100.炎の剣姫②
記念すべき100話目はダリア姫を読んでください!
ゴロゴースは反射的に避けてしまった。
打ち込んで来いとは言ったものの、いざ対峙すると、そのあまりの凄まじさに体が悪寒を発してしまい、勝手に避けていた。
見れば筋肉が収縮している。
「な、なんだ今の威圧感は」
「剣を振るう時は、自分に正直に。倒すべき相手を見定め、敬意を持ってその刃を振るえと、先生に教わったんです」
「先生? なるほど、多少なりとも剣に心得のある者から終わったということか。これで納得がいった」
ゴロゴースは自分が恐れたものは、剣の師匠の念だと思い込んだ。
しかしその考えは極めて甘く、油断こそが、最も愚かであった。
そのことを一番理解していると錯覚していたからこそ、ゴロゴースは余裕になっていた。
「今度こそ打ち込んで来い。錬成魔術は無詠唱らしいが、その程度俺にもできる」
そう言って、ゴロゴースは両腕をクロスさせた。
瞬く間に、両腕に石の欠片が集まっていき、両腕が武装される。
一回りも大きい、土のプロテクターで覆われていた。
「これならいくら打ち込まれても、痛みはない。存分に打って来い。そして俺を楽しませてくれ」
「わかりました。では、行きますよ!」
ダリアはその場から高速で移動した。
身体強化。《ブースト》の魔術を全身に掛けたのだ。
しかしあまりに発動までが早い。如何やらあの剣自体に、最初から魔術を簡易的で掛けていたみたいだ。
(なかなか、面白いことをするね。剣自体に、別の魔術を付与する。そう言えば、そんな剣士がいたね。今も生きているのかな?)
ルカは昔の記憶に、想いを走らせる。
しかし、ダリアは教わったことをただ忠実にこなしているのではない。
その手に持った剣の切っ先を、何故か円形軌道上にして、会場のステージに擦り付けていた。いや、削り取っていた。
「ルカ。あれ何やってるの?」
「多分、魔術を描いているんじゃないかな?」
「魔術を描くだと? そんな真似できるのかよ?」
「知識があればね。そうでしょ。ニッカ先生」
クラスメイトからの質問に、返答した後、すぐさま矛先をニッカに書き換えた。
あまりのレスポンスの早さに、二組内が騒然とする。
しかしそこは流石のニッカだ。簡単に頷いていた。寝ていた。
「切っ先をステージに描く。なるほど、無詠唱の秘密はそれか。ならば、それを阻止してやる!」
ゴロゴースはステージに拳を叩きつけた。
その瞬間、突飛な衝撃で、切っ先が離れてしまい、魔術の構築が終わらなかった。
無詠唱の秘密。それは口に出さない代わりに、魔力の流動性が高いもので、魔術を描くという、かなり原始的な手法だった。
「これで終わりだ。残念だったな」
「ううん。これで囮は終わったんです」
「なに?」
ゴロゴースは避けきれなかった。
目の前にはダリアがいる。
あまりの体幹の良さに加えて、ここまでの卯木気が全て伏線となった。
「まさか、円形の窪みに!」
「そうです。円形の窪みを意図的に作ることで、私の炎を拡散していたんです」
足下から炎が噴き出ていた。
熱されて高温で溶かされたステージはつるつる。
しかもダリアの足元には炎が出てづけ、それこそ爆風を起こしていた。陽炎が見える。
「加速をつけただと。くそっ!」
「せやぁ!」
迷いはなかった。躊躇いもなかった。慈悲もなかった。
その両手で握られた剣は真っ直ぐに振り下ろされる。
ゴロゴースのプロテクターが弾け飛び、その手に残ったのは、「敗北」と言う二文字だった。
「私の勝ちですね。稽古のほど、ありがとうございましたぁ!」
ダリアは礼をした。
相手に敬意を持って、その剣を打ち込んだ、
ゴロゴースは反応して倒れてしまい、青い空を見ていた。今日の空も静かで青い。この静寂が、敗北感であることを悟らされたみたいに、何故か清々しい気持ちだった。
「俺の負けだ」
ゴロゴースの無垢な一言が会場を包み込んだ。
ダリアは剣を消すと、その場からUターンする。
表情には憂いが溢れていた。
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