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別行動

 漢城も、南澤、泉もまた文実に行っている。

 俺の複数犯の候補として名が挙がっている春義。彼がもしも犯人なら俺が行けば必ず警戒するに間違いない。二度も負かされてるわけだしな。

 よって、俺は別行動を取るしかない。

 まず、怪盗Xが物を盗むだけが目的ではないと言う事だけでも分かったな。


 ――――だからこそ、俺が取れる選択肢としては怪盗Xの行動を未然に防ぐこと。それが第一のやるべき事、だけどそう簡単に出来るとは思っていないののだが、これしか今の所俺には分からない。


 だが、やるべきことが見つかっても、どうやって未然に防ぐのか分かんないんですけどね!

 取り敢えず、ここは漢城を見習って適当にぶらぶらと歩きまわる。

 まあ、歩き回った所で、寺垣や漢城に告白して玉砕した人間なんて数えるだけ多すぎるし、絞れるとは思えない。

 だが、俺の一つ純粋な疑問だが、告白して振られたからと言ってここまで手の込んだことをするのだろうか。

 

 まだ、黒柿の様に嘘の噂を流す程度なら主犯格は振られた人間だとは思う。だが、それ以上に職員会議に出るほどの出来事を起こすほどの必要があったのか?

 それに、寺垣、漢城に振られたのが原因ならばわざわざ『お悩み相談部』に挑戦状を送って来たのは何故なんだ?


 寺垣に恨みを持っているのであれば、寺垣自身に何かしら手紙を送れば良いのを、わざわざ学年一位と言う座に居座っている清水がいる部活に挑戦状を送って来た意図はあるのか?


 「……分からん」


 正直、ここまで考えてもどうしても『お悩み相談部』に挑戦状を送って来た意図が分からない。初めは怪盗Xは見つけ出そうとしている連中を出し抜き、何かを盗むことに快楽を得るふざけた人間なのかと思った。だが、それが寺垣への恨み、もしくは『お悩み相談部』への恨みだと憶測し、今回の出来事で寺垣、漢城への恨みなのではないかと言う結果に至った。


 ……何か間違いがあるのか?

 正直、自意識過剰では無く、今の段階でこの憶測は正しいのだと自負している。だけど、それでも間違っているのであれば、俺はどうすれば良いのか正直見当もつかない。

 怪盗Xは俺達に見つけ出させる気はない。見つかれば間違いなく停学は確定しているのだから。

 なのに、ここまでするのは見つからないという自信の表れか?もしくは、自分の作戦が完璧だと思い込んでいるのかもしれない。

 まあ、実際見つかっていないのだから完璧と言って良いのかもしれないけど。


 「……困ったもんだな」


 思わずため息と共に先程漢城に弱気だと言われたばかりなのに、弱音を吐いてしまう。

 俺からすれば、『お悩み相談部』に挑戦状を叩きつけることに何らかの次のヒントがある様に思えている。わざわざ、挑戦状を叩きつけているのに寺垣だけで被害が済むのか、それが心配だ。

 だからこそ、怪盗Xが挑戦状を叩きつけた理由、寺垣、漢城が被害に遭った理由が知りたい。


 ……何も分からないときは過去を遡れば何かしらヒントがあるかもしれない。これが、最近俺が学んだことだ。

 過去を遡って少しでも手掛かりにヒントがあるのでは……ん?


 待てよ。閃いた訳ではなく、ただ漠然と普通に思ってしまった。

 伊瀬茜の噂を流した小野での事件。その案件には共通点は合ったのか?無かったはずだ。


 今回の件はそれに少し似ているのではないか?

 怪盗Xが俺達に挑戦状を叩きつけたのは怪盗Xが、最初の憶測通り見つかるか、見つからないかのスリルを味合う為。

 寺垣、漢城が被害に遭ったのはまた別なのではないか?


 いや、ただの憶測であり、全くの確証も無い為どうすることも出来ない事実は変わってはいない。

 後一手。何かしら怪盗Xが事件を起こせば、何が目的なのかそれが分かる気がする。

 取り敢えず、『お悩み相談部』に挑戦状を叩きつけたのは怪盗Xがスリルを味わう為と言う事で結論を終えることにし、何故、漢城と寺垣が狙われたのか、もしも本当に複数犯で漢城に振られたからと言う理由なのであれば、振られた人間を片っ端から当たっていくしかない。

 取り敢えず清水に意見を求めない限り俺には全く決断できる気がしなかった。


 歩いている足並みを回れ右をして部室へと向かう。


 「清水、俺の話を聞いてくれ」


 「どうぞ」


 手で促されたので聞いてくれると分かったので、『お悩み相談部』の件は怪盗Xがスリルの為に、漢城と寺垣が狙われたのは振られたからと言う意見で考えたという趣旨を簡潔に清水に教えると、何時も読んでいる本がばたりと閉じられる。


 「……貴方の話を聞いて納得出来る部分と出来ない部分がある。どちらから聞きたいかしら?」


 「じゃあ、出来ない部分で」


 「それは、この部活に対する挑戦状。貴方はスリルと決めたようだけど、それはただ他に思いつかなかっただけでしょう?」


 清水の鋭い指摘に思わず、言葉に詰まる。


 「どうやら図星みたいね。実際、もしも怪盗Xがスリルを求めているのなら、私達『お悩み相談部』ではなく、職員室にでも出した方がスリルがあるんじゃないのかしら?教師に見つかれば停学間違いなしだけど、そっちの方がスリルはある筈。それなのに、まだスリルなんて言葉が出てくるかしら?」


 「……悪かったよ。俺はこれ以上思いつかなかったからそれにしたんだ。当たってる。だけど、それなら清水は何か思いついてるのか?」


 「いいえ。ただ、スリルと言うのが間違っているとは思わない。だけど、それだけではないのは確かね」


 「……それ以外か。あ、そう言えば納得出来る部分ってのは?」


 「寺垣さんと漢城さん。この二人が狙われた理由に関して、振られたことが原因かもしれないというのには少なからず一理あると思ったわ。私も実際振った事で襲われそうになったのだから」


 清水が言っているのは、俺と清水が初めて話すきっかけでもあった空手部の主将に襲われて俺が助けに入った事件の事だろう。

 確かに、あの事件があれば清水が納得出来るのも頷ける。


 「一理あるとは思ってるが、絶対に合っているとは思わない。そう言う事か?」


 「そうね。実際にそうだと断言できる確かな証拠がある訳じゃないからそうとは言い切れないでしょう?」


 「そうだな。俺も憶測で話したからな。実際に合っているとは思ってない」


 清水に話したことで少なからず俺の中で方針は決まった。取り敢えず、怪盗Xの狙いが何なのか、それをはっきりさせないといけない。それだけは確かなんだ。


 「サンキューな清水。少しやることが分かった」


 「どういたしまして」

 

 話は終わりと無言で告げるかの様に本を再度開けるので、俺もカバンを持ち、部室を出る。


 ――――翌日。


 「――――た、大変です吉条君!!!!」


 「……なんか、最近下駄箱に辿り着くと誰かが絶対に大声で呼んでくる気がするんだが」


 「そんな悠長なことを言ってる場合じゃないんです!小野さんが!」


 「小野?」


 ……今、何が起きているのかさっぱり分からない。だけど、とんでもないことが起きていることだけは分かってしまった。


 


 


 

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