↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
96/231

小野美佐子の発言

 「だから小野さんがどうやら自分であの動画は本物だって。あの中に居る自分は本当の自分だって言ったって言ってるんです!」


 「……待て待て。漢城。お前も冗談が好きだな。そんなわけないだろ?」


 「私も初めはビックリしました。だけど事実なんです。だから、今の小野さんは怖くて誰も近づいたりしないでずっと一人で教室の中でボーとしてるんです」


 「……冗談じゃないのか?」


 「全く持って冗談じゃないです」


 どういうことだ?

 あの動画は確かに偽物。それは間違いない。だが、今回小野は自分で自分の素の表情を本物だと皆に発言した。

 それを信じろというのか?

 今の今までずっと隠してきたはずの素の表情を曝け出す。その意味が分からなかった。


 「……小野は自分の本性を今まで誰にもバレていないと言ってたよな?」


 「言ってました」


 「それで今回何て言ったんだ?」


 「小野さんが自分で素の性格を曝け出しました」


 漢城は面白い冗談を言うのかと疑うのも不自然は無い気がするのは俺だけだろうか?


 「……あの動画は確かに偽物だったよな?」


 「そうです。私もあの眼鏡の人の言う事は正しいと思います。だから、動画は本物だと思うんです」


 「俺もそう思った。あいつの言っていることは正しい筈だ。まあ、その話はお昼休みにするぞ。放課後は多分これからどうにかして怪盗Xを見つけ出さないといけないからな。お昼休みに時間を取れるか?」


 「私は全然大丈夫です。やっぱり吉条君は助けてくれます」


 「いや、小野を助けるつもりは全く微塵も無いんだが、どうして小野が自分から本性を曝け出す必要があったのか気になる」


 「……そこはかっこよく助けるに決まってるとか言った方が良いと思いますけどね」


 「何時から俺はそんな正義のヒーローになった。小野の事など知らん。取り敢えず、俺の第一優先は今も尚普通に生活している怪盗Xを見つけ出すのが先決だからな。小野の件は確かに気になるが怪盗Xほどじゃない。よって、お昼休みだけ調べる。それでいいな?」


 「はい。絶対に何とかしましょう!」


 漢城は先程まで真剣な表情だったのに、俺が手伝うと言えば一気に表情が変わりやる気に満ち溢れている。

 ……漢城には世話になりっぱなしだからな。これで少しは恩返しが出来ると考えれば安いものなのかもしれん。


 ――――それに今回の小野の動画には何かしら違和感を抱いていたのが一つ分かった気がした。


 お昼休み。


 食事を済ませてから話そうと思ったのだが、漢城がそれでは時間が短いと言う事で何故か一緒に新聞部の部室で食事を取ることになったので、新聞部の部室に移動するのだが、何故か既に漢城がそこにはいた。


 「吉条君遅いです。レディは待たしたらいけないです」


 「何でお前がそんなに早いんだよ。一応授業が終わって普通に来たはずなんだけど?」


 「楽しみでしたから速く来たんです」


 「はいはい。良いから話進めるぞ」


 「スルーするとか酷くないです!?」


 もうお前のその冗談は分かっている。よって聞き流すのが一番良い。取り敢えず話を進めないと何一つ分からないままだからな。


 「解決するんだろ?それで、今まで何か分かったか?」


 「私は小野さんとはクラスが違うので噂程度でしか分かりませんでしたが、小野さんはクラスで一人で過ごしているそうです。小野さん本人が動画が本物だと言ったことで誰もがそれを信じ、小野さんに近づいている人間はいないそうです。今の所苛めに関しての情報は無いですが、もしかしたらこれからまたあるかもしれないです」


 「……この短時間で結構調べたな」


 「それは新聞部の部長と言うのもありますし、私が解決したいと思ってるんです。それぐらいはやります」


 「それは頼りになるが、どうして小野が自分で本性を曝け出したのか、それは分からないよな?」


 「そうです。そればっかりは本人に直接確かめるしか方法は無いです」


 本人に直接か……。

 あの小野が自分から俺達に何か事情を話すようには一切思えない。

 だが、本人に聞かなくても分かることはある。


 「……本人には聞かないといけないのかもしれないが、それよりも前に一つだけ俺達はまるで当たり前の様に受け入れていることがあるんじゃないのか?」


 「何の話です?」


 「どうして怪盗Xは小野の本性を知っているのかと言う話だ。俺達は知った。確かにそうだが、小野は誰にも本性は知られていないって言ってなかったか?なのに、どうして動画を投稿した怪盗Xは小野の本性を知っているんだ?」


 「……た、確かに何ででしょう。今吉条君に言われるまで私も一切何も考えて無かったです。私達は小野さんの本性を知っている。だから、何も思いませんでしたが怪盗Xはどうして小野さんの本性を?」


 「……それが俺は一つ気になった。お前が伊瀬の噂を流したのが小野だと追い詰めた時隠れて聞いてたから知っていると思うが、小野の本性に少しでも気付いたのは黒柿、そしてあの前日に遭った宇治と言う人物だけ。そこから分かるのは小野の本性を知っているのは限られた人間だけだ。これは願望に近いとも言えるかもしれないが、もしかして――――この件で怪盗Xに一気に近づくチャンスかもしれない」



 「た、確かに吉条君の言いたいことは理解出来ます。だけど、小野さんに振られたのは何人もいるんですよ?」


 「そこなんだよな。それが面倒だ。漢城以上にモテているとすれば本当に絞るだけの数じゃなくなってくる」


 ……今日の話を聞いて気になったのが小野の本性をどうして知っているのか?と言う疑問。

 だが、何故だろうか。


 ――――とてつもない違和感とモヤモヤとした気持ちが俺の頭の中で渦巻いている。何を見落としている?

