99.炎の剣姫①
いよいよこっちも100話ですか。
ステージの上には既に最終戦備え、男が一人いた。
彼の名前は、ゴロゴース・レヴィン。
灰色に焼けているのは、日々の修練によるもので、一組最大の近接戦闘要員だった。
「俺の番か、まさかこの俺が出ることになるとはな」
「ゴロー、殺しちゃ駄目だからね」
「無論だ」
「わかっているのかな?」
一組の生徒は心配で仕方なかった。
普段はまともに喋らないのに、こういう時だけは本気だった。
どんな相手にも手を抜かないでおなじみの人だからだ。
「さあー、いよいよ魔術運動会も最後となったぁー! ここまで一歩も退かず、圧倒的な力の差で、ねじ伏せたスプラ選手に続き、いよいよ砦が動く」
そう言って選手紹介が堂々とされていた。
その間、ダリアは選手用の服に身を包み、ステージに躍り出る。
その可憐な姿に会場は困惑して注目する。
「さて、二組は……ん? なんとここで新情報です。如何やら最終戦は、拳と剣の応酬となるようです」
実況もてんやわんやだった。
会場も「あの子誰?」「可愛い子ね」と、きょろきょろしながら話し込む。
しかしもっと困惑している姿が、会場で最も目立つ席で起こっていた。
「えっ!?」
「如何しましたか、女王陛下」
不意に立ち上がっていた。
しかしそれも無理はないことだった。
教頭たちも一斉に視線を向けるが、女王陛下は全く動けなかった。ハッとなった女王陛下が、席に着くまではしばしの時間がかかった。
「い、いえ。何でもありません」
席に着いても尚、女王陛下は困惑していた。
何故なら目の前にはダリアがいるからだ。まさか選手として出ているなんて思うはずもない。
心配で仕方ない。相手は相当な手練れだと、キダチは気づいていた。けれど安心と興奮もある。不安は募る中でも、キダチ・E・スカーレットは未だかつてない高揚感に包まれていた。
(頑張ってくださいね、ダリア。貴女が、その剣を誠に振るうのなら、見せてください)
ゴロゴースはダリアを見つめた。
それは表示抜けした感があったからだ。
その手には、実況が言っていた剣は何処にもない。まさか手刀なのか?
「やめておけ」
「えっ?」
「俺は女だろうが手を抜かない。怪我をする前に、この勝負を下りろ」
「ごめんなさい。それはできないんです。私が私なりに変わるためには、この機会を使うのがいいんです。それに、皆さんからの信頼を裏切るのも嫌何です」
「そうか。だったら全力で来い。俺は逃げも隠れもしない」
「わかりました。それでは、いきます」
ダリアの手に剣が握られる。
詠唱もなしで剣を構築した。
これが錬成魔術。先生から教わった、剣士が剣士であるための魔術だった。
「剣。錬成魔術か」
「はい。私の得意な魔術です」
「そうか。なかなかにいい剣だ。一目見ればわかる」
「ありがとうございます。ですが、この剣は見た目だけではないんですよ」
「それを証明するのは、お前自身だ。いいだろう、面白い。俺に打って来い!」
ゴロゴースは逃げなかった。
それどころか、両腕を広げている。
完全に舐めきっていた。しかしダリアはお言葉に甘えることにしたんだ。
「わかりました、ではいきます!」
「来るなら来い。その後は俺も本気だ!」
ゴロゴースはじっと待った。
全身の筋肉に言い聞かせ、体を硬くする。これで多少は防げると余裕でいたのだが、ダリアの剣は眩く、ゴロゴースに打ち込んだ。
剣の切っ先が向けられた。それにしても、あまりに動作が軽くて速い。洗練された動きに、何故か恐怖さえ感じてしまい、ゴロゴースは避けていた。
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