ヒント
「怪盗Xからの手紙は何処にある?」
「今部室に有りますよ!」
「分かった。直ぐに行こう」
泉と一緒に駆け足で部室まで行くと、そこには南澤、清水が既に座って待っていた。
「――――遅いわよ吉条!待ちくたびれたわ」
「どうせそんなに待ってないだろうが。それより怪盗Xから手紙が来たって言うのは本当だよな?」
これで嘘ですドッキリでしたなんて言われれば、俺はここで暴れまくってやる所存である。
「本当よ。私は先に内容見たけど信じられないわよ」
「信じられない?」
「あ!南澤先輩一緒に見ようって言ったのに抜け駆けしたんですか!?」
「気になっちゃったのよ!」
「……そんな堂々と言う事でもないと思うが、見せてくれ」
南澤から貰った手紙を受け取り、泉も読んでいない事から気になるのか覗き込んでいる。
『お悩み相談部の皆さん。これまでの全て自分がやった事。その全てを未然に防ぐことも、見つけ出す事も出来なかったようだ。自分も暇ではない。よって怪盗Xの働きはここまでとする。少しはスリルがあって楽しめた。さようなら』
俺は怒りのあまり怪盗Xから貰った紙をその場で握りしめてしまう。
「……こいつ、このまま逃げようなんて考えで居るのか?」
「そうみたいよ。私からすればこの紙ではこんな風に言ってるけど、実はまだしますって腹なのかもしれないと思ってるわ」
「それもあり得ると言えばあり得るのかもしれないが、今までの怪盗Xからの挑戦状を見る限り俺はこれで終わりだと考えるのが妥当な気がするな」
「……勝ち逃げするって事ですよね。流石に怪盗Xもこれ以上自分で墓穴を掘るかもしれないのを恐れてるんじゃないんですか?結構今までの事って問題にもなってますし、バレたらシャレになりませんからね」
「だろうな。俺もそう考えてる」
――――確かに泉の言う通り、今回の件がバレれば停学は確実。もしくは苛めと判断され、退学もあり得る。
だが、これで終わりとなるのであれば、これ以上被害者が出ることも無ければ、漢城の新聞を見てくれる人が居れば、小野の件は勿論、寺垣だって安全な気がする。全ては丸く収まった。花飾りだってやり直しが出来ているし、何もかもが出来ている筈なのに――――途方もない怒りが込みあがってくる。
これで良いのか?
確かに寺垣が普通の高校生活に戻れることに不満がある訳がない。まあついでに小野もだが。
しかし、怪盗Xを捕まえられないで、そのまま勝ち逃げを許す?
――――そんな事は絶対に合ってはならない。
ここまで馬鹿にされ、振り回され、挙句の果てに勝ち逃げ何て俺の男としてのプライドが断じて許さない。
「……吉条君。貴方凄い不満そうな顔をしているけど?」
「……お見通しなのが怖いがその通りだ。泉、南澤、お前たちに話しておくことがある。だけど、これは仮の話だと思って聞いてくれ」
今回の小野の動画が偽物だと判明したこと。それによって、寺垣も漢城の新聞によって普通の高校生活に戻れるかもしれないと言う事、全てを話せば泉と南澤は互いに顔を見合わせハイタッチをしていた。
「――――やった!やったわよ!真由美が大丈夫ですって!」
「本当ですよ!寺垣先輩に報告しないと!」
「おいおい。今言ったばかりだが、これは仮の話だ。多分九十%の確率で大丈夫だと言い切れるが、万が一と言う事も考えて期待はしない方が良いぞ」
「するわよ!私でもそれなら大丈夫だって思うわ!やったわ!」
南澤と泉が大はしゃぎをするのを見てこれは何を言っても聴きそうにないと思っていると、二人がこちらを見る。
「ありがとう吉条」
「ありがとうございます。広先輩」
こうも真正面からお礼を言われると少し照れ臭くなる気持ちがこの二人は分からないのか、素直に言ってくるのだが何ともむず痒い気持ちになる。
……だけど、俺は聞かなければならないことがある。
「……礼なら漢城に言え。俺結局新聞を作るのはあいつだからな。ただ、俺から一つ聞きたい。怪盗Xの事をどうする?正直に言えば寺垣も無事、小野もなんだかんだ言って無事で済むだろう。このまま怪盗Xを追いかけるのを続けるか、それとも中断するか、どっちがいい?」
「私は追いかけたいですね。正直このまま勝ち逃げされるのも癪ですし、これだけ好き放題させて何も罰を受けないなんて許せないので」
「私も賛成よ。このまま勝ち逃げ何て私のプライドが許さない」
泉も清水もどうやら怪盗Xを見つけ出すことに賛成のようだ。
「南澤はどうだ?」
「吉条はどうなの?」
質問に質問で返されてしまった。
「……私は正直勝ち逃げされるのは悔しいけど、真由美が大丈夫ならそれが一番。だけど、吉条はどうなの?怪盗Xを見つけ出したいの?それともこのまま放っておきたいの?」
「……俺は見つけ出したいぞ。清水と同じでプライドが許さないからな」
……どうしたんだ南澤は。少し怒っている様な顔をしているが、目だけはしっかりとこちらを見据えている。
「……分かったわ。私も賛成。私達で怪盗Xを捕まえるわよ!」
「そうですね!絶対にこのまま逃しません!」
さっきのは俺の勘違いだったのだろうか?
直ぐに南澤はいつも通りになり元気になっている。
だが、これで怪盗Xを追い詰める事だけは変わりない。だけど、俺にとってもう一つの気がかりである黒柿。
あいつに話を聞きに行こう。