 それが分かれば何か重要なことに気付けるような気がしてならない。


 「どうかしました?」


 「…いや、何でもない。それよりも小野がどうして本性を曝け出したのか、その理由を今から、それとも放課後直ぐ、どちらがいい?」


 「ええ!?聞きに行くんです!?」


 「さっき言ったばかりだろ」


 「私も覚悟はしていますが、まだ心の準備が出来てないです」


 「……なんかそれ繁華街に行くときにも聴いた様な……」


 「さあ行きましょう!吉条君今すぐ行きます!ほら立って!」


 「……?お、おう。急にどうした?」


 「何でもないです!今すぐ行きますよ!」


 突然張り切りだした漢城。急にどうしたんだ?

 まるで……。


 「聞かれたくない事でもあったのか?」


 「……べ、別に無いですけど?」


 魚の様に目を泳がせている漢城。嘘が下手すぎる奴である。


 「お前分かりやすいな」


 「う、うるさいです!こういう時だけ察しが良いとか本当に駄目な人です!」


 「何故貶されるのかさっぱり分からないんだが」


 突然漢城に貶されてしまったのだが、俺は何か悪い事でも言ったのだろうか?

 だが、漢城に尋ねようにもあいつは既に部室を出て手招きしている。まあ、良いか。

 今は小野に話を聞くのが第一優先だ。


 そう言えば、二年の校舎を歩くのも初めてかもしれない。ずっと、自分の教室、もしくは一年の校舎しか歩いたことが無い為少し新鮮だ。

 だが、こんなにも同じ学年の人が居るにも関わらず俺の知っている人間は誰一人としていない。


 まあ、ボッチなので当たり前と言えば当たり前なのだが。


 「――――ほら、着いたぞ。漢城頑張ってこい」


 「……ていうか何で私が行く前提何です?吉条君が行ってくれません?」


 「お前が助けたいんだろ?お前が行くだろ」


 「……吉条君に正論を言われる日が来るとは思いもしなかったです」


 「俺は何時も正論しか言わない人間だから」


 「本当に吉条君は馬鹿なことを言います」


 「良いから入れ」


 「あ!」


 教室の前でうろうろしている漢城だったが、俺が横から扉を開ければ一斉に漢城の方に視線がいく。


 「…あ、あの小野さんいます?」


 漢城が勇気を出して小野を呼んでいるので、俺も漢城の背後に立ち中の様子を見ればすぐに小野に気付いた。

 小野が目立っている。それだけではなく、明らかに小野の周りには人がおらず、明らかに避けられている現状を目のあたりにして分かってしまった。


 小野は漢城の声を聴いてこちらの方を一瞥し、立ち上がって近づいて来る。

 だが、外面モードでもない。本当に俺達と居る時と同じ何処か冷たさを感じさせる目、そして明らかに怖い雰囲気を身に纏い、朝漢城が言っていたことが嘘ではないことを実感させられる。


 「何の用だ」


 「あ、あの私どうしても知りたいんです。あの動画は偽物だった筈です。なのに、どうして」


 「やっぱあんたら二人かよ。確かにあの動画に身に覚えはない。だけど、もうどうでもいい。寧ろスッキリしたぐらいだ。これで、余計な奴らが寄ってこなくなったからな。だから、もう面倒になって隠す必要も無いと思った。これで満足か?」


 「それで自分が虐められても良いんです?」


 「私はそんな低俗な奴らの鬱憤晴らしに精神を病むような奴じゃない。だから、余計なことはするな」


 びしゃりと大きな音を立てて小野はまるで境界線を立てるように扉を閉められ、漢城は少し扉の前で立ち尽くし、下を向いていた。


 「なあ漢城」


 「……何です?」


 「クラスの中に居た一人に何故か身に覚えがあるんだが、お前知らないか?」


 「あの状況でクラスの中なんて見れないですよ!?」


 こちらを驚いた様な顔をして見上げてくるが、俺は二人の会話は想定内の反中だったので、余裕が持てていた。そのおかげか二人が話している間に周りを見る余裕が出来たのだ。


 「取り敢えず戻るぞ」


 「はい」


 ……戻るのは良いが漢城と小野が話している時、こちらに目線を向けていた一人の女性。その女性が身に覚えがあった。


 何処で見たんだろうか?


 「あの!吉条先輩!」


 「……今の声は」


 ふと思い出せそうで思い出せない女性の顔を考えていると、聞き覚えのある声が聞こえ、振り返るとそこには大人しそうな表情こそ変わらず、眼鏡を掛けている……。


 「伊瀬?」


 「はい。小野さんの事で話があるんです」


 伊瀬茜の言葉に思わず俺と漢城は何も言わずに互いに顔を見合わせてしまう。


 ――――小野美佐子。

 あいつに一体何があるんだ?


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。