでやって来た。
「うわぁー!」
ダリアは大喜びだった。
本来ここまでは歩いてこなくてはいけない上に、立ち入りできるような場所じゃなかった。
しかしルカにはそんな束縛は効かず、風の魔術、《サイクロン》を使うことで、一瞬で飛んできたんだ。
けれど、お祭り騒ぎの町中からここまで来られたにも関わらず、誰にも気づかれないのは、ルカの腕がいいからだ。
「よかった。こんなことで喜んでもらえるなんて」
「すっごく綺麗ですよ、ルカさん」
「そうだね。この時計塔は、危ないから普段は解放されていないんだけど、ただでは来られないから警備もいない。そのおかげで、ここからなら町が一望できるみたいなんだ」
「本当に綺麗です。私、こんなに町を一望したことなくて……」
少し暗くなった。
ダリアの顔色が何故かはわからないが、微妙に曇ってしまう。
それをチラ見したルカはふとダリアに質問を投げかけた。
「ねえダリア、ダリアは誰かと一緒にここに来たの?」
「うっ!? は、はい……」
「そっか。その人ってお母さん?」
「お母さんと、護衛のメイドさんです」
「護衛? メイド? ってことはダリアは貴族なんだね。うーん、この運動会はこの国では有名だから、たくさんの貴族が来るみたいだけど、ダリア、一つ聞いてもいい?」
「な、なんですか?」
「ダリアのお母さんって、女王陛下だよね」
ルカはぬるっと聞いた。
するとダリアの表情が余計に曇る。
冷汗がこめかみから流れ出し、顔が全体的に赤らんだ。
まるで聞かれたくないことを聞かれてしまったみたいな。それこそ、ルカの狙いはそこにあった。
「その反応、本当なんだね」
「は、はい……」
「そっか。ふーん」
「あ、あの!?」
ダリアは勇気を振り絞って声を上げた。
するとルカはスッと首を傾げると、ダリアの顔色を見た。
その表情は決意したみたいだった。
「ル、ルカさんは私のことを連れ戻すんですか?」
「連れ戻す? ううん。私はそんなこと頼まれてないからね。連れて行ってほしいんだったら、会場までは送るけど」
「ル、ルカさんは変わってます。私がこの国の王女だって知っても、平然としていて……普通なら、私を利用すると思うんですけど」
「利用? そんな野暮なことはしないよ。興味もないから」
「ほえっ!?」
ダリアは驚いて声を上げてしまった。
そんな反応をされるなんて思わなかったからだ。
これまでずっと先生としか話してこなかった。
だからこそ、こうして話す人の言動が自分の意見と異なっていて、驚きの連続だった。何せ、ルカは普通のタイプじゃないからだ。
「それに私はそんなことのために君を連れ回してたわけじゃないよ。単に観光で色々案内してあげてただけだからね」
「どうしてそんなに優しいんですか」
「優しい? うーん、私は普通のことをしているだけだよ」
「で、でも。私は……」
ダリアは心を曇らせる。
溜め込んできた心のダムが決壊しそうになったんだ。
しかしダリアの小さく握った指先を見て、ルカは声をかける。
「ダリア。その反応、何かあったの?」
「うっ」
「話したくないことなのは、見ていてわかるよ。でも、私はダリアのことを知らないから、聞いても悪いことはないと思うんだ。だから、できれば気軽に話してほしい。大丈夫、私はダリアのことを嫌いにならないから」
そう語りかける。
口調は優しく、そして何処か懐かしむような語り口調に、ダリアの心は揺らめいた。
するとぽつりと話し始めた。
その話の切り出し方は、ルカの想像を超えていた。いや、聞いても動じはしなかった。
「私は、人を殺したんです」
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